ブルーカーボン推進で温暖化防止へ

ニュースの裏事情/ 日本証券新聞

テレビや新聞で取り上げられたニュースの裏側を解説する本連載「ニュースの裏事情」。今回は、「原発の法改正案の閣議決定」に関するニュースの裏側について、ご紹介します。

公明党も後押しする「ブルーカーボン」

温暖化対策のため、原発の60年超の運転を可能にする5つの法改正案が閣議決定されました。そのような中、国交省関係者によると「海洋国家である日本は、ブルーカーボンの推進という手がある。公明党が今、後押しをしている」とのこと。

植物は光合成によって大気中のCO2を吸収し、炭素を隔離します。陸上の植物が隔離する炭素を「グリーンカーボン」といい、海草や海藻、植物プランクトンなど、海の生物の作用で海中に取り込まれる炭素を「ブルーカーボン」と呼びます

日本の海岸線は約3万5000キロメートルあり、世界第6位と海藻活用では地の利がありますが、近年「磯焼け」と呼ばれる海の砂漠化が進み、海藻の衰退が進んでいます。これに対応するのがブルーカーボンを増やしていく取り組みです。

ブルーカーボンは、水質浄化など環境対策につながるだけでなく、CO2吸収にもつながります。かつ、吸収したCO2をカーボンクレジットとして企業のカーボンニュートラルの取り組みに寄与することもできます。

鉄道や製鉄、電力など幅広い業種で実験進む

ブルーカーボンに取り組んでいる企業はいくつもあります。例えば横浜市と「 西武HD 」傘下企業が手がける八景島シーパラダイスは2011年からブルーカーボン実証実験を行っており、2023年3月末までワカメ収穫イベントを行っています。

早くから手がけてきたのは「 日本製鉄 」です。鉄精錬時に出る副産物の鉄鋼スラグと、腐植物質の混合物をヤシ繊維で編んだ袋に充填した「ビバリーユニット」という鉄鋼スラグ製品を開発し、2004年から全国38ヵ所の沿岸に提供してきました。さらに、育成した海藻でバイオマス燃料を作る取り組みも始めています。「 JFEホールディングス 」も山口県で藻場造成事業を始めました。

電力系も取り組みを行っており、「 東京電力HD 」は、微細藻類によるバイオ燃料生成研究を行なっています。「 北海道電力 」は北海道留萌市で海草の培養技術開発を始めるとのこと。北海道電力は「海藻生産量の7割を占める北海道は、ブルーカーボンによるCO2吸収・貯留ポテンシャルが非常に高い」としています。「 J-POWER 」は2023年2月27日に豪州でブルーカーボンの実証実験を行うと発表しました。

建設では「 鹿島建設 」が2022年7月、大型海藻類の再生・保全技術を確立したと発表し、「 東亜建設工業 」は護岸に海藻を着生させる実海域実験を始めました。また「 KDDI 」は水上ドローンで藻場調査を実施しました。

ブルーカーボンの取り組みは、静かに進んでいます。

(出典:日本証券新聞)