株式市場で「大手電力」関連銘柄が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は5.8%と、円安による輸出企業の採算改善期待などから上昇した東証株価指数(TOPIX、0.6%高)を上回りました(3月10日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!
大手7社、最大6%の燃料費抑制
大手電力関連銘柄が買われた主な理由は、火力発電の燃料費の抑制で採算が改善するとの思惑です。春以降の家庭向け電気料金の値上げを申請している大手電力7社が、直近の化石燃料価格や円相場などを反映した燃料費の試算を3日に提示しました。東京電力HDや北海道電力は液化天然ガス(LNG)価格の下落などから当初の試算から燃料費は約6%減る見通しとなりました。
発電用石炭の下落も採算改善への期待を誘っています。日本が主に使うオーストラリア産は2月の平均価格が1トン207.5ドル。400ドル超だった2022年7~9月の水準を大幅に下回りました。ロシアによるウクライナ侵攻前(21年10~12月)の平均価格183.9ドルに迫っています。
また、脱炭素などの観点から政府が原発活用の姿勢を鮮明にしたことも追い風になりました。安全審査で停止していた期間などについて、運用期間の延長を認める法案を2月28日に閣議決定したのです。
志賀原発に再稼働の可能性【北陸電力】
上昇率首位の「 北陸電力 」の電源構成は、石炭火力が41%、水力が24%、LNG・その他ガスや石油の火力が11%を占めています(2021年度実績)。3日、再稼働を目指している志賀原子力発電所2号機について、原子力規制委員会が原子炉建屋の直下の複数の断層が「活断層ではない」とする北陸電側の主張をおおむね認めました。今後の審査次第で再稼働する可能性が意識されたことも追い風になりました。
再稼働目指し安全対策工事【東北電力】
上昇率2位の「 東北電力 」の電源構成は、石炭火力が36%、ガス火力が31%、水力が12%です(2021年度実績)。原発関連では、女川原子力発電所2号機の再稼働を目指し、安全対策工事を進めています。工事完了は2023年11月を目指しています。東通原発1号機の安全対策工事については、女川原発2号機の審査実績などを参考に、完了時期を3年延長し2024年度に変更しました。
原発再稼働に向けた審査に注目
そのほか、「 沖縄電力 」の電源構成は石炭火力が65%、LNG火力が24%、石油火力が5%。「 中国電力 」は石炭火力が36%、ガス火力が20%、卸電力取引所が20%。「 関西電力 」は原子力が28%、LNG火力が23%、石炭火力が17%、水力が12%などとなっています(いずれも2021年度実績より)。これらの銘柄も買われています。
コロナ禍からの経済活動の再開やウクライナ侵攻で急騰していたエネルギー価格ですが、落ち着きの兆しがみられるようになりました。欧州が記録的な暖冬となり、天然ガス不足が緩和したことが主因のようです。
大手電力の電源構成は各社様々で、燃料費の下落が収益に与える影響にも強弱感があります。各社の電源構成を見極めると同時に、原発の再稼働を巡る審査にも注目していきたいですね。