【味の素/解説編】食品だけじゃない! 実は、世界のアミノ酸メーカーだった!

御社の決算、教えてください!/ 妄想する決算

音声プラットフォームvoicyの決算10分解説で人気の「妄想する決算」さん。毎日決算書を読んできた鋭い視点で気になる企業と対談します。3社目の訪問は、うま味調味料「味の素®」「ほんだし®」「クノール®カップスープ」などでおなじみの「 味の素」です。決算がまるっとわかる動画をチェックしましょう!

まずは味の素の決算をチェック!

私は「妄想する決算」という名前で普段はnoteや音声配信のVoicyなどで決算についての情報を発信しています。

今回は味の素株式会社さんについて自分の妄想している部分を、グローバル財務部IRグループ長の梶昌隆さんにお聞きします。私は今マレーシアにおりますので、オンラインで対談させていただきます。

味の素HPより抜粋

味の素さんはご存知の通り、「味の素®」「ほんだし®」「クノール®カップスープ」など、うまみ成分のアミノ酸を調味料として、商品化して成長した企業です。現在もこのアミノ酸の技術を活かし、食品事業だけではなく、医薬用アミノ酸を活用したヘルスケア事業や半導体等にかかわる電子材料など様々な事業を展開しています。『アミノ酸のはたらきで食習慣や高齢化に伴う食と健康の課題を解決し、人びとのウェルネスを共創します』(2023年2月28日より新しいビジョンに変更)というビジョンを掲げている企業です。

2023年3月期第3四半期の事業別売上高構成を見ていきますと、調味料・食品事業が57.8%、冷凍食品事業が19.7%、ヘルスケア等が22.4%となっており、味の素が調味料や食品事業だけではない事がわかると思います。また利益構成を見ても調味料・食品事業が61.5%、冷凍事業は0.3%、ヘルスケア等が38.2%となっており、調味料・食品が主力事業でありますが、ヘルスケア等の事業は高利益で大きな規模を占めていることがわかります

ヘルスケア等の事業は構造改革を進めており、利益率の高い事業です。近年では「味の素ビルドアップフィルム®(ABF)」というアミノ酸研究から生まれた絶縁体素材が好調で、パソコンやサーバーなどに多く利用されています。この様に食品を超えた事業展開になっていることがわかります。

2023年3月期第3四半期実績
2023年3月期業績予想および 企業価値向上に向けた取組み

2023年3月期第3四半期決算資料より

それでは続いて業績を見ていきます。今回は2023年3月期の第3四半期までの業績を見ていこうと思います。

売上高は20.2%増の1兆267億円、事業利益は10%増の1192億円となっており、増収増益で好調です。一方、純利益に関しては6.3%減の764億円になっておりますが、これは前期に遊休資産の売却による反動で減益となっており、事業自体は堅調な業績だと思います。第3四半期までの売上高と事業利益に関しては2016年にIFRSという国際会計基準を導入して以降では、過去最高の売上高を達成しています。

次に、足元では円安が進んでおり、味の素は海外売上高規模が大きいことから、業績に与える為替の影響も大きいです。為替の影響を除いた業績は、売上高は前期109.6%で増収でしたが、利益に関しては為替を除くと100%と横ばいとなっています。原材料高によるコスト増加等の影響を一定程度受けていることがわかると思います。

2023年3月期第3四半期決算資料より

事業利益の変動要因を見ていきますと為替の影響に関しては増減があり、トータルで105億円ほどプラスの影響があったとのことです。現状、燃料コストの増加は80億円ほどのマイナスの影響で、為替の変動による事業利益の影響と原材料価格の高騰によるコスト増など、社会情勢の変化は25億円ほどプラスに働いて、事業利益が過去最高になっています。この辺の為替の影響に関しては、もう少し詳しく聞いてみたいと思います。

2023年3月期第3四半期決算資料より

次に、好調なヘルスケア等の業績を見ていきますと、医薬用・食品用のアミノ酸のほか、電子部品販売も好調で、増収増益です。

ヘルスケア等の事業は、大きく伸びており、オーガニック成長率も、2022年の第3四半期までの累計で18.2%と高い水準で推移し、ROIC(ロイック)も2022年の予想でいうと13%と、高い水準で推移しています。

ロイック(ROIC):Return On Invested Capitalの頭文字をとったもの。投下資本利益率。企業が事業に使った資金から、どれだけ利益を生み出したかを示す指標

2023年3月期第2四半期決算資料より

好調な絶縁体の「味の素ビルドアップフィルム®(ABF)」という素材に関しては、2025年までCAGR(平均成長率)は約18%の成長を見込んでいます。5Gの拡大による通信量増加に伴ってデータセンターの需要増が見込まれており、味の素も増産を前倒しで行うと言っています。今後もデータの通信量が増えていくことは間違いないと思われますので、好調が期待できると思います。そのため、気になる部分としては「味の素ビルドアップフィルム®(ABF)」の強みが、どこにあるのか、競合関係はどうなのかなど、詳しく聞いてみたいと思います。

CAGR:Compound Average Growth Rateの頭文字をとったもの。一定期間における売上高や営業利益の各年成長率
「妄想する決算」ここが気になる味の素!
・「食品だけじゃない 味の素」
① うま味調味料『味の素®』やほんだし®などの食料品の商品化で成長してきた企業
② アミノ酸の技術を活用しヘルスケア事業や半導体等の電子材料など様々な事業を展開
・2023年第3四半期売上高・事業利益ともに過去最高
①売上高は20.2%増の1兆267億円、事業利益は10%増の1192億円
②円安による事業利益の影響は+105億円
③医薬用・食品用のアミノ酸のほか、電子材料も好調
・対談で聞きたいこと
①為替や原材料価格高騰による業績の影響は
②味の素ビルドアップフィルム®(ABF)の強みが、どこにあるのか、競合関係

この後、妄想する決算さんが味の素の梶IRグループ長へ突撃インタビュー!

過去最高売上高・事業利益の味の素! 食品だけでなく、アミノ酸技術を活用した事業展開でヘルスケア・電子材料で存在感が増している同社の強みとは?

~続きは動画(5:21-)をご覧ください~

梶昌隆さんプロフィール
グローバル財務部IRグループ長
1991年三井生命保険相互会社入社。1994年から特別勘定運用部でディスクローズ業務、外国株式運用等を担当、1999年からニューヨーク駐在(現三井住友DSアセットマネジンメント株式会社)。2004年興銀第一ライフ・アセットマネジメント(現アセットマネジメントOne)株式会社に入社し、医薬品・食品セクターアナリストに従事。2013年味の素株式会社に入社。経営企画部、欧州・アフリカ本部(フランス)を経て、2020年から現職。CFA協会認定証券アナリスト。
味の素
次回は3/22(水)配信予定です。