ブランドプロデューサーが語る、指名される人になる秘訣

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「君に仕事をお願いしたいんだけど……」

そんなふうに指名されつづけるビジネスパーソンになるには、一体どうすればいいんでしょう。

今回新R25では、ブランドプロデューサー・柴田陽子さんに取材。

セブン&アイ・ホールディングス「グランツリー武蔵小杉」、東急電鉄「渋谷ヒカリエ(2012)」など、日本を代表する数々の大手企業のブランディングに携わってきた凄腕の方なのですが……

なんと柴田さん、起業してから一度も営業をしたことがないのに、指名が入りつづけているらしいのです。

そこで今回は、「指名されつづけるビジネスパーソンになるには、どんなブランディングをすればいいのか」をお聞きしてみることにしました。

〈聞き手=サノトモキ〉

記事提供:新R25

【柴田陽子(しばた・ようこ)】柴田陽子事務所代表取締役。ブランドプロデューサー。コーポレートブランディング・店舗プロデュース、商品開発など多岐にわたるコンサルティング業務を請け負う。『はじめてリーダーになる人の教科書』(KADOKAWA)、『コンセプトライフ』(サンクチュアリ出版)、『あなたの味方が増える魔法のToDoリスト』(小学館)ほか著書多数


今日は、「指名されつづけるビジネスパーソンになるためのブランディング」を教えてください!


ブランディング、ね……


この企画もそうですけど、最近そうやって自分をブランディングしようと考える人、増えてますよね
でも、そもそも「ブランド」って何か説明できます?


えっ? えーと……
あれ、できません……


ブランディングって今はずいぶん身近な言葉として使われるようになったけど、きちんと定義を理解してから取り組まないと空振りしちゃうシーンがたくさんあると思うんですよね。
だから今日は、そもそも「ブランド」とは、「ブランディング」とは何かというお話からしましょうか。

確かにそこの認識ってあいまいだったかも……よろしくお願いします!

そもそも、「ブランド」とは何か?


まずは「ブランド」。
「ブランド」っていうのは、「“感情的に”支持されているモノ」のことです。
たとえば、A社とB社、どちらも同じような性能のバスケットシューズを売ってるんだけど、「A社のほうが選手思いで好きだから」という理由でA社のシューズを買うみたいなことってありますよね?


ああ、その商品関係なく会社自体を推してるってケース、ありますね。


それが、「ブランド」です。
つまり、感情的に支持されるような感想を持たれ、かつその感想によってメリットが発生しているモノや人のことを「ブランド」と呼ぶんです。

改めて言葉にされるとすごい腑に落ちる


そして、メリットを発生させるような“感想”を意図的に定着させる作業が、「ブランディング」
たとえば私はローソンと一緒に仕事をしたとき、“百貨店で買うようなハイクオリティのスイーツ”をコンセプトに、「Uchi café Sweets」というスイーツブランドを作ったことがあるんですが……


(あれにも携わってるのか……仕事がデカすぎる……)


この案件では、「ローソンに行けば、百貨店レベルのスイーツが買える!」という感想を定着させることで、「夜間の女性来客数を増やす」というメリットを狙ったんです。
当時のコンビニ業界は「夜間来客数を増やすこと」が勝ち筋で、ローソンは「女性客」に強かったから、ベストな掛け算になると思って。
こういうのが、ブランディング。……ここまでOK?

めちゃくちゃわかりやすいです


で、ここからが本題なんですけど……
「指名されつづけるビジネスパーソン」というブランドは、「目立つためのブランド×信頼されるためのブランド」のハイブリッドではじめて成立するものなんです。
だから、ここからはその二つのブランディングの仕方を考えていきましょう。

目立つための要素は、あくまでも「平凡な個性の組み合わせ」


指名されるには、競合と差別化して「目立つためのブランド」を作らなくちゃいけないんですけど……
ここで、多くの人が“ブランディングの落とし穴”にハマっちゃうんです。


ブランディングをしようとする人って、目立とうと思ってつい自分のなかから「奇抜な個性」を探そうとしちゃうんですよね。


正しい気がしちゃうんですけど、何が違うんですか……?


奇抜な個性は、寿命が短いんです。
注目は浴びやすいけど、普遍的な魅力をともなってない個性は、すぐに飽きられちゃう。
じつは、長く続くブランドほど、「平凡な個性の掛け合わせ」で作られてるものなんですよね。


たとえば堀江(貴文)さんも、一部の発言を切り取って、奇抜な存在に見られることもあるでしょ?
でもじつは彼も、「まわりに流されず言うべきことを言う」みたいな、時代が変わっても支持されるような普遍的な魅力によって成立してるブランドだと思うんですよ。


たしかに……
「人の時間を奪うから電話なんてするな」みたいな個性的なアウトプットと組み合わせることで、はじめて強烈なブランドが生まれてるのかも。


つまり、「編集の妙」がブランドを作るんです。
ブランドのある人間になりたかったら、何か特別な個性を手に入れることより、「編集力」を磨くことのほうが圧倒的に大事。
いかに素の自分を、“時代に受け入れられる”かつ、“目立つ”かたちに編集するか。


あくまでも「平凡な個性」の掛け合わせで目立て、か。
勘違いしてた人も多いと思うし、等身大の自分のままブランド化できるって希望になるな……

「指名されつづける」には、“誠実さ”という絶対的なベースが必要


もう一つ、「信頼されるためのブランド」が必要だとおっしゃってましたよね。


こっちはもっとシンプルです。
一言でいえば、「誠実さ」という絶対的なベースをきちんとブランディングしなくちゃいけない


私の会社が指名してもらえるのは、一緒に仕事をしたクライアントが他のクライアントを紹介してくれるってことがあるからなんです。


なるほど。でも「誠実さ」なんてあいまいなもの、どうやって示せばいいんでしょうか……?


結果」です。「結果がすべてである」という姿勢に、徹底的にこだわる。

誠実さを示せる結果……?


私は、“目標設定”の精密さをすごく大切にしていて。
お菓子屋さんに「売上アップのために、ブランディングをしてほしい」と言われたら、「月売上これくらいで推移すれば、うちに任せてよかったって思ってもらえますか?」と必ず確認する
「売上がアップすればよし」というあいまいな結果で濁さず、「具体的にどこまで上がったらうれしいか」まで相手と細かく設定するんです。


成功と失敗の線引きをはっきりさせるのか……!
正直怖くてやりたくない気もするけど……だからこそそこを自分から明確にする人って、めちゃくちゃ評価されるのかも。


そして、“責任設定”の高さについても、とにかくこだわる。
通常、「ブランディングをして終わり」というブランディング企業も多いと思うんだけど、私たちはお店のオープン時にスタッフが足りなかったら、自分たちも当日店頭に立ちます


自分たちの業務範囲外のことだったとしても、設定した「結果」に必要なことにはすべて責任を負うんです
うちはブランディング企業だけど、「目標達成のために人材教育、プロモーションまでやらせてください」と相談したこともあるくらい。


……正直、「誠実さがあれば仕事はもらえる」ってちょっとキレイゴトだと思ってたけど、ここまで突き詰めたら絶対指名される気がしてきた……


結局、仕事の世界では「結果」がモノを言うんです。
どれだけ口で立派なことを語ってても、何の結果も示してなければブランドにはなれない

これはぐうの音も出ないド正論


うちの会社は営業したことないって言ったけど、そもそも営業部隊がないんですよ。「結果がすべて」を信念にしてる会社が「仕事ください」と言ったら矛盾するから。
「実績を見て仕事をしたいと思ったら、お声がけください」って状態を実現するためにも、営業を作らない。16年目になるけど、そこを崩したことは一度もないですね。

「自分のために」は応援されない


「指名されつづけるビジネスパーソンになるためのブランディング」、よくわかりました。
ただ……「相手のために」と思える誠実さって、もはや性格ですよね?
誠実じゃない人は指名されつづける人にはなれないんでしょうか?


私利私欲が一義になってる人は、絶対なれないと思う。
だって……自分のことしか考えてない人のこと、応援したいと思わないですよね?

間違いない……


でも、20代ってまだまだ経済的な余裕もないし、将来大丈夫かなとかいろんな不安が大きい世代というか……
「私利私欲を一義にしない」って、けっこう難しい気もしちゃうんですが……


大丈夫。
仕事って最高の自己成長の場だと思ってるんだけど、ビジネスほど「誠実でいつづける訓練」ができる環境ってないから。
よほどの天才でない限り、相手に対して誠実な人じゃなきゃ結局は生き残れなくなっていきますから。私も、自分の思いが私利私欲になってないかどうかは、今でも何度も何度も確認しますね。


人生における「誠実さ」の必要性を理解できるかどうかは、私たち凡人が仕事を通してクリアすべきミッションとしてはすごく重要で、崇高なものだと思いますよ。
いつかそこが腑に落ちたら、あとはその表現方法……ブランディングの仕方を思い出してもらえたらいいんじゃないかな!

納得度がすごい……今日はありがとうございました!

“ブランディング”って最近よく耳にするけど、とても一朝一夕でできるものじゃありませんでした。

ローマは一日してならず、ブランドも一日してならず。

まだまだ続く社会人人生、見掛け倒しのハリボテのブランドじゃなくて、中身の濃い、でも等身大のブランドを目指していきたいなと思いました

〈取材・文=サノトモキ(@mlby_sns)/編集=天野俊吉(@amanop)/撮影=中澤真央(@_maonakazawa_)〉