音声プラットフォームvoicyの決算10分解説で人気の「妄想する決算」さんが、企業を分析、対談する動画「御社の決算、教えてください!」。今回は、コクヨ株式会社の理財本部IR室の三浦室長への突撃取材を公開します。
中国で売れているコクヨの文房具
妄想:コクヨの事業展開として、ファニチャー事業に注力している印象を受けていますが、ステーショナリー事業の位置付けについて、お伺いしてよろしいでしょうか?
三浦さん:やっぱりコクヨはステーショナリー事業から始めた会社ですし、今でも重要と考えています。ただ、おっしゃるように国内の事業は需要の低迷もあり、なかなか厳しい状況になっていますので、中国やその他の海外事業を中心に拡大させる見通しです。
妄想:海外では中国が好調ですが、なぜ中国市場でコクヨの文房具が売れているんでしょうか?
三浦さん:今まで中国やその他の海外では日本ほど付加価値の高い、高品質の文具が普及してこなかったのではないかと思います。そこに私たちが品質の高いもの、特にターゲットを女子中高生あたりに絞ることで訴求できていることが要因と思います。
妄想:中国以外の市場で、今後さらに展開していこうとしている市場はありますか?
三浦さん:現状、ステーショナリー事業では中国とインド、その他ASEAN諸国ですが、今後は欧米などのその他の国々まで拡大することを狙っています。
ステーショナリー事業の改善策
妄想:国内の市場に話を戻すと、国内市場は収益性を改善していくと説明資料にありましたが、どういった取り組みをされていますか?
三浦さん:今、国内需要が伸びない局面でもありますので、トップライン(売上高)を伸ばすのはなかなか難しいです。例えば、今までステーショナリー事業にいた人員を他の伸びているビジネスのほうに移す取り組みや開発体制を見直すことで、コストの効率化などを図っています。
妄想:国内市場の今後の見通しとして、デジタル化が進む中で、市場は縮小していく見通しでしょうか?
三浦さん:日本は手書きの文化は引き続きあるので、需要は高い水準で残るとは思っています。ただ、デジタル化と少子化もありますので、国内市場の縮小する部分はどうしてもあるかなと思っています。
ファニチャー事業について
妄想:次にファニチャー事業について、こちらは2022年12月売上高が想定を下回りましたが、どういった要因が特に影響しているのでしょうか?
三浦さん:ファニチャー事業でいうと、大きく2つに案件が分けられます。一つ目は、都内でも新しくビルが建ちますが、そこに入居が発生する需要。二つ目は、オフィスを見直したり、つくり変えたりするリニューアル需要があります。昨年度はビルの供給が少なかったこともあって、新築案件の水準が低かったです。
そのため、リニューアル事業というオフィスのつくり変えに注力していました。しかしウクライナ危機の問題や経済環境の変化の影響などもあって、企業の景況感が悪化し、スケジュールの見直し、案件規模の縮小、計画がずれたことにより想定を下回りました。
妄想:個人的な体感としては、2023年に入っても縮小傾向が続きそうですが、今年の見通しはいかがでしょうか?
三浦さん:リニューアル事業に関しては、アフターコロナで働き方を各企業が変えていく中、オフィスの見直しや面積を小さくしたり、使い方を変えたりというリニューアル需要は高いことから、今年も需要の水準は変わらないと思います。一方、今年は首都圏でオフィスビルの建設が多く予定されているので、新築の需要も期待できると思います。
妄想:IT企業からの需要が多いのでしょうか?
三浦さん:IT企業など若い人が中心の業界が多いかもしれませんね。昨今、働き方の柔軟性を設けていないと人が集められないという問題もあって、企業として人材獲得、維持という面でオフィスをつくり変えるニーズは強いと思います。
ファニチャー事業の海外展開について
妄想:ファニチャー事業の海外展開は、今後どの様に考えていらっしゃいますか?
三浦さん:国内は市場が飽和しつつあるので、海外需要の獲得強化を進めています。先ほどのステーショナリーと同様、中国などのエリアを中心に拡大する計画で、そこに去年買収した会社も寄与してくると思います。
妄想:ファニチャー事業の海外展開として、文具の販売をしているところから営業を展開するイメージでしょうか? ステーショナリーとファニチャーのクロスセル等の戦略も施策として検討していますか?
三浦さん:日本だと最初に文具があって、そこから派生してファニチャーでしたけれども、必ずしも両方セットでなくてもいいのかもしれないですね。一方、お互いに案件として紹介するという話もありますし、オフィスを提案するときに併せて収納系の文具を提案、フリーアドレスのオフィスに文具を置くコーナーを設置する等の提案を組み入れることがあります。これは文具とオフィス両方提案しているコクヨだからできる部分かなと思います。
成長戦略について
妄想:財務状況を見ると良好ですが、今後の海外展開、領域拡大の中で新しくM&Aを通じた拡大も考えていらっしゃるのでしょうか?
三浦さん:あります。中期経営計画を進める中で戦略投資を意識しており、金額的にはM&Aによるものが大きいかなと思います。特に、海外のファニチャービジネス、ステーショナリーはM&A活用が重要なポイントになると思います。
妄想:イチから海外で拠点をつくるというよりは、ある程度シェアを持っている企業を買うというイメージでしょうか?
三浦さん:中国での事業展開の様に、既存の我々の拠点とそこに足りない部分を補って、M&Aで買収した企業との協業などで拡大していく戦略を狙っています。
妄想:今後、新規ニーズを獲得することによっての拡大を狙っていると思いますが、可能性としてはどういったところがあるのでしょうか。
三浦さん:基本的には、今までオフィス家具や文具というモノでやっていたものが、ワークスタイルとライフスタイルという2つの領域を設けて、その中で我々が強みを発揮できるところという観点で進めていこうとしています。文具というより、ライフスタイルツールのような、鞄みたいなものですとか、提供するもの自体は広がってくるイメージだと思います。
妄想する決算の総括
三浦さんとお話してみて、わかったとこわかったことは、国内のファニチャー事業はオフィスの縮小などが起きても、それが「縮小案件」として増えること。また、人材獲得のためのリニューアルなど、一定の需要は継続することから、業績としては大きく悪化することはないと思います。
ステーショナリー事業は、国内では縮小傾向ですが、海外で大きく伸びています。特に、中国やインドなど人口が多く、所得が伸びている国で、コクヨの質の高い文具が受け入れられているのが要因です。今後も所得の増加や人口を考えても成長が期待できると思います。
ファニチャー事業の海外に関しては、M&Aなどを通じて積極的に展開を計画しており、どれだけ成長していけるのか、どういった展開を進めていくのか注目ポイントだと思います。
Q.国内のファニチャー事業の今後は?
A.今の時代に沿った新たな需要が継続
ポイント①オフィスの縮小や人材獲得のためのリニューアル
ポイント②2023年新築ビルの増加
A.付加価値の高い文具をグローバルに展開
ポイント①国内需要は縮小、人員配置等コストの効率化を図る
ポイント②中国、インド、ASEANに展開。今後は豪州・欧米等段階を踏んで進出
ポイント③M&Aによる規模拡大
「妄想する決算」さんの詳しい解説から対談まで見られる動画はこちらから!
理財本部IR室長
同志社大学文学部卒業、同志社大学院ビジネススクール修了。J-REITや機械部品商社等を経て2017年8月コクヨに入社。キャリアにおいては、ほぼ一貫してIRを中心に、経営企画や財務企画、株式法務を担当。その経験を活かし、現在は同志社大学院ビジネススクール嘱託講師の他に障がい者施設NPO役員を務める。趣味は、ピアノと筋トレ、ランニング。コロナ禍でおうち時間が増えたことでピアノ熱が盛り上がり中。