株式市場で「水素」関連銘柄が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は1.8%と、米景気の先行き懸念などから大幅安となった東証株価指数(TOPIX、1.9%下落)に対して逆行高となりました(4月7日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!
政府、「水素基本戦略」の改訂案を5月末にも取りまとめ
水素関連株が買われたきっかけは、岸田首相が行った再生可能エネルギーや水素などに関する関係閣僚会議でした。政府は、脱炭素社会を実現するためのエネルギー燃料として水素の活用を重要視しており、会議では、水素の活用を目指した「水素基本戦略」の改訂案を5月末にまとめるとしています。具体的には、水素の導入量の目標を2030年の300万トンから、2040年の1200万トンへの引き上げを軸に検討されるとのことです。
2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロとする目標を達成するため、燃料として使っても二酸化炭素(CO2)が出ない水素の導入量を増やす方針です。日本は世界に先駆けて2017年に水素基本戦略を策定しました。改訂案は導入量の引き上げに加え、大規模で強じんな供給網の構築に向け、官民合わせて15年間で15兆円の投資計画などを検討する予定です。水素活用に向けた投資が本格化するとの期待から水素関連株に物色が向かいました。
水素ステーション用圧縮機で国内トップの実績【加地テック】
上昇率首位の「 加地テック 」は空気・各種ガスの高圧・超高圧圧縮機を主力製品としています。水素関連事業では2004年に水素ガスを1100気圧の超高圧まで圧縮できる空冷オイルレス圧縮機を世界で初めて開発しました。水素ステーション用圧縮機では2013年に初号機を納入し、2021年11月時点で50カ所以上に納入するなど国内トップの実績を誇っています。
水素ステーション一式を提供【三菱化工機】
上昇率2位の「 三菱化工機 」はプラント・環境設備の建設や機械事業を手掛けています。水素関連事業では小型の水素製造装置「ハイジェイア」を半導体や光ファイバー、油脂などを製造するメーカーに納入したり、水素ステーション向けも含め71基の納入実績があります。大型水素製造装置も手掛けているほか、水素ステーション向けでは製造装置だけでなく燃料電池車(FCV)に水素を充填する設備など一式を提供しています。
日本の水素市場、2050年に8兆円規模に
このほか、液化石油(LP)ガスが主力の「 岩谷産業 」は国内53カ所、海外5カ所で水素ステーションを運営(2022年8月末時点)。LPガス用のバルブが主力の宮入バルブ製作所は液体水素の設備で使われる極低温バルブ類の開発・製品化と販売を「拡大事業」として加速。総合重機の「 三菱重工業 」は世界最先端の水素燃焼技術を持ち、2025年までに水素100%による発電を目指しています。これらの銘柄も買われています。
NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、日本国内の水素の市場規模を2030年に1兆円程度、2050年に8兆円まで拡大すると試算しています(2015年2月時点)。カーボンニュートラルを目指す政府の主導で官民投資は加速する見通し。それに伴い、FCVの普及や、発電所・製鉄所での利用拡大で水素の利用も進むと思われます。水素に関するニュースで関連銘柄が物色される場面もありそうです。2050年という長期の目標を見据えた息の長いテーマだけに、収益への貢献度合いなどをじっくりと見極めたいですね。