年率5%運用のポテンシャルがある銘柄【増配株ETF編】

目指せFIRE!おけいどん式 資産形成術/ 桶井 道(おけいどん)西田ヒロコ

本連載では、これまで年率5%の運用を目指しながら、つみたて投資をすることの大切さをお伝えしてきました。今回は分配金を含め、年率5%の運用のポテンシャルがある増配株ETFをご紹介します。主に米国ETFになりますが、一部、東証ETFで投資可能なものも紹介します。※今回ご紹介するETFのパフォーマンスは2022年12月31日時点のデータ、分配金利回りは2023年3月31日時点のデータをもとに記載しています。

増配株の魅力とは

増配株は、高配当株と違って現在の配当利回りが必ずしも高くはありません。しかし、長期保有すれば増配によって配当利回りが高くなることが期待できます。例えば、現在の配当利回りが1.9%としましょう。毎年、5%増配があるとすれば、10年後には配当利回りは3.09%になります。これが増配株の魅力です。

また、持続的に増配できるということは、配当の原資となる利益が増えていることを意味します。つまり、増収増益(売上も営業利益も成長している)で業績が良いということです。業績が良ければ、株価成長も望めます。

よって、配当利回りが上がることで受け取れる配当(インカムゲイン)が増え、株価が上がることで含み益が増える、増配株への投資は2度美味しい投資になります。私が増配株を好む理由はここにあります。

増配株ETFは、増配株の集合体ですから、「2度美味しい集団」に投資することを意味します。増配株ETFも、現在の分配利回りは低い場合がありますが、過去の増配率を見ることで、将来期待できる分配利回りが予想できます。分配利回りを評価する場合は、過去の増配率を見ましょう。

おけいどんオススメの増配株ETF4本

それでは、増配株ETFをご紹介します。

(1)株価低迷銘柄を除く中・大型株に投資するなら【バンガード米国増配株ETF】
バンガード米国増配株ETF(ティッカーコード:VIG)は、米国の増配株の詰め合わせです。10年以上の増配実績があり、中・大型株に投資するETFです。

289銘柄に広く分散が効いているので、分配金が減額されるリスクが比較的低いでしょう。経費率(東証ETFや投資信託でいう「信託報酬」)は0.06%と、他の増配株ETFと比べると1ケタ違いの低さです。

また、配当利回り上位25位までを除外しているので、株価低迷により利回りが高くなっている銘柄が外される傾向にあるのも安心です。私も保有しており、将来の分配利回りが楽しみです。

2022年のような下落相場で、バンガードS&P500ETFのパフォーマンスは−18.15%であったのに対して、バンガード米国増配株ETFは−9.79%と、半分ほどの下落率で済みました。

分配金の利回りは、バンガードS&P500ETFが1.61%であるのに対して、バンガード米国増配株ETFは1.96%です。

(2)毎月分配金がほしいなら【ウィズダムツリー米国株クオリティ配当成長ファンド】
ウィズダムツリー米国株クオリティ配当成長ファンド(ティッカーコード:DGRW)は、米国の大型株で配当成長が見込まれる銘柄に投資するETFです。

組み入れ銘柄数は298と、増配株ETFのうち最も分散が効いています。バンガード米国増配株ETF同様に分配金が減配されるリスクは低いでしょう。ウィズダムツリーは比較的新しい資産運用会社ですが、テーマ性のあるETFで強みを発揮しています。

また、分配金が毎月支払われるので、老後のじぶん年金になりえる銘柄と言えるでしょう。

2022年のパフォーマンスは−6.45%と、バンガード米国増配株ETFよりディフェンシブ(編集部註:景気動向に業績が左右されにくいこと)でした。それでいて、分配金利回りは2.11%と、バンガード米国増配株ETFより優秀でした。

(3)20年以上増配実績のある銘柄がそろう【SPDR S&P500 米国高配当株式ETF】
SPDR S&P500 米国高配当株式ETF(ティッカーコード:SDY)は、米国の20年以上の増配実績かつ高配当株に投資するETFです。

組み入れ銘柄数は119と、採用基準が厳しい分だけ銘柄数が少ないETFです。「現在」も高配当であることが採用基準なだけあり、増配株ETFのなかでは分配利回りが2.53%と高いのが魅力です。すでに高配当ですが、増配も追求しているので、将来の分配利回りにも期待が持てます。

また、2022年の下落相場でも、パフォーマンスはマイナス−0.53%と、増配株ETFのなかで群を抜いてディフェンシブでした。

(4)67のエース級株に投資&2ヵ月ごとに分配金がもらえる【グローバルX S&P500 配当貴族ETF】
グローバルX S&P500 配当貴族ETF 」は、2023年1月に東証に上場したばかりの新しい銘柄です。

S&P500のうち、25年以上の増配実績があり、時価総額30億ドル以上(浮動株調整後)、3ヵ月間の1日当たりの平均売買代金500万ドル以上の銘柄、67から構成されます。

上記3銘柄よりもさらに採用基準が厳しくなっていますので、エース級の集合体と言えるかもしれません。このETFの魅力は日本円で投資できることです。信託報酬は0.3025%です。

また、長期保有で分配利回りが上がることが期待でき、かつ日本円で分配金(2ヵ月毎の分配)が出るのは、老後の出口戦略として理想的です。早速ですが私も保有しています。

2023年1月に設定されたため、データがありませんが、参考となるものとして、S&P500配当貴族指数(USドル建)のパフォーマンスを紹介します。2023年2月28日時点の年率換算で、1年−1.15%、3年10.53%、5年7.56%、10年9.41%と長期では底堅く推移しました。

カエル先生の一言

パフォーマンス(年平均リターン)は、過去の一定期間を分析したものであり、将来の動向等を保証するものではないことに注意しましょう。また、分配金は減配されるリスクがあることも念頭に置きつつ、投資先を検討しましょう。

老後を見据えた投資を検討しよう

増配株ETFは、バンガードS&P500ETFに比べ、パフォーマンスは長期ではほぼ同等、2022年のような下落相場ではディフェンシブと評価できるでしょう。そして、分配金利回りは比較的高いことが特長です。

第6回でもお伝えした通り、投資において、もちろんお金を増やすことも大切ですが、出口戦略はさらに大切です。多くの方にとって、ここが意外な盲点になっているように感じます。

FIREしてからは、ETFの分配金は生活費になります。また老後は、若い頃のように投資判断ができなくなり、PCやスマートフォンの操作もおぼつかなくなります。

老後を迎えた後、投資した元本を取り崩していくことは難しいと私は考えています。このため分配金の出るETFなどを活用しています。皆さんも老後を迎えても不安のない投資を目指しましょう。