株式市場で「半導体部材・製造装置」関連株が買われています。QUICKが選定する関連株の平均上昇率は2.9%と、円安進行を受け上昇した東証株価指数(TOPIX、1.6%高)を上回りました(5月2日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!
米インテルCEO、年後半の需要回復を予想
半導体部材・製造装置関連株が買われたきっかけは、米東部時間4月27日の米インテルによる2023年1~3月期の決算説明会でした。パット・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO)は半導体業界について、「年後半に緩やかな回復を見込んでいる」との見通しを示しました。
ゲルシンガーCEOは1~3月期にパソコン向け半導体の在庫調整が進展し、4~6月期末には健全な水準に戻ると指摘。落ち込みが続いているデータセンターなどのサーバー向け需要も、年後半には緩やかに回復すると見込んでいます。コロナ禍の特需の反動で過剰な在庫に直面していた日本の半導体各社。今後の収益が回復するとの見方から、関連株が物色されました。
電子事業で1800億円を投資【イビデン】
上昇率首位の「 イビデン 」はIC(集積回路)チップとプリント配線板をつなぐ半導体パッケージ基板で高い世界市場シェアを誇っています。大型・高機能ICパッケージ基板の需要増加に対して「微細配線・積層技術」などで対応するほか、設備投資を強化します。2024年3月期はICパッケージ基板を含む電子事業で前期比48%の大幅増となる1800億円を投じる計画です。
半導体露光装置で世界シェア2位【キヤノン】
上昇率2位の「 キヤノン 」はカメラやオフィス複合機などのイメージがありますが、半導体の中核工程である回路形成に使う露光装置の世界シェアでも2位につけています。2023年12月期は生産能力を増強し、前期比11%増の195台の露光装置を販売する計画です。露光装置を含むインダストリアル部門の売上高は3520億円と前期比で7%伸びると見込んでいます。
AI利用の拡大も追い風、技術開発を注視
そのほか、「 新光電気工業 」は、高級スマートフォン向けや先端メモリー向け半導体パッケージが好調で、2023年3月期の売上高や利益が過去最高を更新。「 長瀬産業 」は、化学品や電子材料を扱っており、2025年度までの中期経営計画で半導体関連事業を注力領域に掲げ、「半導体戦略推進チーム」を2021年に立ち上げました。「 TOWA 」は、樹脂などによって半導体チップを保護する工程を担う半導体モールディング装置・金型の世界No.1メーカーです。2032年3月期の売上高1000億円と営業利益率25%の目標達成に向け人員強化や研究開発を積極化しています。これらの銘柄も買われています。
コロナ禍で加速したDX(デジタルトランスフォーメーション)化の反動やデータセンター運営会社の成長減速で悪化していた半導体の需給に歯止めがかかる見通しが示されたのは、業界にとって明るいニュースです。米マイクロソフトや米グーグル、米アマゾン・ドット・コムが相次いで文章や画像を自動で作る生成AI(人工知能)の導入、導入方針を表明したのも追い風です。AI利用が拡大すればより高性能の半導体の需要に追い風となります。より高機能な半導体を提供できる技術を開発している企業を見極めて投資したいですね。