北九州の発展担う大型洋上風力発電

ニュースの裏事情/ 日本証券新聞

テレビや新聞で取り上げられたニュースの裏側を解説する本連載「ニュースの裏事情」。今回は、「北九州の発展を担う大型洋上風力発電」に関するニュースの裏側について、ご紹介します。

北九州で大型洋上風力発電所が起工

北九州市の「響灘(ひびきなだ)」沖で、大型洋上風力発電所の起工式が4月25日に行われました。総出力22万キロワットの国内最大級の風力発電で、「 九州電力 」の子会社や「 J-POWER 」、「 西部ガスHD 」などが出資する「ひびきウインドエナジー」が運営します。

九州ひいきの評論家は、こう評価しています。「注目すべきは大型風力ではなく、これを端緒に北九州市を風力発電の産業集積地にする構想を進めていることだ。この取り組みには、独自の“ストーリー”があることも魅力だ」。

北九州市は2010年に「グリーンエネルギーポートひびき」を構想し、風力発電関連の産業で地元経済を成長させる事業を始めました。響灘地区に、長い風車の羽根も運搬できる港を整備し、周辺に関連企業も誘致しています。

参画する企業を見ると、発電機を開発・生産する「 安川電機 」。風力発電の基礎構造物をつくる日鉄エンジニアリング( 日本製鉄 )。

本体の鋼構造物を扱うリージェンシー・スティール・ジャパンには「 三井物産 」が44%出資しています。風車に使う歯車装置の開発・製造を行う石橋製作所は、日本製洋上風力のギアボックスではシェアトップ。メンテナンスを担うのは、独立系メンテナンス事業者の北拓。

ケーブルを扱う古河電工産業電線( 古河電工 )、起重機船は「 五洋建設 」、洋上風力へのアクセス船は「 東京汽船 」、タグボートによる部品物流は「 商船三井グループ 」のグリーンシッピングが担います。

こうした企業が集まり、響灘が日本国内、さらに海外での洋上風力設備の開発、製造、設置、メンテナンスを行う産業基地に育てていく構想とのことです。

北九州が風力発電の産業集積地へ?

ところで、ストーリーとはどのようなものなのでしょうか。北九州といえばもともと製鉄の街。しかしオイルショック後の鉄冷え(編集部註:製鉄・鉄鋼業の業績が低迷すること)に伴い、産業は衰退。

そこに「 日産自動車 」や「 トヨタ 」などが工場進出し、自動車部品メーカーも集まり、北九州は自動車産業の街に変貌。しかし、EV(電気自動車)シフトで従来の自動車産業が衰退する可能性も出てきました。そこに先手を打つ形で北九州市は、風力発電に未来を賭けたのだといいます。

「風力発電所は鉄の塊だから、製鉄の技術を活用できる。風車は回転するものであり、それは自動車産業が得意とする技術。北九州にはこうした技術の底力のある下請け企業が多数ある。風力発電に賭けたのも、そんな下地があったからだ」(前出・評論家)。

北九州の発展の起爆剤となることも期待される関連銘柄に注目してみてはいかがでしょうか。

(出典:日本証券新聞)