配当株投資では、どんな企業を選べばいいの?

投資がもっと楽しくなる!日興フロッギー選書/ 配当太郎クロスメディア・パブリッシング

投資や資産形成をもっと楽しくするためにピッタリの書籍を、著者の方とともにご紹介する本連載。これまで、配当株投資の基本的な考え方や、まず「年間12万円の配当金」を目指すことなどを解説しました。今回は、「どんな企業に投資するべきか」を著者の配当太郎さんと見ていきましょう。[PR]

「参入障壁」が高い企業の中から投資先を選ぶ

ここからは、配当株投資で最も重要なポイントとなる「どの企業の株を所有すればいいか?」について、詳しくお伝えしていきます。

検討のベースとなるのは、「安定的に利益を生み出して、その一部を配当金として継続的に株主に還元している企業」となります。金額の差はあるものの、この条件を満たす企業は数多く存在します。その中から、配当株投資の対象にふさわしい企業を選ぶ際の「基準」とは何でしょうか?

最も注目したいのが、「参入障壁が高い企業」に投資するということです。参入障壁が高いとは、その業界に新規参入したいと考える企業にとって、「参入の妨げとなるような障害」が大きく立ちふさがっている状態を指します。

参入障壁が高い4つの業種

参入障壁には、大きく分けて3つの要因があります。

・既存企業に優位性(規模の経済性、ブランド力、技術力)がある
・法律的な規制がある
・著しく商品の差別化が図られている

参入障壁が高いということは、他の企業の参入が難しくなるため、毎年しっかりと利益を出している企業ということになります。こうした参入障壁が高い業界の代表格は、次の4業種と考えています。

①銀行・金融
②商社
③保険
④通信キャリア

銀行業界はメガバンクを中心に圧倒的な存在感を示しており、商社や保険業界に関しても同じような状況になっています。まず第1段階の絞り込みは、この4業種から選ぶのがいいと考えています。

新規参入が難しい4業種の中でも、とくに「稼ぐチカラ」のある企業を選ぶ基準は、極めてわかりやすいと思います。その業界の中から、最も利益を上げている企業を選べばいいのです。

大型株を買い進めて、早い段階で「地盤」を築く

配当株投資で着実に成果を手に入れていくためには、早い段階でしっかりとした「地盤」を築いておくことが大切です。その地盤の基礎となるのが、「大型株」です。みなさんの多くはご存じだと思いますが、大型株とは、一般的にTOPIX(東証株価指数)算出対象銘柄の中で、時価総額(株価×発行済み株式数)と流動性(売買代金)が高い上位100銘柄のことを指します。

最初に大型株を買い進めていけば、配当金が積み上がるだけでなく、精神的にも余裕が生まれます。株価の動向に振り回されたり、あれこれと目移りしたりせず、ゆったりとした気持ちで取り組むことが、長期投資には不可欠です。

ここで、大型株を選ぶ際の4つの基準を整理しておきます。

【基準①】「参入障壁」が高い業種から選ぶ
【基準②】業界の第1位と第2位の企業を選ぶ
【基準③】「3割」以上のシェアを持つ企業を選ぶ
【基準④】「ストック型ビジネス」の企業を選ぶ

基準①は先ほど述べた通りで、基準②③についても、いずれも強みや実力を備えた企業と考えることができます。また基準④の「ストック型ビジネス」とは、「一度契約をしたら、その契約が終わるまでは継続して対価が得られるタイプのビジネス」のこと。前述の「参入障壁が高い4業種」では、商社以外の3つが当てはまります。

こうした基準をクリアした上で、きちんと利益を出して、それを株主に還元する意識を持っている企業は、「長期保有に適した銘柄」と考えることができます。歴史があり、実績があり、稼ぐチカラに優れているから、「地盤」とするのに十分な条件を兼ね備えているのです。

また、もうひとつの基準として、「人の生活に不可欠なもの」という視点もあります。通信キャリアなどは、その典型例です。

大型株は想像以上に株価が上下に変動する

こうして選んだ大型株は、ある意味では「鉄板」と考えることができますが、想像以上に株価の変動があることを、前もって理解しておく必要があります。何かが起こった時に真っ先に売られてしまうのが、これらの大型株なのです。

株価が急落しても、そこで慌てふためく必要はありません。有力企業の「稼ぐチカラ」が低下したわけではありませんから、ある程度の時間はかかるかもしれませんが、株価は元の水準に戻ることになります。私たちまで動揺する必要はないのです。

こうした局面は、私たち個人投資家にとってはピンチでも何でもなく、逆にチャンスなのだということを知っておくことも重要です。

配当株投資は長い時間軸で取り組む投資法ですから、一時的な株価の下落が痛手になることはありません。売らなければいけない人たちが売却して、株価が急落しているのであれば、それは持ち株を増やすための絶好のチャンスですから、慌てふためくのではなく、むしろ積極的に買い進める必要があります。どんな局面でも買い続けるというスタンスを貫いていれば、ピンチをチャンスとして飲み込むことができるのです。

株式投資をやっている人の中には、「今さら大型株を買ったところで、伸びシロは期待できそうもないから、儲かるはずがない」と否定的に見ている人たちがいますが、私はまったく違う見方をしています。日本を代表するような大企業ほど、安定的に配当金を分配していると考えています。

大企業は懸命に決算予想の実現に取り組んでいる

配当株投資で成果を上げるためには、1株当たり利益の増加率や増配率だけでなく、大手企業の増配に対する「意識」や「姿勢」にも目を向ける必要があります。

日本を代表するような大企業は、その活動に大きな社会的責任が伴いますから、決算予想をする場合でも、予想の精度や確度が格段に高いだけでなく、決算予想を実現することに対して、懸命に取り組むような強い姿勢があります。これは中小企業にはあまり見られない、大企業に特有の意識だと思います。

経営トップにとって、決算予想を実現できないことは、大変な「恥」となります。大企業には、何が何でもやり遂げるという気迫がありますから、株主に分配する配当金にも、その強い姿勢と気迫が反映されている、ということです。

大企業は決算予想の実現のために、経費の大幅な削減を含めて、あらゆる手段を講じていますが、「これはダメだな」と私が考えているのが人員の削減です。社員を辞めさせてまで決算予想を実現しようとする企業に、将来性があるとは思えません。一時的な効果は得られるのかもしれませんが、そんな企業に対して、社員は頑張って働く気にはならないものです。リストラによって業績を押し上げているような企業は、論外だと考えなければいけません。

第1回~第4回まとめ
・「配当株投資」はどんな相場でも長期的視点で粛々と大きく育てていくのが良い
・年間配当金100万円を目指し、まずは「年間12万円」を目安にする
・配当金が少しずつ増えることに喜びを感じられれば、誰でもできる
・「参入障壁が高い企業」を中心に淡々と投資をする

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