オーダースーツ 回復から成長へ 「紳士服」関連株が上昇

直近の値動きから見るテーマ株/ QUICK

株式市場で「紳士服」関連株が買われています。QUICKが選定する関連株の平均上昇率は2.6%と、利益確定目的の売りで反落した東証株価指数(TOPIX、1.5%安)に対して逆行高となりました(6月23日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!

出社増加に沿ってスーツ需要も回復

紳士服関連株が買われたきっかけは、企業の好調な決算発表でした。オーダースーツ専門店を運営するグローバルスタイルが6月14日に発表した2023年7月期の第3四半期決算は、営業利益が前年同期比24%増の5.5億円でした。会社通期予想に対する3四半期累計の進捗率は88%となり、順調に推移しているとの見方が広がりました。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う行動制限や外出自粛などで、同社の2020年7月期営業利益は急減しましたが、21年7月期以降は順調に回復しています。また、民間調査によると、緊急事態宣言が発令された20年4~5月に一時36.1%まで落ち込んだ東京都の出社率は、23年4月最終週に76.2%まで回復しました。出社の増加に沿って、スーツ需要が回復基調にあるとの見方から関連株にも物色が広がりました。

子ども向けオーダースーツ・シャツ事業も展開【グローバルS】

上昇率首位の「 グローバルスタイル 」は「GINZAグローバルスタイル」ブランドを中心にオーダースーツ専門店を経営。オーダースーツ専門店の顧客層は従来、40~50代以上の富裕層などが中心でしたが、同社の店舗では成人式用のオーダースーツなど20~30代の顧客が約55%を占めており顧客層を拡大しています。2022年9月からは七五三などのお祝い用に子ども向けのオーダースーツ・シャツの生産も開始しました。

 オーダースーツ事業を成長分野に位置付け【コナカ

上昇率2位の「 コナカ 」は、郊外中心の大型店舗「コナカ」、繁華街中心の中小型店舗「スーツセレクト」、カスタムオーダー専門小型店舗「ディファレンス」の3業態を展開。2022年9月期~26年9月期の中期経営計画では、コロナ禍で大きく成長したディファレンス事業を成長分野と位置付けました。ディファレンスの出店と不採算店舗の退店を同時に加速し、高品質志向に対応するとともに業績不振からの脱却を目指しています。

 イベント需要、フォーマル需要がスーツニーズを牽

そのほか、「 AOKIホールディングス 」は、約60サイズからジャストサイズを選べる「クイックオーダースーツ」の店舗展開を拡大。「 はるやまホールディングス 」は、「はるやま」や「P.S.F.A.(ピー・エス・エフ・エー)」などのブランドを展開。関連会社の田原コンサートで国内屈指の技術力をいかしたオーダースーツ事業を行うなど差別化も図っています。「 タカキュー 」は強みを持つオーダースーツの構成比を引き上げ、債務超過の解消に向け商品構成を最適化する戦略を推進。これらの銘柄も買われています。

コナカは、2026年のメンズスーツの市場規模をコロナ収束を前提とした場合、単価は微増ながら購入数の減少などでコロナ前(19年)の約83%にとどまると推測(21年12月時点)。一方、成人式や就活・新入社員などのイベント需要、冠婚葬祭などフォーマル需要はコロナ前に戻ると分析しています。また、最近では、着用する機会が減った結果、オーダースーツを「嗜好品」として楽しむ人も若い層を中心に増えているようです。

回復から新たな成長分野になりつつあるともいえるオーダースーツ市場。感性や着心地などニーズに応えられる商品やサービスといった商品・顧客戦略が銘柄選別のカギとなりそうです。