住民税にはミスが多い 。通知書のチェックで払いすぎを防ごう!

フロッギー版 お金で得するオタク会計士チャンネル/ 山田真哉

みなさん、こんにちは! 公認会計士・税理士の山田真哉です。住民税については毎年お伝えしていますが「山田さんの言う通りに調べてみたら間違ってました!」というコメントをたくさんいただきます。そこで今回は、住民税について絶対チェックすべきポイントと、住民税決定通知書の確認方法をお伝えします。

結婚、出産、転職など、なにかしら変化があった時は、ミスが非常に起きやすい状況と言えますので、そのような方は特にご注目ください。

≪今回の内容≫
・この世の大前提
・住民税決定までの流れ
・住民税のよくあるミス
・住民税最速チェックポイント
・住民税を修正するポイント

人は生きているだけで税金がかかる

まず、この世の大前提として人はミスをする生き物です。これは仕方がありません。

そして、もうひとつ。人は生きているだけで税金がかかります。いろんな税金がありますが、特に大きいのが所得税です。収入から経費を引き、さらに控除できるものを引いた所得金額に対してかかる税金です。控除とは国が認めた値引きみたいなもので、寄付やiDeCoなどをした際に使えます。ちなみに所得とは、利益と同じような意味です。所得税は所得金額に応じて5%から45%の税率がかかってきます。

所得税の計算を自分でして申告することを確定申告と言います。これは原則、全国民がやらなければいけないものです。もちろん例外はあるので、のちほどお話します。

そして、所得金額にかかる税金として住民税もあり、税率は10%です。住民税は、みなさんがお住まいの自治体からかけられる税金なので、地域によって市民税、県民税、都民税、府民税、道民税と名前が変わります。

会社員は年末調整をすることで納税が終わる

では、住民税決定までの流れを見ていきましょう。まず、会社員の場合。2022年に無事に「生きた」とします。すると、2022年12月頃に会社が所得の計算を行ってくれます。年末に行うので、年末調整と呼んでいます。

「節税チャンスを逃すな! 令和4年分 年末調整のまとめ」を読む

会社が行った年末調整は、実質的に確定申告の簡易版みたいなものです。これにより会社員の方は、納税を終えているため確定申告をしなくても大丈夫です。ただ、年末調整では計算しきれてない所得があった場合……例えば医療費がたくさんかかったとか、ふるさと納税(ワンストップ特例以外)や副業をやっているなどの場合は、確定申告をしなければならない、というルールです。

確定申告することによって、人によっては還付金(払いすぎた税金)が返ってきたりします。

確定申告を翌年3月15日までにすると、5月くらいに各市区町村が住民税の計算をします。そして、6月ごろに市区町村からみなさんへ住民税決定通知書が送られてきます。

住民税決定通知書が会社から届くのは特別なルート

みなさんがご自身で確定申告をした情報は、税務署からお住まいの市区町村にデータが渡ります。このため、自営業の方は基本、役所から直接通知書が届きます。

一方、会社は社員に年間いくら支払ったか、という情報の給与支払報告書を市区町村へ届け出ます。その情報を元に役所が計算し、通知書を会社へ届け、それが会社員の元へと届きます。

役所から直接届くことを普通徴収、会社経由で届くことを特別徴収と呼びます。役所から直接届くのが正当なルートで、会社経由が実は特別なルートということなんですね。

会社に内緒で副業をしている方の場合、会社からは給与分の通知書が、さらに役所からも副業分の納税通知書と納付書が届きます。そして、6月から新しい住民税額で給料から天引きされたり、納付書で住民税を納めたり……という流れになります。

ミスが多い住民税。間違いに気づかなれば税額確定

冒頭で「住民税はミスが多いよ」という話をしました。会社も役所も、何百人何千人という人の計算をするのでミスが発生する可能性は高くなります。自分がうっかりケタを間違えて書いちゃう、みたいなこともあるわけですよね。でも、そういった場合も税金というのは原則、自己責任です。

通知書を受け取って、何も気づかなければ、もうそれで税額が確定してしまいます。だから、きちんと通知書を確認し、間違っていたら、すぐに手続きをするーーこれが税金の世界の原則になってます。

それでは具体的にどういったミスがあるのか、そしてどうチェックすればいいのか、お話ししていきます。

住民税のよくあるミス最速チェックポイント:ふるさと納税

住民税のよくあるミスで1番多いのは、ふるさと納税をした方です。特に下記3点については特に注意したほうが良いポイントです。

①確定申告での記入忘れ
②上限額の計算ミス
③ワンストップ特例制度でのミス

①確定申告での記入忘れ
ミスの原因の多くは、確定申告での記入忘れです。とくに医療費控除や住宅ローン控除のために確定申告をする会社員は、ふるさと納税による寄付金控除について書き忘れてはいけません。

あとでお話しする、ワンストップ特例制度をした人も確定申告をするなら、全部ひっくるめて確定申告しなくてはいけません。

あくまでも確定申告が1番正しい税金の報告というのが大前提です。ここで記入漏れがあると、ふるさと納税による寄付金控除は全く反映されません。具体的に言うと、e-Taxの所得控除部分の寄付金控除の項目にきちんと入力する必要があります。

②上限額の計算ミス
また、ふるさと納税をした際の、寄付限度額の上限ミスについても、住民税の通知書で気づく方が多いです。

ふるさと納税サイトで上限額をシミュレーションした後で、追って住宅ローン控除や、医療費控除を申請する方もいますよね。その場合、寄付限度額の上限額が下がっている可能性があります。

こちらは通知書で気づいても、もうどうしようもありません。次から気をつけよう、ということになります。

③ワンストップ特例制度でのミス
そして、ワンストップ特例制度でのミス。これは痛いです。ワンストップ特例制度とは、確定申告をしなくてもよい会社員が、寄付した自治体へ特例の書類申請を送るだけで、確定申告が不要になるという制度です。

ふるさと納税をすると、特例申請書が届きます。この書類に必要事項を記入し、マイナンバーカードのコピーなどを貼り付けて、封筒に入れて出せばオッケーです。

すると、ふるさと納税の寄付先の役所からお住まいの市区町村に、「住民税を減らしてあげてね」と連絡が行きます。こうして、ふるさと納税をした分だけ安くなった住民税の通知書がみなさんへ届くという仕組みです。

ただし、ふるさと納税をした先の自治体が寄付した人の市区町村に連絡をし忘れたり、遅れたりすると、ふるさと納税をした記録がお住まいの自治体にはない、という状況になります。

その結果、減税されていない住民税決定通知書がみなさんの手元に届いてしまう、ということもあります。その場合、ふるさと納税で狙った効果が全くなくなってしまいます

また、ワンストップ特例のミスでよく目にするのは、6ヵ所以上の市区町村に出してしまうこと。この場合、すべて無効になります。1年間の寄付先は5ヵ所までです。

さらに注意が必要なのは、この申請書を出す期限が翌年の1月10日までだということ。つまり12月31日にふるさと納税をすると、ワンストップ特例の書類を急いで出さないと期日に間に合いません。

もし遅れると、ワンストップ特例が無効になる可能性が高いです。その場合は、別途、確定申告をしなくてはいけません。さらに、自治体の処理ミスが起こる可能性があります。

住民税決定通知書で「ふるさと納税」はどこに書いてある?

というわけで、どういった点をチェックしなければならないのかと言いますと、ふるさと納税をした場合、住民税決定通知書の「寄付金税額控除額」もしくは「税額控除額」と下の「摘要欄」にきちんとふるさと納税の額が書いてあるのかをチェックする必要があります。

例えば、年間で15,000円ふるさと納税したとして、手元に届いた通知書の適用欄には「寄付金税額控除額12,337円は税額控除に含みます」と書いてあるとします。

これが、「あなたはふるさと納税しましたね」というメッセージです。あれ、15,000円寄付したはずなのになぁと思った方、正解です。基本的に寄付した額と住民税の減税額はズレます。

確定申告をした場合、所得税から減税し、残りを住民税で引くという形になってますので、計算式でいうと寄付金額から2,000円引いた額に対して(1ー所得税率)をかけます。

所得税率というのは、所得が195万円、330万円、695万円と上がっていくのに対して、5%、10%、20%、23%の税率がかかります。

例えば、寄付金額が15,000円で所得税率5%の場合。15,000円から2,000円引いて、さらに1から5%を引きます。つまり13,000円に95%をかけた12,350円となります。通知書には12,337円と書いてあるので、大体近い金額です。

細かいことを言うと、復興所得税(2.1%)があったりするので、少しズレてしまいます。ただこれが1,000円以上ずれてたら、なにかが間違ってる可能性が高いです。

(例)
寄付金15,000円、所得税5%の場合
寄付金税額控除額=(15,000ー2,000)×(1ー5%)=12,350

上記は確定申告をした方の場合の計算ですが、ワンストップ特例だけを使った方は、寄付金額から2,000円を引いた額、これが通知書に載ってるはずです。ワンストップ特例の場合は住民税からしか引かれません。

お住まいの地域によって、摘要欄の記載方法は異なりますので、その点ご留意ください。

住民税のよくあるミス最速チェックポイント:寄付・扶養・医療費・iDeCoなど

つづいて、ふるさと納税以外の寄付についてです。日本赤十字や認定NPO法人に寄付した場合、ふるさと納税と同じく、寄付金税額控除額という箇所に数字が反映されているはずです。寄付した額から2,000円を引いて、その金額の10%が反映されていたら正解です。

また、配偶者を扶養にした/扶養家族がいるという場合は、配偶者、配偶者特別、扶養の箇所に数字が入っています。所得税ですと1人38万円ですが、住民税では33万円になります。違いがあるので、ご留意ください。医療費や生命保険料がある場合は、それぞれの該当欄に控除額が書かれているはずです。

このあたりの細かい数字については、通知書の裏側に書いてありますので、お手元にあれば確認してみてください。

そして、最後にかなりミスが多いのがiDeCoです。iDeCoについては、年末調整や確定申告を忘れる方も結構多くいます。ちなみに通知書には、iDeCoとは書かれていません。「小規模企業共済」という欄に1年間に掛けた金額が書かれているはずです。その数字が合っていたら正解、なかったら記入漏れということになります。

以上がよくある間違いの代表例なのですが、他にも、年末調整で出したものと確定申告で出したものを見比べて、異なっている箇所がないか確認しましょう。

誤った住民税を修正する方法

最後に、間違いが見つかった場合、住民税をどうやって修正すればいいのか、という方法についてお話しします。

役所が間違っていることがわかった場合は、役所に電話してください。それでほとんどの場合、直ります。自分や会社が年末調整で間違えていたり、確定申告で自分がミスしていたという場合は、確定申告の更正の請求をする必要があります。

役所に相談した結果、住民税の申告をやり直すだけでいいということであれば、役所で住民税申告をします。

ワンストップ特例を出し忘れたり、やり忘れたり、間違えていた場合は、ワンストップ自体はやり直しができませんので、税務署へ確定申告の期限後申告をしてください。そのときは間違えた部分だけでなく、自分の給料などイチからすべて書く必要があります。

そして、かなり多いのが過去ずっと間違えてたというケースです。その場合は、5年前までさかのぼることができます。つまり、やり直すことができます! 2023年であれば、2018年分までさかのぼることができます。

このような話をすると「過去の納税通知書なんてもうないよ」とか「そもそも会社からもらった記憶ないんですけど」という方が結構います。その場合は納税証明書をもらってください。納税証明書は役所でも取れますし、マイナンバーカードがある方はコンビニなどでも取れます。気になった方はぜひご確認いただければと思います。


というわけで、今回の住民税のような絶対やったほうがいいことについては、毎年定期的に動画を配信しています。僕のチャンネルをフォローしてくれれば、来年も確実にチェックを忘れないと思います。

それでは、今後ともごひいきに。ば~いば~い!