2023年前半テーマ株 高パフォーマンス ベスト 3

直近の値動きから見るテーマ株/ QUICK

旬な株式テーマをご紹介する本連載。今回は2023年上半期(1~6月)に取り上げたテーマのうち、昨年末から6月末までに東証株価指数(TOPIX)を大きく上回ったものをご紹介します。なお、全24テーマのうち、7割弱にあたる16のテーマ株がTOPIXを上回りました。今後もぜひチェックしてみてくださいね。

高パフォーマンスのトップは「民放キー局」関連株

上昇率トップは3月2日掲載の「民放キー局」関連株(『規制緩和要望で外資流入の思惑「民放キー局」関連株が上昇』)で上昇率は42.0%と、TOPIX(21.0%)を21.0%ポイント上回りました。上昇率上位3銘柄は、テレ東HD 」、「 TBSHD 」、「 フジHD 」。株価上昇のきっかけは、外資規制に関する意見書提出でした。海外勢の小口の買いが入りやすくなるとの思惑のほか、乱立気味の動画配信サービスの再編が進むとの見方も買いを誘いました。

記事掲載後、5月26日に参院本会議で改正放送法・電波法が成立しましたが、地方の民間テレビ局への放送番組の規制を緩和するのが柱で、外資規制の緩和等はありませんでした。もっとも、意見書では外資規制が機能するには行政と放送事業者の双方にとって合理的で過度の負担とならない仕組みであることが重要として「今後も規定内容の見直しや実務作業の簡素化などを検討のうえ、放送事業者の負担軽減を図っていただきたい」と表明しています。息の長いテーマのため失望する動きは目立ちませんでした。

2位は僅差で「AIチャット」関連株

上昇率2位は2月16日掲載の「AI(人工知能)チャット」関連株(『IT関連企業の取り組み加速 「AIチャット」関連株が上昇』)の41.7%で、TOPIXを20.7%ポイント上回りました。上昇率上位3銘柄は、ポート 」、「 ユーザーローカル 」、「 TDSE 」。株価上昇のきっかけは米マイクロソフトや米グーグルによるAIチャットに関する一連の発表でした。掲載後も文章や画像を自然な対話から作成できる生成AIを活用したサービスを打ち出すベンチャー企業などが相次ぎ、生成AIは23年上半期の市場で話題をさらった一大ブームとなりました。

3位は「AIチャット」が波及した「半導体部材・製造装置」関連株

上昇率3位は5月11日掲載の「半導体部材・製造装置」関連株(『在庫調整とAI・DXが追い風 「半導体部材・製造装置」関連株が上昇』)の38.5%で、TOPIXを17.5%ポイント上回りました。上昇率上位3銘柄は、新光電気工業 」、「 イビデン 」、「 大日本印刷 」。株価上昇のきっかけは、米インテルによる2023年1~3月期の決算説明会でした。パット・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO)が半導体業界について、「年後半に緩やかな回復を見込んでいる」との見通しを示したためです。

コロナ禍の特需の反動で過剰な在庫に直面していた半導体各社の収益が回復に向かうとの期待を誘いました。さらに、生成AIブームが熱を帯び、より高性能の半導体の需要に追い風になるとの見方も加わり株価を押し上げました。

これからも「旬」のテーマと関連銘柄を紹介

今回は、今年前半にご紹介した24のテーマのパフォーマンスを振り返り、好調だった「民放キー局」、「AIチャット」、「半導体部材・製造装置」の上位ベスト3のテーマをご紹介しました。因みに、番外の4位以下では、4位が「ヒートポンプ」(『欧州でクリーン投資拡大 「ヒートポンプ」関連株が上昇』)、5位が「宅配便」(『2024年問題が物流業界を変える「宅配便」関連株が上昇』)、6位が「タイヤ・ホイール」」(『値上げで収益改善へ 「タイヤ・ホイール」関連株が上昇』)、7位が「建設機械」(『中国インフラ投資に回復期待 「建設機械」関連株が上昇』)となっており、いずれもTOPIXを10%ポイント以上上回りました。

今回ご紹介したベスト3のテーマ株の株価上昇の直接的なきっかけは「意見書の提出」、「会社による発表」、「決算説明会の内容」などでした。それぞれは、その時限りのものですが、株価の上昇は一過性にとどまらず、その後も持続的に大きく上昇しました。その背景には、「息の長いテーマ」(放送関連の規制緩和)、「一連の動き」(AIを巡る関連企業の相次ぐ動き)、「ブームの波及」(AI需要が半導体関連を刺激)といった、テーマを支える大きな流れもあるようです。

今後も、そういった「旬」のテーマをピックアップし、そのテーマが旬となっている背景と関連銘柄をご紹介していきます。