今の社会動向や投資環境をもとにホットな銘柄を選定している「日興ストラテジー・セレクション」。7月号では、銘柄の新規の選定、除外はありませんでした。そこで、今回は、選定された16銘柄の中から、2023年5月末までの上昇率・下落率が大きかった銘柄※を背景とともに解説します。
早速、銘柄をチェックして、これからの銘柄選びの参考にしてみましょう。
上昇率No.1は、キャッシュレス決済を支える「GMOフィナンシャルゲート」
日興ストラテジーセレクションの16銘柄のうち、2023年5月末までに最も上昇したのは「 GMOフィナンシャルゲート 」でした。上昇率は39.9%です。
GMOフィナンシャルゲートは、GMOペイメントゲートウェイの子会社で、リアル店舗や自動販売機向け決済端末といった対面分野におけるキャッシュレス決済代行事業を展開しています。
売上高は、提供するサービスの品目にしたがってイニシャル、ストック、フィー、スプレッドに分けられます。端末販売等を起点に、継続的に計上されるストック型収益が増えていくビジネスモデルです。
成長ドライバーは、新世代型決済プラットフォーム「stera」
同社の業績は、GMOペイメントゲートウェイ 、三井住友カード、Visaが共同で構築した新世代型決済プラットフォーム「stera(ステラ)」によって牽引されると想定されます。「stera」はリアル店舗およびネット店舗の豊富な決済手段に対応しています。例えば、リアル店舗向けの「stera terminal」は、 1台の端末でカード決済、電子マネー決済、QRコード決済に対応し、多言語・多通貨決済にも対応可能です。同社は、「stera」においてリアル店舗向け端末販売と決済センター(決済データを処理するセンター)運営を担っています。
「stera」は、加盟店にとって業務の効率化が図れる上、安心・安全面で導入メリットを数多く備えているため、今後は飛躍的な普及が期待されています。
2023年4月からは、直営郵便局への「stera terminal」 の設置が進んでいます。2023年秋までには、すべての直営郵便局約2万局に約2万6000台が設置される予定で、下期以降の業績の押し上げ要因となるでしょう。
キャッシュレス決済の普及は、業績に追い風
2023年9月期第2四半期(1−3月)決算は、売上高が前年同期比71.8%増、営業利益は2.2倍と好調でした。インバウンド関連の加盟店開拓や大口案件による決済端末の販売拡大が寄与しました。また、2023年9月期の通期連結業績は、売上高が前期比32.3%増、純利益が33.5%増を見込んでいます(会社予想)。
経済産業省によると、2022年時点で日本のキャッシュレス決済比率は36%にとどまっています。しかし、2025年までにはキャッシュレス決済比率を40%程度、将来的には世界最高水準の80%を目指す方針です。
キャッシュレス決済を支える同社にとっては、中長期的にも追い風です。今後も同社の動向に注目していきたいですね!
上昇相場の中、下落してしまったのは「ビジョナル」
残念ながら下落してしまったのは、会員制転職プラットフォーム「ビズリーチ」の運営を主力とする人材関連会社の「 ビジョナル 」です。下落率は18.1%でした。
同社は管理職経験者や専門職等のプロ人材、国内外の優良企業、一流ヘッドハンターをマッチングさせることに強みを持ち、売上の8割以上をビズリーチ事業が占めています。
ビジョナルの株価が下落したのは3~4月。3月16日に発表した2023年7月期第2四半期累計(8−1月)の連結業績は、売上高が前年同期比34.2%増、純利益が45.8%増と好調でした。しかし、決算発表翌日の3月17日は960円安、3月20日は630円安で終わっています。要因としては、通期計画に対する進捗率が営業利益で46.6%にとどまったことや、2023年7月期通期業績予想をすえ置いたことなどが考えられます。
また、週足のチャートでは2月最終週に「デッドクロス」が出現しています。売買の判断材料としてテクニカル分析を重んじる人からすると、このようなチャートが出現したことで売られやすくなったという見方もあるかもしれません。
長期の移動平均線を、短期の移動平均線が上から下に突き抜けたとき(交差したとき)を、デッドクロスと呼びます。これから相場が下落傾向になるかもしれない、という「売りサイン」のひとつとして考えられています。
足元の株価は底をうち、業績は好調
とはいえ、足元の株価は5月下旬に底を打ち、上昇に転じています。また、6月13日に発表した2023年7月期第3四半期累計(8−4月)の連結業績は、売上高が前年同期比30.3%増、純利益が44.3%増で、第2四半期に続いて増収増益でした。主力のビズリーチ事業も好調で、2023年7月期の連結業績も2ケタの増収増益を見込んでいます(会社予想)。
政府は6月16日に今年の「経済財政運営と改革の基本方針」を閣議決定し、労働移動の円滑化に積極的に取り組む姿勢です。労働市場改革は、優秀な人材確保のための賃上げなどを通じ、将来的な日本の労働生産性向上のきっかけとなることが期待されます。こうした好循環は、プロフェッショナル領域での採用支援に強みを持つ同社への追い風となるでしょう。
今回は、日興ストラテジーセレクションから、今年の上昇率・下落率が大きかった銘柄をピックアップしました。ぜひ、今後の銘柄選びの参考にしてみてくださいね。