株式市場で「インボイス制度」関連株が買われています。QUICKが選定する関連株の平均上昇率は6.6%と、円高の進行を受け下落した東証株価指数(TOPIX、0.7%安)に対して逆行高となりました(7月14日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!
新国税庁長官、「制度の円滑な導入と定着へ柔軟に対応」と表明
消費税のインボイス(適格請求書)制度関連株が買われたきっかけは、国税庁長官の記者会見や日銀短観の発表でした。7月4日付で国税庁長官に就任した住沢整氏は、記者会見で、5月末時点でインボイス発行事業者の登録申請件数が約344万件に上ったと公表。個人事業者などを念頭に「制度の円滑な導入と定着に向け、柔軟な対応を心掛けたい」と表明しました。また、同日、日銀が発表した全国企業短期経済観測調査(短観、6月調査)では、中堅企業の2023年度のソフトウエア投資額の計画は前年度比22.9%増、中小企業は21.6%増と大企業(12.5%増)を上回りました。中堅・中小企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)化を急ぐ動きを示唆しています。
インボイスは消費税の税率や税額が記された請求書や納品書のことで、モノやサービスを売る企業が買う企業に対して発行します。買い手企業にとってインボイスの書類は、二重の納税を防ぐために必要になります。紙でも発行できますが、業務ソフト各社は郵送などのコストがなく保存も容易なため経理のデジタル化を提案しています。2023年10月の制度開始に向け申請が進んでいるとの見方から関連株に物色が広がりました。
「invoiceAgent」の契約が急増【ウイングアーク1st】
上昇率首位の「 ウイングアーク1st 」は独創的なソフトウエアやクラウドサービスで企業のDXを推進しています。インボイス制度関連では、電子帳簿保存法に対応した文書管理ソリューション「invoiceAgent」、文字認識による帳票のデータ化、請求書の送受信から管理までの一括運用、契約の電子化と関連文書の一元管理といったサービスを展開しています。7月13日に発表した2023年3~5月期決算で売上収益と利益指標が過去最高を更新、またinvoiceAgentの契約社数は前年同期から181社増え、495社へ急増しました。
「PCAインボイス制度スターターキット」を展開【ピー・シー・エー】
上昇率2位の「 ピー・シー・エー 」は自社開発による基幹業務パッケージソフトの総合サービス事業を手掛けています。パッケージソフトの導入社数は累計24万社で、クラウド導入社数も2万社以上に上ります。インボイス制度の導入を控え7月24日から既存の会計ソフトなどで対応プログラムを順次リリースする予定です。インボイス制度への対応に不安がある事業者には、キットを活用して素早く快適に制度対応を進められる「PCAインボイス制度スターターキット」を展開しています。
基幹業務ソフトを手掛ける会社に追い風
そのほか、クラウド型の営業DXサービス「Sansan」を法人向けに展開している「 Sansan 」は請求書処理のクラウドサービス「BillOne」でインボイス制度に自動で対応。基幹業務管理ソフトの「奉行」シリーズを展開する「 オービックビジネスコンサルタント 」は、クラウドサービス「奉行クラウド」でインボイス制度や電子インボイスに対応。企業向けのクラウドサービスや個人向け家計簿アプリを手掛ける「 マネーフォワード 」はクラウドサービス「マネーフォワードクラウド」でインボイス制度に対応。これらの銘柄も買われています。
インボイス制度などDX化を促すような制度の導入は今後も続きそうで、基幹業務ソフトを手掛ける会社には追い風になりそうです。新制度導入をきっかけにシェアを拡大できる企業を見極めて投資していきたいですね。