元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者

今日からお金賢者になれる「1分書評」/ 日興フロッギー編集部

巨万の富を築いた人の実態は、イメージとまったく異なる!? 資産運用から何にお金を使うかまで、億万長者の傾向をギュッとつめ込んだ本。お金持ちマインドを学べると同時に、彼らのやっている相続税対策も知ることができます。

意外に地味? でも、教育費は惜しまない億万長者のリアル

著者の10年もの税務調査経験から見えてきた”億万長者のリアル”が描かれています。著者自身は1000万円もの奨学金返済を抱えた過去があり「どうすればお金に悩まされない生活を送れるのか?」は命題であったよう。筆致は庶民目線で共感しやすいです。

さて、著者が目の当たりにした億万長者の生活は、意外なほど地味でした。相続税調査の過程で、何台もの高級車やプールなどのお金持ちアイテムを保有する人物には出会ったことがない。身につける物はファストファッション風で、室内にモノは少なく片付いている。

トップ3.5%の富裕層像を総合すると「分散投資でリスクを抑える」「節税対策として寄付」「税負担の軽い退職金でお金を増やす」「持ち家が多い」「教育費にお金をかける」等、堅実な暮らしぶりが浮かび上がってきます。

持ち家や教育費と聞けば「普通だよね」と思うかもしれませんが、その思惑はもっと深かった! 相続税は不動産の評価額が時価の8割程度になります。つまり現預金1億円を不動産に変えると、課税対象となる額を約2000万円下げられるということ。

「いかにお金を減らさないか」「いかに非課税にするか」のポイントを押さえるのが富裕層なのです。

教育費に関しても考え方は同様でした。「子どもに財産2億円を残す」場合と「3000万円の教育費をかけて1億7000万円を残す」場合、果たしてどちらが得なのか? 費用対効果が良いのは後者です。

相続税が少なくなるのはもちろん、教育費の多寡は学歴に比例し、学歴は生涯賃金に比例するーー。このあたり一抹の世知辛さを感じなくもないですが、富の循環が期待できるものには惜しみなく投資するのがお金持ち。子どもに遺産を残すより、稼げる力をつけること。お子さんがいる方には「教育こそ最大の投資」のフレーズは響くかもしれません。