日台関係の強化に「和牛」が貢献?

ニュースの裏事情/ 日本証券新聞

テレビや新聞で取り上げられたニュースの裏側を解説する本連載「ニュースの裏事情」。今回は、「日台関係の強化に貢献する和牛」に関するニュースの裏側について、ご紹介します。

広島サミットで人気だった和牛

5月のG7広島サミットに関して、自動車業界関係者はほぞを噛んでいました。「業界一丸となってサミットでカーボンニュートラルの取り組みをアピールすべく、取材陣が集まるメディアセンターの隣接地で展示会を行った。「 日産自動車 」や「 ホンダ 」など6人の自動車メーカー社長が顔をそろえたにもかかわらず、取材陣はまばら。各国へのアピールは不発だった」

その一方、サミットで人気だったのが、広島の和牛・比婆牛(ひばぎゅう)でした。国際メディアセンターでは試食に取材陣が集まったとのことです。

政府は日本食の海外普及を推進しており、中でも和牛は「WAGYU」として人気が高まっています。その中で課題は米・中だといいます。

アメリカは、日本やブラジル、欧州の一部の国などから輸入する牛肉に対して共有で年間6万5005トンの低関税枠を設定しています。それが5月に上限に到達。ブラジル産の比較的安価な牛肉の需要が高かったことが理由でした。これが和牛需要に逆風になると言われています。

もう一方の中国は、2001年の日本でのBSE(牛海綿状脳症)発生で、日本からの牛肉輸入を禁止しました。しかし2019年12月に輸入禁止令を解除し、2020年4月の習近平国家主席の来日に合わせて諸手続きの調整を行い、中国への輸出を再開する手はずでした。が、新型コロナの影響で習主席の来日が延期となり、中国には今もって輸出できない状態となっています。

こうした中、広島サミットでは名指しこそしませんでしたが、中国を念頭に「威圧的な経済的手段の使用を抑止しそれに対抗する」と成果文書に明記。中国はこれに猛抗議し、これにより中国への和牛輸出解禁は遠のいたとも見られています。

台湾への輸出強化に経済安保の観点

そんな中、「 スターゼン 」は政府の「農林水産物・食品の輸出拡大のための輸入国規制への対応等に関する関係閣僚会議」で台湾への輸出強化に意欲を示しました。

「日本の台湾への傾倒は中国を刺激しかねず、牛肉輸入禁止がさらに遠くなるかもしれない。が、かつて中国が嫌がらせで台湾パインの輸入を禁止した際、余ったパイナップルを日本が輸入して支援した経緯もある。今度は和牛で日台の関係を強化するのも経済安保の観点からもありではないか」(経産省OB)。

牛肉関連の銘柄としてはその他、「 日本ハム 」「 伊藤ハム米久HD 」「 エスフーズ 」などがあります。

(出典:日本証券新聞)