日米中のインフレ率で読み解く「景気の道しるべ」

カエル先生の株式相場プレイバック/ 日興フロッギー編集部平松 慶

マーケットの「温度感」がわかる連載「カエル先生のマーケットハイライト」。今回は物価の伸び率を示す「インフレ率」について見ていきます。日本と米国、中国のインフレ率から見えてくる経済の状況とは……?

カエル先生の一言

売買代金が落ち込むなど様子見ムードが広がる日本株市場。そんな中、8年ぶりに日米のインフレ率が逆転する現象が起きていました。どうして日本のインフレ率が米国よりも上なのか。その背景について紐解きます。

相場の盛り上がりは一服

7月31日の日経平均株価は3万3172円となり、前月末比16円安でした。
円安進行が一服したことや4−6月期の個別決算発表を控え、相場の盛り上がりは一服。東証プライム市場の売買代金は3兆円を割り込む日があるなど、様子見ムードが広がりました。

日米インフレ率が8年ぶりに逆転

相場を大きく動かす材料が少ない中、7月21日に発表された日本の6月分消費者物価指数(CPI、総合)は前年同月比が3.3%増となり、3.0%の米国と約8年ぶりに逆転しました

米国では2022年6月に上昇率9.1%とおよそ40年ぶりの高水準を記録。高いインフレ率を抑えるために、金融当局が大幅な利上げ(金融政策の引き締め)を複数回にわたり実施しました。ガソリン価格が下落していることや、利上げ効果の浸透などにより、足元ではようやく高インフレの沈静化が見え始めています

「緩和路線」を変えていない日本

一方、日本は主要国では唯一、コロナ前から金融緩和策を継続しています。10年国債利回りの変動幅拡大など部分的な政策の調整はありましたが、緩和の方向性に変化はありません。これが物価が下がらない主な要因です。

さらに、日本ではインバウンド業界を中心とした人手不足や円安の影響などもあり、商品価格・サービス価格の値上げがジワリと浸透。2023年6月1日からの電力大手による電気料金の値上げなども物価を押し上げています。

賃金の伸びは世界に出遅れ

8年ぶりに日米でインフレ率が逆転はしましたが、だからといって米国より日本のほうが景気が良くなったとは言いにくいのが現状です。その背景にあるのが賃金です。

世界的にインフレが進行した2021年1月以降で見ると、米国では賃金が14.5%も上昇したのに対し、日本は4.5%の伸びに止まっています(経済協力開発機構(OECD)より)。ようやく賃上げの流れができつつある日本ですが、まだまだ米国などと比べると、賃金が上昇していないことがうかがえますね。

気になる中国のデフレ懸念

一方で、中国のCPIの伸び率を見ると、ここ数か月0%近辺にまで落ち込んでいます。7月10日に発表された2023年6月のCPIは前年同月比で横ばい。ガソリン価格の値下がりや自動車・スマートフォンの販売不振なども下押しした模様です。

市場では中国当局による景気刺激策が期待されていますが、そうしたものは発表されていません。背景には、膨れ上がった地方政府の非効率な債務膨張を抑えたいといった思惑もあるようです。中国の景気はいまや世界中の経済にも影響を与えるだけに、今後の中国の政策にも注目しておきたいところです。

目先は決算ごとの進捗に着目しよう!

個別銘柄では、まだ拡大途上にあるインバウンド関連などを中心に、足元の決算発表で進捗などが好調な銘柄に着目しておくのがよいかもしれません。3月期決算企業の4−6月期決算発表予定を一覧化しました。ぜひ参考にしてみてください。

三菱商事
任天堂
住友商事
ZHD
伊藤忠商事
丸紅
オリックス
日本製鉄
東京海上HD
ソフトバンクグループ
ダイキン工業
ソニーグループ
NTT
本田技研工業
SMC
テルモ
富士フイルムHD
東京エレクトロン
リクルートHD
ゆうちょ銀行
日本郵政