業界に吹く3つの甘い風 「製糖」関連株が上昇

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株式市場で「製糖」関連銘柄が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は3.9%と、日米の長期金利上昇などを受け下落した東証株価指数(TOPIX、0.7%安)に対して逆行高となりました(8月4日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!

製糖業界に3つの追い風

製糖関連株が買われたきっかけは企業の決算発表でした。7月31日、三菱商事グループででんぷんや糖化品などを生産する日本食品化工は、2023年4~6月期の営業利益が11億円と前年同期から29%の大幅増になったと発表しました。

好決算の背景には「3つの追い風」が挙げられそうです。1つ目は値上げの浸透。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための行動制限が緩和され外出機会が増加。これにより、オリゴ糖など主力の糖化品部門は飲食店向けなど業務用販売が回復。製品価格の適正化を継続的に行った結果、同部門は17%の大幅増収となりました。

2つ目は過当競争の緩和。2023年1月、日新製糖と伊藤忠製糖が経営統合しウェルネオシュガーが発足。業界再編が進み過当競争が和らいだことで、各社ともコスト高を価格に転嫁しやすくなっています。そして3つ目は健康志向の高まり。各社が「糖質ゼロ」など低カロリー商品に取り組んでいることで、消費者の健康志向が刺激されたようです。そのため、ある程度の価格上昇を受け入れやすくなっていると考えられます。

4~6月期の営業利益の通期進捗率は7割に【日本食品化工】

上昇率首位の「 日本食品化工 」はコーンスターチ(とうもろこしを原料とするでん粉)などを酵素で加水分解して、水あめやぶどう糖、オリゴ糖などを生産しています。2024年度を最終年度とする中期経営計画では、安定した経営基盤を構築するために相場に応じて製品価格を設定する方針を掲げています。2023年4~6月期の営業利益は会社側が掲げる24年3月期計画(前期比49%減の18億円)の67%に達しており、通期業績の上方修正期待を誘いました。

 4~6月期の精糖事業の営業利益が4割増【フジ日本精糖

上昇率2位の「 フジ日本精糖 」は双日系の製糖会社で、上白糖などの精製糖や液糖を製造・販売しています。2023年4~6月期は行動制限の緩和などから土産物のお菓子を中心に製品の荷動きが活発でしたが、同社の販売数量はほぼ前期並みでした。一方、コスト上昇に販売価格が追い付いてきたことで採算が改善しました。精糖事業の売上高は前年同期比12%増、営業利益は42%増と大幅な増収増益でした。

採算改善や製品展開などに注目

そのほか、丸紅系の「 東洋精糖 」は「みつ花印」ブランドで上白糖やグラニュー糖、液糖などを製造販売。「 塩水港精糖 」はグラニュー糖や上白糖などの精製糖のほか、「オリゴのおかげ」ブランドでオリゴ糖など特定保健用食品も展開。「 DM三井製糖 」は「スプーン印」ブランドの三井製糖と「ばら印」の大日本明治製糖が2021年4月に経営統合して発足。これらの銘柄も買われています。

調査会社インテージの調査結果によると、砂糖(上白糖)のスーパーマーケットの店頭価格は6月時点で2020年に比べ平均で28%上昇しました。決算や統計で示されたデータの裏にある業界の動き=値上げ、競争緩和、健康志向が「製糖」関連株のテーマといえそうです。採算改善による収益向上、ニーズに応える製品展開などに注目していきたいですね。