株式市場で「空運」関連株が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は5.3%と、円安などを受けて上昇した東証株価指数(TOPIX、1.6%高)を上回りました(8月10日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!
中国から日本への団体旅行、3年半ぶりに再開
空運関連株が買われたきっかけは、中国政府が8月10日にも訪日団体旅行を解禁するとの9日の報道でした。団体旅行の再開は約3年半ぶりです。
日本政府観光局によると6月の訪日外客数は207万人となりました。新型コロナの感染拡大で大幅に減少した2020年2月以降初めての200万人突破です。一方、中国からの訪日外客数は20万人と、19年6月を8割弱下回る水準にとどまっています。団体旅行が解禁されれば中国人旅行者が一段と増加するとの期待から空運関連株が買われました。
免税店の営業時間を順次拡大【日本空港ビルデング】
上昇率首位の「 日本空港ビルデング 」は羽田空港を中心に施設管理運営と物品販売、飲食業を国内外の空港に展開しています。政府の新型コロナの水際対策が4月に終了し、新型コロナの感染法上の扱いが季節性インフルエンザと同じ「5類」に5月に移行したことで航空業界では着実な需要回復が続いています。
国際線旅客の急激な回復を受け、2023年4~6月期は閉鎖していた羽田空港第2ターミナル国際線施設の共用再開に向け準備を進めたほか、免税店などの営業時間の拡大を順次進めました。好調な業績を受け8月9日には2024年3月期の業績見通しを上方修正しました。
中国LCC日本法人を子会社化、中国路線を新規開設【日本航空】
上昇率2位は航空大手の「 日本航空 」でした。2021年6月には格安航空(LCC)事業の強化に向け、中国のLCC春秋航空の日本法人である春秋航空日本(現スプリング・ジャパン)に追加出資して連結子会社としました。23年7月には羽田発の新たな中国路線として「羽田=大連線」を開設するなど、中国路線の強化でインバウンド需要の拡大に備えています。
中国からのインバウンド、2024年夏にコロナ禍前を回復との見方も
このほか、「 スカイマーク 」は、羽田空港を拠点に国内高収益路線に注力、インバウンド回復は中期的な利益成長につながると想定。「 ANAホールディングス 」は、7月28日の決算説明会で中国当局により団体旅行のビザが解禁されればインバウンド需要のさらなる増加につながると予想。「 空港施設 」は、空港における不動産事業や熱供給事業、給排水運営事業などを手掛けており、2023年4~6月期の給排水使用量がコロナ禍前の計画水量に近づいてきたと説明。これらの銘柄も買われています。
中国からのインバウンドは団体旅行ツアーを利用することが他国に比べ比較的多く、コロナ禍前の2019年に訪日した中国人旅行者の3割弱が参加していました。足元では円安・元高が進み、中国人旅行者の人気が高い韓国のウォンやタイのバーツに比べても割安感があるため日本が旅先に選ばれやすくなるとの指摘もあります。団体旅行の解禁で24年夏には中国からのインバウンドが19年の水準に戻るとの予想も出ています。回復加速が見込まれるインバウンド需要を取り込み、収益の拡大に結び付けられる企業を見極めて投資していきたいですね。