EV化で活発化する企業の生き残り戦略

ニュースの裏事情/ 日本証券新聞

テレビや新聞で取り上げられたニュースの裏側を解説する本連載「ニュースの裏事情」。今回は、「EVを巡る企業間での事業譲渡」に関するニュースの裏側について、ご紹介します。

デンソーが特殊陶に事業譲渡

デンソー 」が「 日本特殊陶業 」に、スパークプラグ事業と排ガス用酸素センサー事業を譲渡することが7月10日発表されました。

「厳密には『譲渡に関する検討を開始』。というのも特殊陶はプラグで48%、酸素センサーで40%前後のシェアを持ち、どちらも世界トップ。そのため日本の独禁法や各国の競争法当局の承認が必要。クリアするのに半年はかかるようだ」(自動車担当記者)。

デンソーがライバルに事業を譲渡するのも、今後、自動車はガソリン車からEV(電気自動車)に置き換わるので、エンジン点火プラグや排ガス検知センサーが不要になります。それを見据え、EVなど次世代技術に注力するため、「選択と集中」で事業を譲渡したという訳です。

一方の特殊陶はエンジン、つまり内燃機関関連の連結売上高が8割に及びます。先細る事業を強化するというわけで、デンソーとは真逆の方向に向かっているようにも見えます。

「その点は、記者会見でも記者から突っ込まれていたが、明日から内燃機関がなくなるわけでなく、得意分野を強化することで、EV化時代に向けた新たな経営基盤づくりを目指すための投資資金を稼ぐ、という考えを説明していた」(前出・記者)。

特殊陶の尾堂真一会長は会見で、「衰退の方向に向かっている内燃機関事業を、どうやってうまく衰退させるのか。あるいは衰退させながら新しい事業展開をしていくのか。これは日本の自動車部品メーカーに課せられた課題だ」という言い方をしていました。

様々な機会を活かし生き残りへ

その特殊陶も、衰退を目指しているわけではありません。現在2割の非内燃機関事業を2030年に4割、2040年には6割に引き上げる計画です。そのため風力発電に使われるセラミックのベアリングボールをEVの駆動用モーターにも使うべく、来年からの増産を計画しています。EV向けの全固体電池の開発も行っています。

その全固体電池については、宇宙ベンチャーの「 ispace 」の民間月面探査プログラムにも参画しており、月で非焼結型の全固体電池の実証試験を行うとのことです。

EV化時代のさなか、特殊陶は様々な機会を活かし、生き残りを目指す方針です。

(出典:日本証券新聞)