お金の名著200冊を読破してわかった! 投資の正解 タザキ

投資がもっと楽しくなる!日興フロッギー選書/ クロスメディア・パブリッシングタザキ

投資や資産形成をもっと楽しくするためにピッタリの書籍を、著者の方とともにご紹介する本連載。今回は、「金融投資」と「自己投資」をどんな割合で考えればいいのか、サラリーマン投資家・YouTuberとして活躍する著者のタザキさんと見ていきましょう。[PR]

金融投資か、それとも自己投資か

投資というと、株や債券、不動産などの金融資産への投資がイメージされがちですが、その他にも大きな投資対象があります。それが「人的資本」です。「人的資産」のほうがイメージしやすいかもしれませんが、経済学では「人的資本」という言葉のほうが一般的です。

この人的資本という考え方は、1992年にノーベル経済学賞を受賞した米国の経済学者・社会学者、ゲーリー・スタンリー・ベッカー氏が考案しています。彼により、「教育」に投資することで「生産性」が向上し、人的資本の価値が高まることが実証されました。

人的資本とは、「将来稼ぐ見込み収入の割引価値」。つまり、これから先の就業人生で稼ぐすべての給料、ボーナス、その他所得の価値を、現在価値に割り引いた総和です。「生まれ持ったスキルや、教育によって得るスキルによる資産」と言うこともできます。

より収入が高く、安定性の高い職業に就くと、将来所得の現在価値は大きくなるので、人的資本が増大することになります。特に若い頃は、教育投資によって人的資本は増大すると言われています。もしあなたが20代や30代なら、特に人的資本への投資は意識すべきでしょう。

けれども、これは若年層に限った話ではありません。ベストセラーとなった『LIFE SHIFT』によると、人的資本の「再創造」が必要となるかもしれないからです。これまでの時代では、人生の早い段階での教育投資により人的資本を形成することが一般的でした。しかし、人生100年時代になると、キャリアの途中で人的資本の再形成が必要になってくる可能性があります。よって中年以降の人にとっても、人的資本の形成は無関係ではないのです。

「金融投資ではあり得ないリターン」の可能性を秘める教育投資

「健康」への投資も、人的資本を向上させます。将来働ける期間や労働の強度を大きくすることで、人的資本の価値を向上させたり、低下を抑えたりできる可能性があります。

元メジャーリーガーであるイチロー氏は、体調管理に余念がありませんでした。オリックスブルーウェーブでの年俸800万円の時代から、毎日3000円もするユンケルを飲むことで、体調管理をしていたそうです。

健康投資というと中年を特にイメージしがちですが、スポーツ選手の場合は、「稼ぎどき」の時期の体調管理は欠かせません。また、若いうちに生涯年収を稼ぎきるくらいでないといけないプロ野球の世界で、年俸800万円はとても高給取りとは言えません。かつてのイチロー氏のように、「高給取りではないとき」にこそ、人的資本に投資すべきなのかもしれません。

また、教育投資には、凄まじい潜在リターンが眠っています。米ブルッキングス研究所によると、大学の学位への投資(4年間の学費と、放棄した給与の合計)には年率15%のリターンがあるとされています(※1)。
※1 “Where is the Best Place to Invest $102,000─In Stocks, Bonds, or a College Degree?” 2011年

年利15%を安定して出し続ける投資商品なんてまずありません。しかし、金融商品という枠を超えれば、世の中にはそんな投資が溢れているのです。よって、人的資本を含めた最適なポートフォリオを選択することが、資産の最大化につながると言えます。

人的資本は株式型か、債券型か?

一般的に人的資本は「債券的」な資産だと言われています。人的資本が生み出す給料は、金額とタイミングが事前に決まっており、債券のクーポン(利息)に近いためです。しかしそれよりも、「人により人的資本の性質は異なる」と考えたほうがよさそうです。カナダにあるヨーク大学シューリック・ビジネススクールのファイナンス教授、モシェ・ミレブスキー氏の著書『人生100年時代の資産管理術 リタイア後のリスクに備える』が参考になります。

人的資本には2つの性格があります。株式のようにリスクのある性格のものと、債券のように安定して先を見越しやすい性格のものです。これらは二者択一ではありません。わずかに株式型である場合もあれば、強い株式型である場合もあります。債券型も同様です。

いくつかの事例をご紹介します。所得が株式市場次第で大きく変動する証券会社の営業マンは、株式型の人的資本です。人的資本が株式型であるために、金融資産も株式にしてしまうと、株式の比率が高すぎる可能性があります。一方、終身在職権のある大学教授は、債券型の人的資本だと考えられます。低リスクの資産(人的資本)を多く保有しているので、金融資産はリスクの高い株式にするどころか、株式にレバレッジをかけるのが望ましい場合もあります。

人的資本が株式型なら金融資産には債券が、人的資本が債券型なら金融資産では株式などのリスク資産が適している可能性があります。

これは投機でもギャンブルでもありません。自分自身のポートフォリオを分散投資しているだけです。人的資本をヘッジできる金融資産を選ぶのは、合理的な選択なのです。

あなたの「人的資本」は今いくら?

人的資本は、若年層にとってポートフォリオの大半を占めています。

大学・大学院を卒業した男性がフルタイムの正社員として60歳まで働き続けた場合、退職金を含まない生涯賃金は、約2億7000万円になります。高専・短大卒だと約2億2000万円、高校卒だと約2億1000万円、中学卒だと約2億円です。女性の場合は同じ条件だと、大学・大学院卒で約2億2000万円、高専・短大卒だと約1億8000万円、高校卒および中学卒は約1億5000万円です(※2)。
※2 「ユースフル労働統計2021」より

もしあなたが大卒1年目の男性正社員だとすると、今後38年かけて約2億7000万円のキャッシュフローを生み出す人的資本を持っていると考えられます。

もしくは、「ライプニッツ係数」という民法でも定められた計算式を使っても良いでしょう。これは保険などで、事故で亡くなった故人の遺族に対して、いくら補償金を払うべきか計算する際、故人が今後見込めたであろう収入の合理的な予測値を計算する方法です。

残り35年働ける30歳で、予想平均年収が400万円だとすると、8600万円になります。単純な生涯年収よりも、割引価値が反映されているぶん、こちらのほうがよりリアルな価値計算かもしれません。とはいえ、この辺は厳密ではなくざっくり計算できれば十分です。自分自身の残りの「人的資本」の大まかな価値を計算する際に、ぜひ使ってみてください。

人的資本の代わりになる資産

さて、「人的資本は将来稼ぐ所得の現在価値」だと言いました。よって、退職に近づくにつれ、減価していきます。これは「年を重ねるにつれ、人的資本を金融資産に換えている」ともいえます。

人的資本が減価するにつれて、債券をポートフォリオに組み込み、その比率を「100-年齢」や「120-年齢」にするという考え方があります。これは、非常にシンプルな目安になりますし、年齢が上がるほどリスク許容度は低くなるので合理性もあります。しかし、この理論はシンプルさを追求したものであり、すべての人に杓子定規に当てはまるものではありません。厳密には、人的資本が株式型か債券型かによって、代替される資産は変わるべきです。

米資産運用大手ティー・ロウ・プライスでグローバル・マルチアセット部門ヘッドを務めるセバスチャン・ペイジ氏の著書『分散投資を超えて』では、人的資本の代替は株式のほうが適している可能性があると指摘しています。

同書は、「給与と株式には相関性がある」と主張します。つまり、給与が上がりやすいときには株式資産の価値も上がりやすいということです。実際、1952年から2014年の平均賃金指数(インフレ控除後)は、債券よりも株式との相関性が高いことがわかりました。

同氏は前出のミレブスキー氏と同じく、「職業によって人的資本の性格は変わる」としています。資産運用や投資銀行などインセンティブ報酬が大きい業界や、景気敏感型業種(住宅、素材、輸送など)の従業員は株式市場の影響を受けやすいと言えます。一方で、終身雇用保障の教授や公務員、医療関係者や政府関係者などは、株式市場の影響を受けにくい職種と考えられます。

このように、業界や職種による違いはありますが、一般的には、リスク許容度が一定であれば、人的資本が減価するときにその代わりにするのは、債券よりも株式のほうが適している可能性が高いでしょう。

ただし、年齢が上がるほどリスク許容度は低くなるのが一般的です。それを踏まえて、株式と債券に適度に配分された金融資産が、人的資本の代替としては相応しいと考えられます。一方で、運用資金を投資しなければならないプロと違い、個人は「投資しない」という選択肢も取れるため、債券を現預金に置き換えて考えるほうがシンプルで、管理も楽になります。

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