酷暑と工場国内回帰で需要拡大 「空調」関連株が上昇

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株式市場で「空調」関連株が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は5.6%と、米利上げ観測の後退などを追い風に大幅に上昇した東証株価指数(TOPIX、3.7%高)を上回りました(9月1日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します! 

6~8月の平均気温、観測史上で最高に

空調関連株が買われた背景は、酷暑と、製造工場の国内回帰です。今年8月、東京都心部は31日連続で30度以上の真夏日を観測。気象庁は夏(6~8月)の平均気温が平年より1.76度高く、統計を取り始めた1898年以降で最も暑い夏だったと発表。日本列島は“酷い”暑さに見舞われ、エアコンなど空調機器が活躍しました。

また、製造工場の国内回帰も業務用空調設備の需要拡大を連想させました。日本経済新聞によると、上場する大手ゼネコン4社(鹿島、大林組、大成建設、清水建設)の2023年3月期の建築受注額(単体ベース)のうち、工場受注は合計で前の期から69%増加。金額は約1兆3500億円と、約1兆2200億円だった「事務所・庁舎(オフィス)」を逆転しました。政府による半導体工場の誘致の動き(『工場建設や再開発でニーズ拡大「土地調査・汚染対策」関連株が上昇』)も支援材料です。

工場の国内回帰で得た受注の納入進む【クボタ】

上昇率首位の「 クボタ 」は農業機械や建設機械が主力ですが、グループ会社のクボタ空調が大型ビル・工場向けセントラル空調機を手掛けています。東京スカイツリーに隣接する商業施設「東京ソラマチ」や超高層複合ビル「あべのハルカス」などのショッピングモール、高層ビル、データセンターなどに採用されています。クボタは、8月4日の2023年12月期第2四半期の決算発表で、「国内工場回帰の流れで得た上期空調受注の納入が下半期に進む」と公表しています。

産業分野で暑熱対策案件が大幅増【木村工機】

上昇率2位の「 木村工機 」はビルや工場など業務用施設を対象とした空調機器メーカーです。工場・生産設備やオフィス、ホテル、教育・医療施設など幅広い施設に納入しています。3月には2022年度補正予算「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金」の先進設備・システムに空冷ヒートポンプ式熱回収外調機が採択されたと発表。2023年4~6月期の売上高は、産業分野で夏場に向けての暑熱対策案件が大幅に増えたことなどから前年同期比33%の大幅増となりました。 

空調関連の成長機会は大きい

このほか、「 ダイキン工業 」は8月2日、国内生産の強化に向けて空調機の新たな生産拠点を設立するため、茨城県つくばみらい市の土地の取得を決めたと発表。「 川崎重工業 」はグループの川重冷熱工業が、冷水・温水を発生させる「吸収冷温水機・冷凍機」を製造。ホテルや病院、オフィスビル、大型商業施設、工場、地域冷暖房など様々な場所で1万6000台以上が採用されています。「 三菱重工業 」はグループ会社の三菱重工サーマルシステムズを中心にビルや病院、イベントホールといった大空間の空調を支えるターボ冷凍機などを展開しています。これらの銘柄も買われています。 

民間の調査によると、世界のエアコン市場規模は2016~30年に年平均で4.7%成長すると予測されています。労働環境の改善を目指した工場への空調設備導入・拡充の動きや、省エネ・脱炭素への対応ニーズの高まりなど、空調関連の成長機会は大きいと言えそうです。