マリオもゼルダも! IPを活用し、さらなる飛躍へ 任天堂

ここが狙い目! 日興ストラテジー・セレクション/ 日興フロッギー編集部岡田 丈

今の社会動向や投資環境をもとにホットな銘柄を選定している「日興ストラテジー・セレクション」。9月号の採用銘柄は家庭用ゲーム最大手の「任天堂」です! 早速、任天堂の投資ポイントをチェックして、これからの銘柄選びの参考にしてみましょう。

数々のゲームを創り出すヒットメーカー「任天堂」

今回仲間入りした「 任天堂 」は「スーパーマリオ」や「ゼルダの伝説」をはじめ、数々のゲームを創り出し、多くのファンを持つ会社です。これらの有力IP(Intellectual Property:知的財産権)を活用してゲームやアニメを展開し、継続的な収益基盤の拡充を図っています。

ゲーム市場拡大の波に乗る家庭用ゲームの最大手

コンピューターを利用した娯楽機器である「ゲーム専用機」をはじめ、ホームエンターテイメント分野で娯楽製品の開発、製造および販売を手がける任天堂。元をたどれば1889年に花札の製造で事業を開始したのが始まりです。その後、トランプ、ゲーム機、ゲームソフトと製品の幅を広げながらも、一貫して娯楽製品の提供に従事。どのような娯楽でも「いつかは必ず飽きられてしまう」という考えのもと独創的な商品、サービスの提供を行い、今では家庭用ゲームの最大手となっています。
世界のゲーム市場規模の拡大も同社に追い風となっています。PCやスマートフォンなど、機器の多様化によって、世界的なゲームプレイヤー人口は増加しています。また、ストリーミング(インターネットを通じた配信)、サブスクリプション(定額制サービス)など、ゲームの提供方法も拡大しており、世界のゲーム市場は今後も拡大傾向が続くと見込まれています。

コンテンツ産業の成長性に期待

ゲームやアニメ、漫画などの日本発コンテンツは世界各国に多くのファンを持ち、その経済圏・ファンコミュニティの規模は世界トップクラスです。なんと、世界で生み出した累積収入の多い上位25位のIPのうち、約半数が日本発のキャラクター等のIPによって占められています。

このコンテンツ産業には官民双方から高い注目が集まっています。2023年4月には日本経済団体連合会(経団連)が公表した「Entertainment Contents ∞ 2023 -Last chance to change-」のなかで、コンテンツ産業は極めて高い潜在能力を持つ成長産業であり、国のソフトパワーの源泉であると指摘しました。

また、経団連は2033年に向けて「世界における日本発コンテンツのプレゼンスを持続的に拡大する」という目標を掲げています。具体的には2021年時点で4.5兆円の日本発コンテンツの海外市場規模を、10年後の2033年には15兆~20兆円へと成長させることです。その実現に向けて、大きく5つの施策をまとめています。

マリオの映画が大ヒットし、IP活用を加速

2023年4月5日から世界各地で劇場公開された「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」は、全世界の観客動員数が累計1億6810万人となりました(7月30日時点)。興行収入は累計13億4900万ドル(7月26日時点)に達し、ゲーム原作の映画として歴代1位、アニメーション映画として歴代2位を記録。

売上高ベースでのIP関連収入の寄与度は依然限定的ではあるものの、映画の大ヒットを受けてマリオ関連タイトルの販売本数が伸びるなど、幅広い分野でポジティブな影響がありました。「スーパーマリオ」というIPの強さを証明する形になったと言えるでしょう。同社は今後もゲーム専用機以外で任天堂IPを展開し、任天堂IPに触れる機会を創ることで、事業全体の活性化へつなげていく方針です。

2024年3月期第1四半期は好調な滑り出し

2024年3月期第1四半期(4~6月期)の業績は、売上高4613億円(前年同期比50.0%増)、営業利益は1854億円(同82.4%増)と好調です。2023年5月に発売された『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』が1851万本(6月末日時点)の販売を記録したことや、Nintendo Switchの有機ELモデル(2021年10月8日発売)の販売台数が大幅に増加したことなどが業績に寄与しました 。

一方、Nintendo Switchは2017年3月の発売から7年目に突入し、売上鈍化が懸念されています。2024年3月期第1四半期(4~6月期)においては、有機ELモデル販売台数が大幅に増加した一方で、従来モデルとNintendo Switch Liteは減少。このような要因もあり市場では2024年3月期の売上高1兆5829億円(前期比1.2%減)、営業利益5234億円(3.8%増)を見込んでいます(2023年8月15日時点のQuickコンセンサス予想)。
2017年以降、概ね上昇傾向で推移していた株価は、足元ではレンジ圏での推移となっています。Nintendo Switchの販売鈍化が市場では懸念されている模様ですが、従来の製品サイクルに鑑みると次世代機発表への期待も高まります。次世代機が発表されると中長期的な業績の成長にも期待がかかりますね。

娯楽を通じて世界の人々を笑顔にする

家庭用ゲーム最大手としてゲーム専用機等の開発力や、マリオやゼルダなど複数の有力IPの展開力に強みを持つ「任天堂」。記録的大ヒットとなったマリオ映画に引き続き、ゲーム専用機以外の場でも任天堂IPに触れる機会を創出する方針です。同社のさらなる飛躍を応援していきたいですね。

今月号は、東映アニメーション(4816)を除外しました。日本のコンテンツビジネスの成長性に対する見方に変更はありませんが、前年に大ヒット作品が集中した反動で業績に短期的な減速感が窺えることや、株価に割安感が乏しいことから判断しました。