販売好調と円安で収益拡大期待 「自動車」関連株が上昇

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株式市場で「自動車」関連株が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は6.9%と、米株高基調などを背景に上昇した東証株価指数(TOPIX、2.9%高)を上回りました(9月15日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!

半導体不足が緩和し生産回復、円安も追い風に販売増加

自動車関連株が買われた背景は、自動車販売が好調だったことと円安・ドル高の進行です。8月の国内新車販売台数(軽自動車含む)は前年同月比17%増と、12カ月連続でプラス。また、トヨタ自動車、本田技研工業、SUBARU、マツダ4社の8月米新車販売台数は合計で24%増と、6カ月連続で前年の実績を上回りました。半導体不足の緩和を主因に増加基調が続いています。 

為替市場では、米連邦準備理事会(FRB)が高水準の政策金利を維持するとの観測が広がる一方、日銀は金融緩和を継続するとの見方から円安・ドル高基調が継続。輸出採算の改善や海外での価格競争力の強化につながるとの見方が、自動車関連の好業績期待につながっています。

低PBR銘柄の物色も自動車関連株の上昇を後押ししているようです。9月15日時点で、QUICK選定自動車大手8社のPBRは平均で0.94倍。特に、日産自動車のPBRは0.48倍、マツダは0.74倍と1倍を大きく下回っています。今年3月末には、東京証券取引所が、PBR1倍未満の企業に、株価水準引き上げにつながる具体策の開示・実行を要請。低PBR企業に対しては、持ち合い株の解消による資本効率の向上や、増配、自社株買いなど株主への利益還元などが期待されます。

業績回復で野球部の復活を決定【日産自動車】

上昇率首位の「 日産自動車 」は9月12日、経営合理化のために2009年限りで休部した2つの硬式野球部の活動再開決定を発表しました。九州野球部は24年から、本社野球部は25年から活動開始予定です。野球部復活は業績回復とその後の収益拡大を象徴するものとして株式市場でもポジティブに受け止められたようです。

8月の新車販売台数が43%増【トヨタ自動車】

上昇率2位の「 トヨタ自動車 」は8月の国内新車販売台数(軽自動車含む)が前年同月比で43%の大幅増。登録車の乗用車ブランドでは、「レクサス」が2.2倍と急増しました。8月31日付の日本経済新聞朝刊は、トヨタ自動車が2023年の「トヨタ・レクサス」ブランドの世界生産を約1020万台とする計画を固めたと報じました。22年から1割増え、19年の過去最高(905万台)を大幅に更新する見通しです。 

焦点は生産から販売にシフト

このほか「 三菱自動車工業 」はインドネシア政府による電気自動車(EV)産業誘致を受けて、同国で小型EVの生産に乗り出すと9月上旬に日本経済新聞が報じました。「 マツダ 」は9月14日に、独自のロータリーエンジンを発電機として使用するこれまでにない電動車として「MAZDA MX-30 Rotary-EV」の予約販売開始を発表。「 スズキ 」は子会社のマルチ・スズキがトップシェアを持つインドの8月乗用車販売台数(出荷ベース)が同月として過去最高を更新したと9月中旬に伝わりました。これらの銘柄も買われています。 

9月15日未明、全米自動車労組(UAW)が、米ゼネラル・モーターズ(GM)とフォード・モーター、ステランティス米自動車大手(ビッグ3)の工場のそれぞれ1カ所でストライキに突入しました。ストによる米ビッグ3の生産停滞は、日本メーカーにとって一時的な販売拡大のチャンスにもなりそうです。自動車関連を巡っては、半導体不足が緩和し焦点は生産から販売にシフトました。ここからは、国や地域などの拠点、ブランドや性能面の強みなどを武器に需要を取り込む販売動向がポイントとなりそうです。