「ドルコスト平均法」の弱点とは?

投資がもっと楽しくなる!日興フロッギー選書/ クロスメディア・パブリッシングタザキ

投資や資産形成をもっと楽しくするためにピッタリの書籍を、著者の方とともにご紹介する本連載。前回は「金融投資」と「自己投資」の割合について考えました。今回は、積み立て投資の中でも有力な手法のひとつとされる「ドルコスト平均法」についてお話しします。サラリーマン投資家・YouTuberとして活躍する著者のタザキさんと見ていきましょう。[PR]

積み立て投資は「市場は読めないもの」と割り切った投資法

今回の記事では、「積み立て投資」と「一括投資」、それぞれの特徴を見ていきましょう。

投資は「安く買って、高く売る」が基本で、そのタイミングが成功するに越したことはありません。しかし、今は安いと思っても、そこからさらに安くなったり、今は高いから待とうと思っているうちに、さらに高くなったりしてしまうことが少なくありません。

経済や相場の専門家でさえ、予想を当てるのは簡単ではありません。ましてアマチュアならなおさらです。

2020年の2、3月にコロナショックで世界的暴落が起こったとき、多くの専門家が「実体経済が冷え込んでいるのに株価が上がるのはおかしい! 二番底が来る!」と言い、それを信じた人たちは絶好の買い場を逃してしまいました。結果的には、世界的に調整することなく、株価は上昇を続けました。

振り返れば、あのときはかなりのバーゲンセールだったと言えます。しかしそれは、後から振り返っているからこそ言えることです。

積み立て投資は、「市場のタイミングは測れない」と割り切り、定期的に購入するという手法です。銘柄やアセットクラス(資産の種類)を分散するのと同じように、積み立て投資は「時間の分散」を実現します。これにより、高値で一括投資するリスクがなくなります。無駄に考えないので、精神的にもとても良く、初心者にもすすめられることが多い手法です。

先ほどお話ししたコロナ暴落のときも、一括投資する勇気は持てなくても、機械的に積み立て投資をしていたら、ある程度は恩恵を受けられたでしょう。また、元本があまり多くなくても始めることができ、時間をかければ大きな資産をつくれることも積み立て投資のメリットです。

「定量購入」と「定額購入」はどちらが良いのか?

積み立て投資には、「定量購入」と「定額購入」という2種類の方法があります。「ドルコスト平均法」と呼ばれる方法は、定額購入にあたります。下の図は、ある資産を定量購入したときと定額購入したときの違いを示しています。

ドルコスト平均法のメリットは、価格が下がったときにはより多くの口数を、価格が高いときにはより少ない口数を自動的に買えるところです。一方、定量購入は定期的に同じ口数を買うという方法なので、高いときも安いときも同じ口数を買います。

対象の資産価格が上下するときは、定額購入のほうが結果的に同じ予算でより多くの口数を買えることになります。

また、ドルコスト平均法なら毎月の支払い金額が決まっているので予算も立てやすく、「つみたてNISA」のような制度ともとても相性が良いと言えます。

私自身も、20年間非課税枠があるつみたてNISA口座には、ドルコスト平均法で毎月全世界株式インデックスファンドを積み立てしています。また、小さい子どもが2人いますので、2人の将来の学費のためにと思い、毎月6万6666円ずつ、2人で合計160万円/年をドルコスト平均法で積み立てしています。

なおかつ、余力のある積み立て投資だと、追加購入の余力も残せます。まったく余力もないような一括投資をしてしまうと、その後に買いどきがあったときに動くことができません。そのため私自身は、基本は積み立てをベースにしながらも、スポット購入の余力を残すようにしています。

一括投資をすべきケース、そうではないケース

しかし、このような多くのメリットはあるものの、積み立て投資には弱点があることも理解しておこなっているのも事実です。

実は、すでに予算があって長期投資を前提としている方にとっては、一括投資のほうが有利な場合があります。それは、投資期間の中で対象資産が上昇する期間のほうが長いときです。長期投資を想定している方なら当てはまる場合が多いでしょう。

例えば、『父が娘に伝える自由に生きるための30の投資の教え』(ジェイエル・コリンズ著)では、1970年から2013年までの43年間のうち33年間、つまり77%の期間は市場が上昇していることを示しています。元本があるのにドルコスト平均法で買い付けるのは、上がらない23%のほうに「賭けている」と言い換えることもできます。もし上がると思っているのなら、一括投資をしてしまったほうがリターンは上がるからです。

もしあなたが長期投資を想定していて、かつある程度の投資元本がある人なら、一括投資も検討するに値します。仮に2010年代の10年間を振り返ると、株価は世界的に上昇していました。10年間少しずつ積み立て投資をした人より、同じ金額を2010年の時点で一括投資して10年間放置していた人のほうが、リターンは高かったのです。2010年代はまさにそのような時代でした。

ただし、一括投資をするためには当然「一括で投資するだけの元本」がなければなりません。元本がない場合は、毎月の余剰資金を最速で投資に回していくという意味では、積み立て投資をするのが賢明な判断でしょう。

積み立て投資で使われる時間分散は、心理的なメリットが最も大きいと考えられます。結論から言えば、積み立て投資は「後悔を最小化する買い方」です。一括投資と積み立て投資は、絶対的にどちらが有利ということはありません。買いのタイミングを一点に定めないことは、購入価格への悪い執着をなくし、「自分のルールに従えた」という精神衛生上のメリットが一番大きいと言えるでしょう。

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