敗者のゲーム

今日からお金賢者になれる「1分書評」/ 日興フロッギー編集部

世の投資本のほとんどが、この本の影響を受けてきたはず。読み継がれてきたバイブルが、コロナ禍以降のデータとともに全面改訂されました。初心者にも中級者にも。

勝とうとしない「敗者のゲーム」で財産を築く方法

タイトルの意味するところは、アマチュアのテニスの試合です。プロの試合は自らの攻勢で得点する「勝者のゲーム」。一方で、アマの試合は相手の失点で得点する「敗者のゲーム」。現在の株式市場はまさに後者で、勝とうとして攻めに転じるより、自分のミスをいかに少なくするかが決め手だと言います。

これはつまり、何もしなくても市場平均についていけるインデックスファンドでの投資が最も理にかなうということ。本書は第8版で、初版発行は1980年代です。投資の大家が導き出した結論が40年近く変わらないことに、まずは注目されたし。

改訂版で手厳しくなったのは、債券投資の安全神話でしょうか。一般論として、年齢に比例して債券比率を高くせよ、と言われますが、現在80代である著者の資産に占める債券比率はゼロ!

「昨今の債券の金利は無いに等しい」「インフレでむしろマイナスになる」ーーゆえに、債券の長期投資はリスクの方が大きくなっているのだとか。

本書では、株や債券で100万ドルを35年間資産運用した場合のシミュレーションもしています。理論上では株式なら5500万ドル、債券なら1550万ドル(!)と、叫び声を上げたくなるほどの数字になりますが、税金、インフレ、運用手数料等々を考慮すると株式で180万ドル、債券は75.5万ドルに落ち着きます。であるなら、手数料が安いインデックスファンドは最強だなと実感するデータです。

もう一点、大事なアドバイスは、各々の人生設計(将来の収入や予想支出を全て出す)をもとに運用方針を一旦決めたなら、それを全うするーーということ。何があろうと焦って売り買いをしてはいけない、と口酸っぱく語ります。

市場に惑わされそうになったら、図書館に行き2008年リーマン・ショックでの大暴落やコロナ騒動時の新聞を読むこと! こちらも思わずニンマリしてしまう実践的な対処法でした。