株式市場で「脱炭素」関連株が買われています。QUICKが選定する関連株の平均上昇率は3.8%と、米長期金利の上昇一服観測から上昇した東証株価指数(TOPIX、2.0%高)を上回りました(10月13日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!
政府の政策強化、東証新市場開設など環境整備を後押し
足元で官民の脱炭素に向けた取り組み、報道、発表などの動きが活発です。10月3日、岸田文雄首相が東京GX(グリーントランスフォーメーション)ラウンドテーブルに出席し、「年内にGXに向けた分野別の投資戦略を策定する」と表明しました。また、11日には、東京証券取引所が、CO2排出量を取引するカーボン・クレジット市場を開設。再生可能エネルギーの活用などのプロジェクトで生まれたCO2排出量の削減分を国が認証する「Jークレジット」を売買の対象としています。企業の間でも、報道や発表が相次ぎ、関連銘柄が注目を集めました。
航空機器の開発に強み【川崎重工業】
上昇率首位の「 川崎重工業 」は、持続可能な社会の実現に向けた長期ビジョンである「Kawasaki地球環境ビジョン2050」で掲げる「CO2 FREE(脱炭素社会の実現)」を念頭に自社工場やサプライチェーン(供給網)も含めた対策に取り組んでいます。10月9日、電動航空機器の開発補助で経産省が水素燃料電池システムなどに306億円を補助すると報じられ、航空機器の開発に強みを持つ同社株が買われました。11日にはカーボンフロンティア機構と共同で、米ワイオミング州の石炭火力発電所に隣接する施設で、CO2分離回収技術の実証試験設備の竣工式を同9日に実施したと発表しています。
木造集合住宅に太陽光発電を標準導入【東京電力ホールディングス】
上昇率2位の「 東京電力ホールディングス 」はカーボンニュートラル(温暖化ガス排出実質ゼロ)目標の達成に向けて、再生可能エネルギー発電の導入拡大などを進めています。10月13日には子会社の東京電力エナジーパートナーがスターツコーポレーションのグループ会社と共同で、首都圏で太陽光発電設備を標準導入した木造賃貸集合住宅の取り扱いを開始したと発表しました。初期費用と運用の手間がかからない機器利用サービスでカーボンニュートラル社会の実現に貢献するとしています。
「脱炭素」はすそ野が広く息の長い投資テーマ
その他、「 出光興産 」は10月12日に、トヨタ自動車と電気自動車(EV)向け次世代電池「全固体電池」で提携すると発表。「 住友商事 」は10月3日、プラスチックや燃料などの植物由来原料となるバイオエタノールの日本国内での用途拡大と安定供給に向けて韓国アルコールグループKC&A社と基本合意書を締結したと発表。「 四国電力 」は2030年度までに国内外で50万キロワットの新規開発を目指し、再生可能エネルギー電源の発掘・開発に取り組んでいます。この他、ランク外の銘柄では、資源開発国内最大手INPEXの上田隆之社長が、2030年までに再生可能エネルギーや水素・アンモニアなど脱炭素関連の様々な分野に1兆円程度を投じる方針であると、10月11日の報道インタビューで答えました。
脱炭素社会の実現に向けた取り組みは、官による環境整備などの後押し、民による研究開発や製品展開など収益化を目指す動きなど活発化しています。「脱炭素」はすそ野が広く(『変化する日本のエネルギー政策 「原子力発電」関連株が上昇』『脱炭素エネルギーとして投資本格化 「水素」関連株が上昇』)息の長い投資テーマです。報道や発表などにアンテナを広げ、動向をチェックし投資対象を探っていきましょう。