水素の利活用促進へ 日本企業にビジネスチャンス

ニュースの裏事情/ 日本証券新聞

テレビや新聞で取り上げられたニュースの裏側を解説する本連載「ニュースの裏事情」。今回は「水素の利活用促進」に関するニュースの裏側について、ご紹介します。

水素閣僚会議で水素の利用量目標を引き上げ

脱炭素社会の実現に向け、水素利活用への取り組みが加速しそうです。9月25日、経済産業省とNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が、都内で第6回水素閣僚会議を開催しました。

会議では水素利用量の目標を引き上げたほか、水素活用による新産業の創出や新規雇用の創出などをまとめた議長サマリーが出されました。また、2030年までに1億5000万トンの水素需要を生み出し、そのうち9000万トンを再生可能由来と低炭素水素でまかなう目標を追加。普及に向け製造コストの低減、水素供給のためのインフラ整備に向けた施策、世界銀行などと連携した新興国への金融支援などに取り組みます。さらに、水素製造などの新産業の創出などで2030年までに80万人規模の新規雇用を生み出し、世界の持続的な成長に貢献するとしています。

日本の場合、政府が今年6月に水素基本戦略を策定しており、発電や燃料電池、熱・原料利用で2030年に300万トン(年間)、2040年1200万トン、2050年2000万トンの導入目標を掲げています。

多くの日本企業が様々な分野で事業展開

水素の活用では、多くの日本企業が様々な分野で事業を展開しています。液化水素の販売では、「 岩谷産業 」が国内トップに位置し、水素サプライチェーンの構築によって、水素事業の拡大を目指しています。同社の水素ビジョンでは、2022年度実績で1.4万トン(金額ベースでは450億円)の販売を2027年度3万トン(同920億円)、2030年度に30万トン(同2000億円)を目指しています。また、「 ENEOSHD 」は長期ビジョンの中で水素の供給量目標について2030年に25万トン、2040~2050年に100~400万トンで国内シェア50%としています。

このほか、水電解装置では「 旭化成 」「 高砂熱学工業 」。電解質膜では「 東レ 」。水素を利用した発電装置関連では「 三菱重工業 」。水素の海上輸送では、LNG(液化天然ガス)で培った極低温技術の活用が期待できる「 川崎重工 」など様々な企業が事業を展開しています。水素の利活用の促進は、日本企業にも更なるビジネスチャンスとなりそうです。

(出典:日本証券新聞)