株式市場で「石油開発・精製」関連株が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は3.8%と、米長期金利の上昇を受けて大幅に下落した東証株価指数(TOPIX、2.3%安)に対して逆行高となりました(10月20日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!
原油先物価格、根強い「1バレル100ドル」の声
石油開発・精製関連株が上昇している背景には、中東情勢の緊迫に伴い原油価格が上昇するとの観測があります。中東ではパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルとの衝突が続いています。国際的な指標油種である米ニューヨーク市場のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)先物は10月初旬に1バレル80ドル台前半でしたが、中東の混迷が周辺産油国に広がれば原油の生産や輸送に支障が出るとの警戒感から10月中旬に一時90ドル台に乗せました。100ドル台への上昇を予想する声も根強く、原油価格上昇が収益押し上げにつながる銘柄が物色されました。
ブレント原油の想定価格80ドル、収益上振れ観測【INPEX】
株価上昇率首位の「 INPEX 」は世界中で原油や天然ガスの探鉱・開発・生産を手掛ける資源開発の国内最大手です。同社が経営計画上の指標とする北海ブレント原油先物価格は足元で90ドル台前後で推移しており、会社側の2023年12月期の業績予想の前提である80ドルを上回っています。想定価格を上回る推移が続けば生産した原油がより高い値段で売れることになり、収益を押し上げるとの見方が買いを誘っているようです。
24年3月期、WTI原油価格は75.6ドルを想定【石油資源開発】
上昇率2位の「 石油資源開発 」は国内外で原油や天然ガスの探鉱・開発・生産を手掛けています。2024年3月期の業績予想の前提となるWTI原油先物の価格は75.6ドルです。こちらも実際の市況が想定価格を上回る推移となっており、業績上振れへの期待が広がっているようです。
長期的に世界はカーボンニュートラルへ、関連事業の貢献にも注目
このほか「 富士石油 」は2024年3月期の原油価格の会社予想を80ドルとしており、在庫評価益が32億円の営業増益要因になると見込んでいます。「 ENEOSホールディングス 」は24年3月期のドバイ原油の会社予想を80ドルとしており、想定を5ドル上回ると在庫評価益なども含め460億円の営業増益要因になるとしています。「 出光興産 」は24年3月期の原油価格の前提を80ドルとしており、想定を10ドル上回ると在庫の影響を除き90億円、在庫で370億円の収支押し上げになるとしています。これらの銘柄も買われています。
2022年初頭のコロナ感染拡大下でも、予想以上の需要を背景に原油価格が上昇し関連銘柄が買われました(『原油価格は7年ぶり高値! 「鉱業」関連株が上昇』)。今回も同様の展開となっています。一方、いずれにしても、世界がカーボンニュートラル(温暖化ガス排出実質ゼロ)に向かって進む中で長期的には原油の需要は減退するとの観測もあります。そういった中、各社とも脱炭素社会の実現に向け再生可能エネルギーの導入や水素事業の拡大、アンモニア燃料の導入、カーボンクレジットの活用などを掲げています。短期的な原油価格の変動による収益動向に目を配りつつ、中長期的には、エネルギーの安定供給を続けつつ、脱炭素社会の実現に着実に貢献できるかどうかなどもポイントとなりそうです。