金利上昇に反応 「地方銀行」関連株が上昇

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株式市場で「地方銀行」関連株が買われています。QUICKが選定する関連株の平均上昇率は7.1%と、米金融引き締め長期化懸念の後退などから大幅高となった東証株価指数(TOPIX、4.4%上昇)を大きく上回りました(11月2日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!

日銀が金利操作を再修正、長期金利の1%超えを容認

「地方銀行」関連株が買われた背景は、国内長期金利の上昇です。10月31日付の日本経済新聞朝刊で、日本銀行が同日まで開く金融政策決定会合で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の再修正を議論するとし、「現在1%としている長期金利の事実上の上限を柔軟にし、一定程度1%を超える金利上昇を容認する案が有力」と報じました。

実際、日銀は31日の会合で長短金利操作の運用について、7月に「±0.5%程度をめど」としていた長期金利の水準を「上限は1.0%をめどとする」に改定。日銀の決定を受け、長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りは11月1日に一時0.970%と、2013年5月以来ほぼ10年ぶりの水準に上昇しました。

日銀の金融政策をきっかけとしては、今年の1月にも銀行株が大きく上昇しました(『金融政策に正常化の思惑 「大手銀行」関連株が上昇』)。その時の上昇は大手銀行株が中心でしたが、今回上昇が目立ったのは地方銀行です。地方銀行は、メガバンクに比べ金利ビジネスへの依存度が相対的に高いため、金利上昇が収益押し上げにつながりやすいとの見方から物色が膨らみました。時価総額が小さく株価が上昇しやすいといった面もあったようです。

24年3月期業績予想を上方修正【池田泉州ホールディングス】

上昇率首位は大阪府の地銀グループとして旧池田銀行と旧泉州銀行が経営統合して2009年に発足した「 池田泉州ホールディングス 」です。10月31日に2023年7~9月期の与信関連費用が従来予想を下回る見込みとなったとして、2024年3月期の連結経常利益や純利益を従来予想から上方修正しました。 

23年4~9月期の純利益が従来予想を大きく上回ったと発表【ほくほくフィナンシャルグループ】

上昇率2位は北陸銀行と北海道銀行を傘下に持つ金融持ち株会社の「 ほくほくフィナンシャルグループ 」でした。10月30日に経費や与信費用、税金費用が当初予想を下回る見込みとなったことなどから、2023年4~9月期の連結純利益が従来予想の2.3倍になったもようだと発表しました。 

このほか、西日本シティ銀行を中核とする九州の金融持ち株会社、「 西日本フィナンシャルホールディングス 」。徳島銀行(現徳島大正銀行)と香川銀行が2010年に銀行として四国初の越境統合で発足した「 トモニホールディングス 」。山梨県唯一の地銀として東京にも展開している「 山梨中央銀行 」。これらの銘柄も買われています。

金利上昇の恩恵だけではない 変化余地の大きい地方銀行

日銀の植田和男総裁は11月6日に名古屋市で開いた金融経済懇談会の講演で、2%の物価目標について達成の確度が「少しずつ高まってきている」との認識を示しました。反面、賃金と物価の好循環が実現するかについては「現時点では十分な確度をもって見通せる状況には至っていない」と慎重な見方も提示。金利操作の撤廃やマイナス金利政策の解除などには、まだなお越えるべきハードルがありそうです

一方、地方銀行に関しては、金利操作再修正による利ざや改善期待から株価が上昇しましたが、国内では地方を中心にオーバーバンク状態であることに変わりはありません。地方銀行が日銀の金融政策の正常化を待たずに収益を拡大していくシナリオとして、システム統合などを起点にした再編が挙げられます(『システム統合に具体化の動き 「地方銀行」関連株が上昇』)。再編が収益体質を筋肉質に変え、稼ぐ力を高めていくことが期待できます。地域内や地域間での協力の深化、強化など「攻めの再編」が進めば、地方銀行ビジネスにも成長余地が生まれる可能性もあります。再編がコスト削減にとどまらず、収益機会の追及策として広がっていくと、更に大きな投資テーマとなりそうです。