EC市場拡大! 世界の段ボール需要を取り込む レンゴー

ここが狙い目! 日興ストラテジー・セレクション/ 日興フロッギー編集部岡田 丈

今の社会動向や投資環境をもとにホットな銘柄を選定している「日興ストラテジー・セレクション」。11月号の採用銘柄は国内段ボールメーカー最大手の「レンゴー」です! 早速、レンゴーの投資ポイントをチェックして、これからの銘柄選びの参考にしてみましょう。

パッケージングで物流と暮らしの豊かさを支える「レンゴー」

引越しや宅配物を送る時、モノの持ち運びや保管など、日常生活において必要不可欠とも言える段ボール。実は日本で初めて段ボールを世に送り出したのが、今回仲間入りした「 レンゴー 」です。

あらゆる産業の包装ニーズに応える

レンゴーは、「パッケージングで、暮らしを支え、未来をつくる」という理念のもと、「製紙」から「段ボール」までの一貫生産体制に加え、食品や日用品パッケージ等に用いられる「紙器」や「軟包装」、農業分野・工業原料といった幅広い産業を支える「重包装」、「海外」まで、6つのコア事業を中心に活動しています。

なかでも段ボール事業は、創業者である井上貞治郎氏が1909年に日本で初めて事業化に着手し 、段のついたボール紙なので「段ボール」と命名した、というパイオニア的存在です。今では国内段ボールメーカー最大手です。さらに、段ボール原紙等を含む板紙事業では国内2位を誇ります。

そんな同社に追い風が吹いています。世界では、主にパッケージングなどに使われる、板紙の需要が年々増しています。また、世界の紙・板紙消費量の約3割を占める中国では、段ボール箱の原料となる段ボール原紙の需要が増加。段ボール原紙の消費量は、10年前と比べて約8%ptウエイトが高まっています。

EC市場の活性化が段ボール需要を下支え

段ボール需要を下支えする要因には、世界のEC市場(BtoC※)の活性化も挙げられます。オンラインを通して買い物した際に、段ボールに梱包されて届くことからも、その必要性が想像できるでしょう。

※企業が消費者を対象に行うビジネス形態のこと

国内のEC市場は、コロナ感染拡大が始まった2020年に巣ごもり需要で大きく拡大し、その後も右肩上がりに伸びています。この傾向は世界でも同様で、デジタルマーケティングリサーチ専門会社のeMarketerによると、世界のBtoC-EC市場規模は、2022年に前年比約10%増と推計されており、2023年以降も2026年まで年平均で9%程度の成長が見込まれています(2022年7月時点)

増加傾向にある段ボール需要を取り込むべく、同社は国内外で機動的なM&Aにも積極的です。海外においては、2016年に重量物段ボールで世界ナンバーワンの実績を誇る香港のトライウォール社を子会社化したのを皮切りに、2019年にドイツ重量物包装メーカーのトライコーおよびグッドマン、2022年にはドイツ重量物包装資材メーカーのティム・パッケージング・システムズ(TPS)と、続々とM&Aを進めています。この結果、同社の海外グループ企業は191社、198工場(2023年3月31日時点)へと増加しました。海外事業営業利益は2017年3月期の11億円から2023年3月期には124億円(単純合算ベース)まで拡大しています。

2025年頃までに売上高1兆円を目指す

同社は創業115周年を迎える2025年3月期を最終年度とする中期ビジョン「Vision115」に取り組んでいます。具体的な数値目標は公表されていませんが、過去の決算説明会や会社資料などによれば、売上高1兆円超をひとつの目標としている様子です

ゴールまで2年を切った2024年3月期第1四半期(4~6月期)では、製品価格の改定および連結子会社の増加が寄与し、売上高は前年同期比11.8%増となる2238億円、営業利益は同75.7%増の約136億円と好調な滑り出しです。

2022年3月期から2023年3月期は、円安や原燃料費の高騰によって収益が圧迫されました。しかし、複数回にわたって製品価格の値上げを行っており、直近の値上げもおおむね浸透したと見られます。製品の需要は堅調なので、当面は値下げ圧力が強まる可能性は低いでしょう。2024年3月期以降の業績は改善に向かい、中長期的な成長の第一歩になると予想します。

株価は上昇基調ながらも、TOPIXや同業他社対比では割安感があります。

世界でベストワンの総合包装企業集団を目指す

「製紙」「段ボール」「紙器」「軟包装」「重包装」「海外」の6つの事業をコアとする、総合包装企業の「レンゴー」。国内段ボールメーカーのパイオニアにして最大手、段ボール原紙等を含む板紙では国内2位を誇ります。EC市場活性化などを背景に、世界の板紙、段ボールの需要は増加傾向で、同社への追い風となっています。国内外で機動的にM&Aに取り組みながら世界中で活躍する同社から目が離せませんね。