実用化進展に向けアクセル 「自動運転」関連株が上昇

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株式市場で「自動運転」関連株が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は2.4%と、米長期金利の上昇一服を受けて上昇した東証株価指数(TOPIX、0.6%高)を上回りました(11月10日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します! 

政府・企業の間で自動運転に向けた動き広がる

自動運転関連株が上昇した背景は、官民による自動運転活用に向けた動きの広がりです。11月6日、政府の規制改革推進会議は、一般ドライバーが自家用車を使い有料で顧客を送迎する「ライドシェア」を巡る議論を開始。その中で、河野太郎デジタル相は自動運転の導入も含め検討する意向を示しました。翌7日、NTTが米企業の自動運転システムの日本国内独占販売権獲得を発表。米メイ・モビリティーに出資し、国内向けに無人バスやタクシーの自動運転サービスを開発、安心・安全な自動運転サービスを継続的に供給する体制を整える方針です。自動運転技術の活用拡大への期待から関連株が物色されました。

高度運転支援技術で事故を未然に防止【マツダ】

上昇率首位の「 マツダ 」は、高度運転支援技術のコンセプト「MAZDA CO-PILOT CONCEPT」を採用。ドライバーの不測の事態に対応するもので、例えば、ドライバーの眠気や疾患などによる事故リスクの低減や、意識が喪失した場合、自動で外部に緊急連絡するとともに、最適な場所に自動運転で移動することで、事故発生を未然に防止することを目指しています。11月7日、北米市場を中心とした出荷台数の増加や円安などを踏まえ、2024年3月期の連結業績予想を大幅に上方修正したことも好感されました。

全国で自動走行プロジェクトを推進【アイサンテクノロジー】

上昇率2位の「 アイサンテクノロジー 」は自動運転システムの販売などを手掛けています。11月1日、自動運転関連ソフトウェアの開発・サービス提供を行っているティアフォーが開発した自動運転小型EV(電気自動車)バス「ティアフォーMinibus」を導入し、全国各地域の社会実装向けの自動走行プロジェクトに投入を開始すると発表しました。

このほか、「 セック 」は車両自動走行ロボットなどの開発受託を行っており、2022年には、同社社員のチームが自動車技術会主催の自動運転AI(人工知能)チャレンジ2022のアドバンストコースで、優秀賞を受賞。「 ルネサスエレクトロニクス 」は、11月7日に、次世代車向けの演算用半導体を開発すると発表。先進運転支援システム(ADAS)に求められる高いAI処理能力への対応も目指します。「 ソフトバンク 」は傘下のBOLDLYが自動運転車の導入や運用に関する調査などを手掛け、茨城県境町や羽田イノベーションシティなどで実証実験の自動運転バスを毎日運航しています。これらの銘柄も買われています。

課題解決に向け市場拡大 EVと並び自動車関連の大テーマ

「ライドシェア」の背景にあるタクシー不足に加え、2024年からトラックドライバーの労働時間に上限が課せられる「物流の2024年問題」(『2024年問題が物流業界を変える「宅配便」関連株が上昇』)も間近に迫っています。課題解決手段の1つとして自動運転の活用が求められます。民間調査によるとADASや自動運転といった運転支援機能搭載車の世界の生産台数は、2045年に合計で1億1843万台と22年の2.1倍に増える見通しです。

自動車に関しては、「自動運転」とともに、「EV(電気自動車)」(『EV販売の勢い続く 需要増期待で「EV部品」関連株が上昇』『EV市場勢力図の塗り替えも 「全固体電池」関連株が上昇』)も大きな投資テーマです。いずれも、自動車メーカーやソフトウエア開発会社、運営会社など多くの企業が関わっているため、経済へのインパクト、株式市場での話題性は大きく、引き続き要注目です。