株式市場で「超純水」関連株が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は4.7%と、日米の長期金利の低下を追い風に上昇した東証株価指数(TOPIX、2.3%)を上回りました(11月17日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!
半導体製造に欠かせない「超純水」
足元で半導体市況に回復期待が広がっています。背景には、米国などの輸出規制を受けた中国における半導体の国産化や、規制対象外となっている自動車向けパワー半導体、ロジック半導体やメモリーなどへの活発な投資があるようです。
半導体を巡っては、昨年8月に米国で生産・開発を支援する「半導体補助金法」が成立。今年7月にはEU(欧州連合)が域内への誘致と生産拡大を目指す「欧州半導体法」を採択しています。いずれも、生成AIや車載向けなどに拡大する半導体需要や、中国のサプライチェーン(供給網)リスクへの対応を念頭としたもので、半導体への投資を後押しすると考えられます。
そういったなか、半導体製造工程で使われる「超純水」を扱う企業が、堅調な事業動向と好調な決算を発表しました。「超純水」とは水に溶け込んださまざまな物質を極限まで取り除いた限りなくH2Oに近い、つまり純度が100%に近い水といわれています。半導体の製造工程で付着した余分な化学物質などを洗い流すのに使われ、半導体や液晶の製造工程では必要不可欠なものです。半導体市況の回復期待や関連企業の業績動向を受け、超純水の需要が拡大するとの期待から関連銘柄が物色されました。
メンテナンスや消耗品の受注堅調【野村マイクロ・サイエンス】
上昇率首位の「 野村マイクロ・サイエンス 」は最高純度の水を提供する超純水製造装置専業メーカーです。11月14日に発表した2023年4〜9月期連結決算は前年同期に比べて大幅な増収増益になりました。同社は、主力の半導体関連企業の投資は引き続き旺盛であること、半導体関連企業を中心にメンテナンスや消耗品の受注が堅調だったと説明しました。
24年3月期の関連事業の利益見通しを上方修正【東レ】
上昇率2位の「 東レ 」は超純水の製造で利用される逆浸透(RO)膜を手掛けています。11月8日に発表した2023年4〜9月期連結決算ではRO膜の2大市場である米中向け出荷などが堅調に推移しているとして、水処理事業を含む「環境・エンジニアリング」部門の2024年3月期の利益見通しを上方修正しました。
このほか、電子部品などを手掛ける「 日東電工 」は、傘下の米ハイドロノーティクス社が半導体製造など電子産業向け超純水製造も用途とするRO膜事業を展開。水処理大手の「 オルガノ 」は11月7日の2023年4〜9月期決算説明資料で、24年3月期の受注について「国内外で半導体関連の投資が高い水準で推移する見通し」と説明。水処理大手の「 栗田工業 」は欧米で半導体産業を優遇する法案が相次いで成立したのを受け、グループを挙げて水処理装置の需要拡大に対応。これらの銘柄も買われています。
超純水市場は28年まで年平均9%成長との予想も
半導体に対する需要は、パソコンやスマートフォン向けで減速が続く一方、データセンター、生成AI、車載向けは拡大する見通しです。いずれにしても、半導体製造で欠かせない洗浄を担う超純水の市場拡大は続く見通しで、民間調査によると2028年まで年平均で9%の成長が期待できるとの試算もあります。主要国・地域で半導体の国産化や連携を進める動きが広がっていることも追い風です。需要を捉える技術力や、ニーズが一様ではない国や地域への展開力などが、銘柄を見極めるポイントとなりそうです。