「単純平均」と「加重平均」って何が違うの?

あなたの知らない「インデックスの世界」/ おせちーず須山 奈津希

株価指数の多くは、多くの銘柄の株価を「平均」して求められます。しかしながら、その「平均」の出し方には種類があるのをご存じでしょうか。

日経平均株価は「単純平均」で算出される株価指数です。対比される言葉に「加重平均」があります。今回テーマにするのは、この2つの違いについてです。
「日経平均株価ってどうやって計算している?」を読む

「単純平均」と「加重平均」の違い

「単純平均」とは、いわゆる算術平均のことです。すべての値を足してデータの数で割ります。対する「加重平均」は「重さを考慮に加えた平均」と言えます。重さを考慮に加える、というのは「重いものは重く、軽いものは軽く」扱って平均するという意味です。

これでは少しわかりにくいので、2種類の平均を学校の成績に例えてみます。Aさんの5科目の成績と1週間の授業回数が以下の通りだったとします。成績は1〜5の5段階評価で絶対値が大きいほど評価が高いとします。

Aさんの成績を総合的にとらえたいと担任の先生が考えたとしましょう。そのような場合に「平均」はよく用いられます。

Aさんの5科目の成績の単純平均は、5科目の成績の合計を科目数で割って求めます。

Aさんが通う学校は、英語に力を入れている学校です。ですから、英語の授業回数がほかの科目より多いです。であれば、授業数が多い科目の成績が重視されるべきと考えることも自然です。そのような場合、「週の授業数」を加味した平均を算出して判断することもできます。これが「加重平均」です。

週の授業数の合計は15回です。英語は週5回ですから、英語の成績に5/15を掛けます。15回の授業のうち5回という重みを加味するということです。これをすべての科目で算出して足し合わせたものが、Aさんの成績の「加重平均」です。

になります。授業数が多い英語が5段階中の4の評価であることが、単純平均と比べて重みを持つことになります。

「加重平均」は実は意識せずに使われている

「加重平均」は株式投資をする際に、知らず知らずのうちに使われています。株式の「平均取得単価」は、先ほど説明した「加重平均」値なのです。

例えばトヨタ自動車(7203)株を、以下のように2回に分けて買ったとします。

この結果、トヨタ自動車株の平均取得単価は以下の式で求められます。

2回目の取引は1回目の取引より低い株価で1回目より多くの株数を買ったので、1回目と2回目の取引の株価を単純に2で割った値である2,622.25円より、平均取得単価は低くなりました。先ほど示した成績の単純平均と加重平均の違いと理屈は同じです。

TOPIXは「時価総額加重平均」で計算されている

日経平均株価と並んでよく知られた日本株株価指数に「東証株価指数」があります。「TOPIX」とも呼ばれます。日経平均株価とTOPIXの大きな違いは、構成銘柄数と算出方法です。構成銘柄数については前回示した通りです。TOPIXの構成銘柄は非常に多いです。

算出方法は、日経平均株価が株価の「単純平均」であるのに対し、TOPIXは「時価総額加重平均」方式です。

時価総額とは、株価に株数を掛けて算出した値です。

TOPIXは、昭和43年1月4日における東証一部全体の時価総額を「基準時価総額」として、現在のTOPIX構成銘柄の時価総額がどれくらい増減しているのかを示す値です。

では具体的にどのように計算されているか、3銘柄で構成されると仮定して計算してみましょう。基準時価総額は10億円とします。

ある日の3銘柄の株価と上場株式数が以下の通りだったとします。

この日のTOPIXは時価総額の合計が44億円で、基準時価総額が10億円ですから、

翌営業日に3銘柄の株価が以下のように変化すると、時価総額の合計は41.3億円になります。

この日のTOPIXは以下のように計算されます。

Cは株価は一番高いですが、株数が一番少ないです。一方、Aは株価は一番小さいですが、株数が一番多いです。この違いが時価総額の違いを生みます。したがって、Cの株価が上昇しても、Aの株価が下がったことで3銘柄を合計した時価総額が減少したため、TOPIXは下落しました。

「時価総額加重平均」は文字通り「時価総額」が大きい銘柄の重みが大きくなります。TOPIXが440ポイントの日の3銘柄をもう一度振り返って「単純平均」との違いを確認しましょう。

除数=銘柄数と仮定すると、「単純平均」は3銘柄の株価の合計÷3ですから1,500円です。

単純平均で3銘柄中で一番重みを持つのは株価が一番高いCです。

一方、「時価総額加重平均」で一番重みを持つのは株価は一番低いものの、株式数が一番多いAです。Aの時価総額が3銘柄の中で非常に大きいからです。「時価総額加重平均」では時価総額が大きい銘柄が株価指数の値をより大きく左右することがわかります。

日本株の銘柄に例えるならば、Aはプライム市場で一番時価総額が大きいトヨタ自動車(7203)で、Cは1株35,000円程度のファーストリテイリング(9983)といったところでしょうか。実際TOPIXで一番重みを持つのはトヨタ自動車で、日経平均株価で一番重みを持つのはファーストリテイリングです。

なお、重みのことを「ウエイト」と呼ぶことが多いです。よく使われる言葉ですので、覚えておくといいでしょう。

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