所得減税の緊急まとめ あなたの4万円はいつ戻ってくる⁉

フロッギー版 お金で得するオタク会計士チャンネル/ 山田真哉

みなさんこんにちは! 公認会計士兼税理士の山田真哉です。
先日、「所得減税」の閣議決定がされて、岸田首相が記者会見を行いました。これでほぼ決まりとなったわけですが、かなり難解です。まだ詳細が決まっているわけではありませんが、現時点で明らかになっている情報について、まとめて解説したいと思います。

お送りする内容は、以下の通りです。

・所得減税の全体イメージ
・会社員の場合
・個人事業主の場合
・ふるさと納税は? 住宅ローン控除は?
・その他の注目点等

所得減税の全体イメージ

はじめに、所得減税の全体的なイメージについて、現時点で分かっていることを解説します。

まずは住民税非課税世帯への対応です。1500万世帯ぐらいいるこちらの世帯には、1世帯あたり3万円の給付金がすでに払われています。これにプラスして7万円の給付金が年内に支払われる予定です。重点支援給付金と呼ばれ、手続きを行うのは地方自治体になります。

そして、住民税均等割のみ課税という世帯があります。この方々にも住民税非課税世帯と同じ程度払ったほうが良いだろう、ということで、お住まいの市区町村から10万円が支払われる予定です。

これらは給付金と呼ばれるものです。

一方、減税方式がとられるのが、会社員や個人事業主などの課税世帯です。一人当たり所得税3万円、住民税1万円、計4万円が減税になります。ただ年間の所得税・住民税が4万円未満という方も900万人ぐらいいるそうで、その場合は、減税しても足りない分は給付の形になる模様です。というわけで、この課税世帯について詳しく解説していきます。

会社員の場合~扶養家族がいないケース

課税世帯の定額減税は、2024年6月に予定されています。例えば東京都にお住まいの40代会社員で扶養家族がいないケースですと、4万円の減税が行われます。

では、1998年の定額減税制度を参考に今回のケースを見ていきます。この方の普段の月給が30万円で、社会保険料控除が4万6980円、所得税が6640円、住民税1万2052円、手取りが23万4328円だったと仮定しましょう。

2024年6月にどうなるかといいますと、所得税は6640円が引かれて0円、住民税は減税分1万円が引かれて2052円になります。結果、手取りが25万968円になるので、減税によって1万6640円手取りが増えることになります。

月給30万円くらいでは4万円の減税がすぐに全額行われるわけではなく、6月の時点での減税額は1万6000円ほどになります。

6月の時点で全額4万円が引かれるためには、6月にそれなりの額の賞与が発生する、あるいは、かなり月収が高くないと実現できないんですね。世の会社員全てが6月に賞与があるわけではないため、一定数の方はこのように引かれるはずの所得税の減税額が残った状態になります。

では、残った分をどうするのか。これについては、まだ詳しい発表は出てません。ただ過去のケースを参考にすると、6月で引けなかった分を、7月~10月で引いてトータル3万円にするのではないかと思われます。ということで、結構ダラダラとした感じになります。本来なら一気に4万円引かれたほうが経済効果はあるのでしょうが、減税方式をとっていると、どうしてもこのようなことが起きてしまうんです。

ただ、扶養家族がいない場合はまだこの程度で済む、と言えます。次に、同じパターンで扶養家族がいた場合にどうなるか解説します。

会社員の場合~扶養家族が3人いるケース

東京都にお住まいの40代会社員で扶養が3人いるケースの場合、ひとり4万円の減税となるわけですから、4人家族なら合計16万円の減税が行われます

月給30万円の場合だと、扶養控除などがある関係で、所得税も住民税も扶養なしの場合よりそもそも少なかったりします。この例の場合、所得税1790円、住民税3802円で手取りが24万7428円です。それが今回の定額減税が行われると、所得税0円、住民税0円で、手取りは25万3020円となります。結果、6月分の給料は5592円増えますが、少ないっ! と思ってしまいます……

2024年6月に減税で手取りが16万円増えると思ったのに、現在想定されてるやり方では、5500円くらいしか増えないわけです。所得税の減税分は残り11万8000円。住民税では3万6000円ほど残ってしまうことになってしまいます。

それでも、住民税は毎月3802円ずつ引けば、10ヵ月ほどで約3万6000円分の減税が完了すると思います。問題は所得税です。残り11万円を、7月以降も毎月1790円を引いたとしても、66ヵ月かかります。最終的に2030年1月までかかることになります。

さすがにこれでは長すぎるので、所得税で引ききれなかった分は住民税で引くことが検討されてるようです。そして、2024年の住民税でも引ききれなければ、さらに2025年の住民税で引くことになりそうです。

というわけで、今回のケースでは毎月1790円を所得税から引き、さらに2025年の住民税から9万8520円を引ければ、何とか合計12万円になります。ただ2025年中の住民税から引くのが難しければ、結果的に引けなかった分は給付に回るのかもしれません。

じゃあ、最初から16万円給付にすればいいじゃん! と、普通に思ってしまいます。このあたりが実際どうなるのか、これから詳細が詰められる予定です。しかし、この所得税や住民税の処理をする役所や会社の経理部、給与計算する部門はそうとう面倒になると思います。少なくとも給与計算をチェックしているわれわれ税理士からすると、頭が痛いなぁと思ってます。

個人事業主・フリーランスは納税額が15万円で変わってくる

つづきまして、個人事業主の定額減税について解説します。令和5年分は2024年3月に確定申告するのですが、ここでの納税額が15万円以上か15万円未満かで話が変わってきます。

令和5年度の確定申告で納税額が15万円以上の場合、源泉徴収されていない小売りや飲食、卸売りなどBtoCの業種が多く当てはまると思います。これらの方の所得税の支払いは、2024年7月と11月の予定納税(※)です。この予定納税額から3万円が減額されると思われます。

※予定納税とは、前年度に一定の納税額があった場合に、その年の税金の一部をあらかじめ前払いしておく制度のこと

2024年の住民税は6月から納付が始まりますから、そこから1万円が減額されます。今回、夏のボーナスに合わせて6月からスタート! という話ですが、実際はおそらく、住民税が6月に切り替わるので、タイミングがちょうどいい、というのが理由かと思われます。

こちらのパターンはまあいいとして、問題は、令和5年分の確定申告の納税が15万円未満だった方です。特に多いのは、そもそも源泉徴収で所得税を払っている業種ーーコンサル、士業、ライター、デザイナー、芸能関係などーーです。

この場合は、予定納税がないので、減税をするとしたら、再来年、2025年3月の確定申告の還付金に3万円の上乗せがあるのかなと思います。これでは、だいぶ先の話になってしまい、そうとう不公平です。住民税のほうは、おそらく2024年6月からの納付の時に1万円減額されると思われます。実際どうなるかはこれからの発表を待ちたいと思います。

ふるさと納税は? 住宅ローン控除は?

最後に、現在出てきている疑問点と今後の注目点についてお話します。ただし、先ほどから何度も繰り返していますが、詳細はこれから決まる予定です。現時点では減税することは決まったものの、細かいことはこれから考える段階なので、今法案を作っている人たちは、てんやわんやの状態かと思われます。

僕へ寄せられる質問でとても多い、ふるさと納税への影響ですが、今の税法の仕組みから考えるとおそらく影響は出ないと僕は思っています。定額減税があるからといって、ふるさと納税の枠が減ることは、おそらくないと思います。ただし、詳細は待たないと分かりません。

住宅ローン控除をすでに受けている方、もしくは今年から受ける方は、かなり影響が出る可能性があります。住宅ローン控除を受けることで、すでに所得税がほとんど発生せず、住民税も減額されている方もいるでしょう。この場合は、減税ではなく、給付になる可能性もあります。ただ、減税しきれずに給付の場合、その給付がいつ行われるのか、というのは全く発表されていない状態です。ですので、給付が遅ければ、本当に不利だと思います。

そして、今後の注目点は、今回の減税に対して「所得制限が行われるかどうか」はまだ決定していないということです。つまり所得が2000万円を超える人には減税がないことになるかもしれません。また、所得制限が1500万円や1000万円になるかもしれません。

この辺りは世論を見つつ、決めていくと思います。もし仮に所得制限が設けられると、経理担当者はめちゃくちゃ大変になります。また、長期間減税が続く場合、いったいいつまで引くのか。残った分が給付になるとしたら、どのタイミングで給付に切り替わるのか。まだよくわからない状態です。

さらに長期間で引いていくとした場合に、減税している途中で転職があると、その情報がきちんと引き継がれるのか。普段のフォーマットとは異なるので、税理士としては実務上とても気になるところではあります。

というわけで、2023年11月2日時点の情報でした。他にも気になることがたくさん出てくると思います。今後の詳しい情報につきましては、また解説していきたいと思います。

今後ともごひいきに。ば~い、ば~い!