オリックス【8591】オリックスってどんな会社? 下期にかけて好業績が期待できる理由

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カエル先生の一言

音声メディア「Voicy」で、「10分で決算が分かるラジオ」を毎日配信中の「妄想する決算さん」が、日経225・グロースコア・スタンダードコアの企業を1社ずつ取り上げる人気連載を日興フロッギー版としてスタート! 読むだけで、知らず知らずのうちに主要な株価指数に採用されている企業についてわかるようになる決算解説。日興フロッギー版ならサクっと5分でチェックできます!

今回取り上げるのはオリックス株式会社です。

統合報告書2023
オリックス株式会社2023年3月期決算説明会
オリックス株式会社2024年3月期第2四半期決算説明会
オリックスグループの強みと今後の成長戦略(2023年3月16日)
2024年3月期第2四半期決算短信〔米国基準〕(連結)

※以下の解説で使用したスライド及びデータは、オリックス株式会社の「統合報告書2023」「2023年3月期決算説明会」「2024年3月期第2四半期決算説明会」「オリックスグループの強みと今後の成長戦略(2023年3月16日)」「2024年3月期第2四半期決算短信〔米国基準〕(連結)」より引用しています。

事業内容と業績のポイント

オリックスは、プロ野球チームの運営を行っている事でよく知られている企業ですね。祖業はリース業で、「リース」を日本に持ち込んだことで成長してきた企業です。機械設備のリースから始めて、船舶、自動車、航空機などへとリースで取り扱うものを拡大させていく一方で、不動産業や融資、投資、保険、銀行などの金融事業、電力などのエネルギー事業、空港運営などへも参入して規模を拡大させてきました。

純利益の推移を見ていくと、初年度を除き58年間連続黒字を計上しており、リーマン・ショックでの悪化はありつつも長期的に成長を続けています(2023年3月期決算説明会資料 p42参照)。現在では、各地で事業を展開する企業で、多角化による規模の拡大を続けています。2023年3月期末の主要な事業セグメントは10あり、内容は以下の通りです。

①法人営業・メンテナンスリース:金融・各種手数料ビジネスや自動車や各種機器のリースやレンタルなど
②不動産業:不動産開発・賃貸・管理など
③事業投資・コンセッション:プライベートエクイティ(未上場企業投資)、空港や水事業の運営
④環境エネルギー:再エネ、電力小売り、省エネサービスなど
⑤保険:生命保険
⑥銀行・クレジット:投資用不動産ローン。法人融資、カードローンなど
⑦輸送機器:航空機や船舶のリースなど
⑧ORIX USA:米州での金融、投資、アセットマネジメントなど
⑨ORIX Europe:グローバル株式・債券のアセットマネジメントなど
⑩アジア・豪州:アジア、豪州での金融、投資

2023年3月期時点でのそれぞれの事業セグメント利益の構成比率は以下の通りです(統合報告書2023 p3参照)。

①法人営業・メンテナンスリース:18%
②不動産業:13%
③事業投資・コンセッション:1%
④環境エネルギー:8%
⑤保険:16%
⑥銀行・クレジット:9%
⑦輸送機器:5%
⑧ORIX USA:12%
⑨ORIX Europe:10%
⑩アジア・豪州:9%

同社は、企業買収で多角化を進めてきました。最近大きな話題となったものに、通販化粧品大手DHCの買収があります。2023年1月に約3000億円で発行済み株式を取得しました(オリックスグループの強みと今後の成長戦略 p17参照)。そして単に買収するだけでなく、その企業をバリューアップして売却することでも大きな利益を上げる投資会社の側面もある企業と言えるでしょう

オリックス銀行は、長期で保有して成長が続いており、主力事業の1つになっています。バリューアップして売却する事業もあれば、成長が期待できる分野や銀行など自社の事業にとってメリットがある事業は、長期保有するという事ですね。

その他にも不動産や航空機、船舶の投資や売却も継続して行っていますし、日本産業パートナーズが主導する東芝案件への出資(LP投資 1000億円+メザニンローン 1000億円)、大阪IR構想をすすめる大阪IR株式会社にも出資したりと、多様な分野で積極的な投資活動を行っています(2023年3月期決算説明会資料 p14参照)。結果として、毎期のように売却益が計上されており、その額は計数百億円〜2000億円弱ほどになります。

利益の変動はそういった、企業や事業、不動産や航空機、船舶などの売却益に左右される側面も大きくなっています。2022年3月期では、セグメント利益5361億円のうち1890億円が売却益で、2023年3月期には4062億円のうち835億円が売却益です。

一方で、継続事業からのベース利益は、コロナ禍で2021年3月期には悪化をみせていますが、それ以外の年は概ね3000億円強で推移しています(統合報告書2023 p24参照)。ベースの利益は比較的業績が安定している企業ですから、売却益に業績が左右されやすいことが分かると思います。

実際に、2023年3月期は減益となっていましたが、それは大きな売却益を計上した弥生会計を運営する弥生の反動が大きかったとしています。2023年3月期のセグメント利益は弥生を除くと384億円の増益です(統合報告書2023 P24)。

2024年3月期第2四半期決算説明会資料より

賃貸不動産に関しては、2023年3月期時点で含み益が679億円です。売却益による好影響が今後も期待できます。投資のパイプラインを見ても有望な案件のみで1.5兆円程度としており、今後も多額の投資を進めていこうとしている事が分かります(2023年3月期決算説明会資料 p13参照)。投資の成否が業績に大きな影響を与える企業ですから、こういった投資の成果に注目です。

また、⑧ORIX USA ⑨ORIX Europe ⑩アジア・豪州以外でも、環境エネルギー事業や輸送機器事業でも、海外展開しており、セグメント利益における海外比率は43.2%と海外比率が高い企業でもあります(2023年3月期決算説明会資料 p11参照)。

為替の影響も一定程度あり、1年間1円円安が続く場合、税引き前純利益に15億円のプラスの影響があるとしています(2023年3月期決算説明資料 p49参照)。さらに、海外事業の多くが金融事業ですから、円安になれば保有している金融資産の円換算の額は増加しますので、その好影響もあり、円安が続く現在はプラスの影響が期待されます。

2024年3月期第2四半期決算説明会資料より

旅館やホテルの運営も行っている不動産事業や、関西空港の運営なども行っていますから、インバウンドも業績に影響を与えます。海外の金融市場の動向の影響も受ける企業です。

2024年3月期第2四半期決算説明会資料より

また、多額の投資を行っており、資金調達は2023年9月末時点で総額8.3兆円と多額になっています。金利動向の影響も受けやすく、直近では金利上昇が続く中で、外貨の調達コストは5.06%まで上昇しています。2022年3月期末時点では1.96%だったことを考えると大幅な上昇です。

円の調達コストは0.38%と低水準を維持していますが、それでも若干の上昇傾向を見せています。その調達した資金も金融事業への用途が大きいです。収益も増加するため、2023年3月期の資料では、金利変動に関しては米ドルに関しては影響がほぼゼロだとしています。一方でユーロに関しては1%の金利上昇が続いた場合、20~30億円のマイナスの影響があるとしています。金利上昇が続く現状は、金利面ではマイナスの影響がありそうです。

2024年3月期第2四半期決算説明会資料より

2023年3月期は、円金利の上昇の影響はほぼゼロだとしていますが、2024年3月期の第2四半期は円金利の上昇は銀行、保険を中心にグループ利益を押し上げていますので、直近の見通しではどうやら金利上昇は好影響があるようです。長短金利操作(YCC)修正により、長期金利の上昇や、メガバンクの定期預金金利の上昇も話題となりました。日本でも金利上昇が進む兆しが見えていますので、金利動向にも注目です。

ここまでのまとめ
・主な事業セグメントは10にわたる
・リース事業を祖業としているが、現在は多角化された経営を行っている
・多岐にわたる投資を行っており、毎期多額の売却益を得ている
・継続事業からのベース利益は比較的安定した推移
・投資の成否によって業績が左右されやすい構成

直近の業績

それでは続いて直近の業績を見ていきます。

今回見ていくのは、2024年3月期の第2四半期までの業績です(決算短信を参照)。売上高:1兆3597億円(0.4%減)、営業利益:1640億円(8.7%増)、純利益:1281億円(4.7%増)減収ながらも増益となっており、利益面は堅調です。

2024年3月期第2四半期決算説明会資料より

売却益による影響を大きく受けますが、利益に占める売却益は236億円で、前期比14%減と減少しています。一方で、継続事業からのベース利益が16%増と好調で、増益になっています。インバウンド増加による不動産(ホテル運営など)とコンセッション(関西空港の運営)の好調と、保険事業で運用収益を伸ばした影響が大きかったようです。

2024年3月期第2四半期決算説明会資料より

コンセッションに関しては、直近の2024年3月期の第2四半期でようやく黒字化を達成しました。今後もインバウンドで、旅行客は堅調な需要が想定されますので、好調は続くと期待できます。

2024年3月期第2四半期決算説明会資料より

セグメントごとの利益の前年同期比を見てみます。

①法人営業・メンテナンスリース:33億円増
②不動産業:79億円増
③事業投資・コンセッション:57億円増
④環境エネルギー:6億円減
⑤保険:223億円増
⑥銀行・クレジット:13億円増
⑦輸送機器:2億円減
⑧ORIX USA:53億円減
⑨ORIX Europe:31億円減
⑩アジア・豪州:120億円減

⑧ORIX USA、⑨ORIX Europe、⑩アジア・豪州と海外の3事業が悪化していますが、⑧ORIX USAと⑩アジア・豪州は、前年同期の売却益の反動が大きいとしています。外貨コストのヘッジコストが増加したり、為替や金利の急激な相場変動を受けて、一定の悪影響が出ていた事が分かります。特にヨーロッパ事業にそれが見られます。

2024年3月期第2四半期決算説明会資料より

最も大きく利益の額が増えたのは保険事業です。運用収益の増加の他にも、コロナ関連の給付金が減少した影響が大きかったようです。コロナによる入院などで給付金が支払われており、その負担が大きかったという事ですね。5類への移行が行われましたから、給付金の支払いは落ち着くと考えられますので、保険事業による好調は期待できそうです。減少していた売却益が増加してくれば、さらなる好業績が期待できるという事です。

2024年3月期第2四半期決算説明会資料より

今後の方針を見ていくと、下期にかけて売却を加速し、キャピタルゲインの獲得を進めるとしています。

2024年3月期第2四半期決算説明会資料より

外資需要の旺盛な不動産の売却や、買い手候補の多い国内PE(※)への売却を中心に進めていくとしています。

PE:「プライベート・エクイティ」の略。「未公開株式(未上場企業の株式)」を意味し、未上場企業の株式の取得・引受を行うこと。一般的には、立上げ期のベンチャー企業への小規模投資を行うVC(ベンチャーキャピタル)投資と、成長・成熟期の企業への大規模投資を行うPE投資に大別される

キャピタルゲインで1000億円~1500億円ほどの規模を見込んでいるようです。この売却加速が想定通り進めば、さらなる好業績が期待できるという事ですね。

2024年3月期第2四半期決算説明会資料より

通期の業績の見通しも増益を見込んでいます。直近では減収ながらも増益と比較的堅調な状況でした。その要因はベース利益の増加です。海外事業は急激な相場変動を受け、ヘッジコストの増加の影響を受けるものの、国内ではインバウンドの回復によるコンセッションの業績回復やコロナの5類移行による保険事業の好調もありますし、こういった好影響は今後も期待されますので、ベース事業は堅調な業績が期待されます。

下期にかけては、キャピタルゲインの獲得を加速、下期には売却益が加わってくると好業績が期待できると考えられます。キャピタルゲイン獲得が想定通り進むかに注目です。

※この連載は、ウェブサイト「note」で連載されている「妄想する決算」を日興フロッギー版として、一部を再編集して掲載しています。
※「日興フロッギー版」では、解説のポイントがわかりやすいようにマーカーを付けています。
※「日興フロッギー版」では、解説に使用したデータの参照元を記載しています。
※「日興フロッギー版」では、画像による説明は決算発表会資料に集約し、それ以外は、データの参照元を明記しています。
※「日興フロッギー版」では、用語解説を追加しています。
※「日興フロッギー版」では、「事業内容と業績のポイント」について「まとめ」を追記しています。
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