感染症急拡大でニーズ増  「ウイルス検査」関連株が上昇

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株式市場で「ウイルス検査」関連株が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は3.8%と、企業業績への期待などから上昇した東証株価指数(TOPIX、0.9%上昇)を上回りました(11月24日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します! 

プール熱が流行、過去10年で最多

国内外の感染症の流行・拡大を受け、ウイルス検査関連株が上昇しています。国内では、子どもを中心に高熱や結膜炎などの症状が出る「咽頭結膜熱(プール熱)」が流行。NHKによると11月12日までの1週間に報告された患者数は、前の週から2455人多い1万173人と過去10年で最も多い状態が続いているとのことです。また、発熱やのどの痛みなどの症状が出る「溶連菌感染症」の一種も感染が増加しています。中国では、同じく子供の間で呼吸器疾患や肺炎の感染が急増。世界保健機関(WHO)は11月22日、中国当局にさらなる情報提供を求めました。

ウイルス検査に関する民間調査によると、早期診断に対する意識の高まり、新興国での診断率の上昇、検査キットの利便性の向上などを背景に、世界のウイルス検査キット市場は2028年まで年平均5.55%で成長すると指摘されています。中期的に成長が予想されるウイルス検査関連市場。足元でも感染症の流行が続き、ウイルス検査キットのニーズが増加するとの観測から関連銘柄が物色されました。

臨床検査薬の総合メーカー【栄研化学】

上昇率首位の「 栄研化学 」は免疫血清検査や生化学検査、尿検査、遺伝子検査など人体から採取した検体を調べる臨床検査薬の総合メーカーです。プール熱の原因とされるアデノウイルスの検査ではスティックを検体抽出液に浸すだけの簡便な操作で検出できる「ディップスティック’栄研’アデノ」を手掛けています。11月15日には、開発途上国で蔓延する感染症に対する治療薬や診断薬等の開発を推進する日本発の国際的な官民ファンド「グローバルヘルス技術振興基金」に参画すると発表しました。

 インフル流行で23年12月期の業績予想を上方修正【ミズホメディー

上昇率2位の「 ミズホメディー 」は遺伝子検査機器・試薬から高感度な各種抗原検査キットまで幅広い製品を医療機関向けに展開。薬局や薬店向けの検査薬も手掛けています。同社は、今年7~9月の新型コロナウイルス感染症第9波の拡大やインフルエンザの夏場からの流行を背景に、新型コロナウイルス・インフルエンザウイルス抗原同時検出キットの売上高が計画を超過、その他感染症の検査薬の需要も過去2年に比べ急増しました。これを受け、同社は2023年12月期の業績予想を上方修正しました。

このほか、「 H.U.グループホールディングス 」は検査・関連サービス事業や臨床検査薬事業などを手掛け、アデノウイルスを約8分で検出する試薬を展開。血液検査機器大手の「 シスメックス 」はヘマトロジー(血球計数検査)で世界首位のシェアを誇り、11月8日に発表した2023年4~9月期連結決算では売上高、営業利益とも増収増益を達成し過去最高を更新。フイルムや機能繊維など幅広い事業を手掛ける「 東洋紡 」は10月23日、日本で初めて新型コロナ、A型インフルエンザ、B型インフルエンザ、RSの4つのウイルスの抗原を同時に検出可能な検査キットの製造販売承認を取得したと発表。これらの銘柄も買われています。

冬場に入りウイルス検査ニーズ本格化も

咽頭結膜熱は耳や鼻にウイルスが侵入し中耳炎や副鼻腔炎を起こしたり、重症化すると肺炎などを起こす可能性があり、溶連菌感染症は急性腎炎やリウマチ熱などの合併症が起こることもあるという厄介な感染症です。早期の治療のためには初段階での検査が重要です。感染が拡がりやすい冬場に入り、ウイルス検査キットなどへの更なるニーズの増加が見込まれます。多様なウイルスにも対応できる機動力や開発力、検査領域の広さなどが銘柄を選別する際のポイントとなりそうです。