1日60分!?運動ガイド公表で 「スポーツジム」関連株が上昇

直近の値動きから見るテーマ株/

株式市場で「スポーツジム」関連株が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は2.7%と、東証株価指数(TOPIX、0.4%安)に対して逆行高となりました(12月1日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した銘柄とその背景について解説します!

スポーツジム関連株が上昇したきっかけは、厚生労働省(厚労省)による運動のガイド案の公表です。11月27日、厚労省の検討会は、「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」を公表。同ガイドでは従来の2013年版から、運動の量的な推奨だけでなく、個人差などを踏まえて強度や量を調整して可能なものから取り組むといった、よりパーソナル(個人仕様)を意識したものに改定されました。

同ガイドは取組を推進するため、運動指導者や、職場などで身体活動を支援する関係者などを念頭に作成されています。具体的には、成人は1日60分(約8000歩)以上、高齢者は1日40分(約6000歩)以上の運動を推奨。また、筋力トレーニングは週2〜3日の実施で、死亡や心血管疾患、がん、糖尿病などのリスクが10〜17%低下するとの科学的根拠を示しました。厚労省の発表を受け、スポーツジムに対する需要が高まるとの期待から関連銘柄に買いが拡がりました。

パーソナルトレーニングジム運営【トゥエンティーフォーセブン】

上昇率トップの「 トゥエンティーフォーセブン 」は、パーソナルトレーニングジム「24/7Workout」を展開しています。「3食きっちり食べて無理なく痩せる」をダイエット方針に掲げ、最短2カ月で理想の体型に導くべく、プロのトレーナーによる完全個室・マンツーマンでのトレーニングや食事指導、モチベーションのケアなどを手掛けています。なお、会社側は、2023年11月期の業績予想について10月13日の決算発表で、「現時点において合理的な業績予想の算出を行うことが困難であるため未定」と開示。また、3期連続の売上高の減少や経常損失・当期純損失の計上等により、第3四半期会計期間末(2023年8月)に債務超過となったものの、財務基盤の強化策によって債務超過は解消されたとしています。

女性専用のフィットネスジム運営【カーブス】

上昇率2位の「 カーブスホールディングス 」は、「女性だけの30分フィットネス」を標榜し、30分ですべてのメニューが完結する女性専用ジムなどを運営しています。独自開発した女性向けプロテインの定期契約販売に注力しているのも特徴で、会員向け物販収入の大部分をプロテインが占めています。足元の業績は好調で、2024年8月期は2桁増収増益を見込んでいます。

24時間営業・マシン特化ジム運営【Fast Fitness Japan】

上昇率3位の「 Fast Fitness Japan 」は米国発祥のフィットネスクラブチェーン「エニタイムフィットネス」の日本でのフランチャイズ展開を担う「マスターフランチャイジー」で、日本の24時間営業・マシン特化型ジムのパイオニアです。11月に発表した2023年4~9月期決算は大幅増収増益となり、会社側は通期予想を上方修正。24年3月期は増収かつ営業利益以下の各利益は減益幅が縮小する見通しです。

このほか「 SDエンターテイメント 」は「 RIZAPグループ 」の連結子会社でフィットネスクラブ「SDフィットネス」を運営し、女性専用のマシンピラティススタジオ「スターピラティス」を導入するなどを通じ差別化。スポーツクラブの老舗の「 セントラルスポーツ 」は、24時間営業の「セントラルスポーツ24」の出店を進めているほか、深夜から早朝までの時間を利用できる「ミッドナイトモーニング会員」区分を導入するなど、利便性の向上に努めています。

「パーソナル」向けの「データ」活用などで差別化

厚労省は、公表したガイドで「スマートフォンやウェアラブル端末の普及に伴い、PHR(パーソナル・ヘルス・レコード=個人の健康状態等の記録・情報)等を活用したサービスの拡充が急速に進んでいる」としています。スポーツジムを展開する企業側においても、こうした流れのなか、「パーソナル」向けに「データ」を活用したサービスの展開などで差別化できるか等が、顧客の取り込みや安定的な収益拡大のカギとなりそうです。なお、事業の多角化やプロモート費用などが業績へ与える影響には注視が必要のようです。