オリエンタルランド【4661】コロナ禍での変化で過去最高益となるほど好調になっている話

日興フロッギー版 妄想する決算/ 妄想する決算

カエル先生の一言

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今回取り上げるのは株式会社オリエンタルランドです。

株式会社オリエンタルランド ホームページ
2023年3月期 決算説明会資料
2024年3月期 第1四半期決算説明会資料
2020年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)
2024年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)
2024年3月期 第2四半期決算短信〔日本基準〕(連結)
2024年3月期 第2四半期決算説明会資料
平成31年3月期 第2四半期決算短信〔日本基準〕(連結)

※以下の解説で使用したスライド及びデータは、株式会社オリエンタルランドの「2023年3月期決算説明会資料」「2024年3月期第1四半期決算説明会資料」「2020年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」「2024年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」「2024年3月期 第2四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」「2024年3月期第2四半期決算説明会資料」「平成31年3月期第2四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」ホームページより引用しています。

オリエンタルランドは、ディズニーランドやシーなどテーマパークの運営を行っている企業です。コロナ前は日本の遊園地レジャーランド市場において、50%弱のシェアで推移し続けていて、足元では57.2%のシェアのある、テーマパークの中では日本最大の企業です(HP「初めてのOLCグループ」(市場環境)参照)。

事業内容と業績のポイント

それでは事業内容を見ていきましょう。

オリエンタルランドの事業セグメントは以下の3つです。

①テーマパーク事業:ディズニーランド・シーの運営
②ホテル事業:ディズニーホテル7つの運営
③その他事業:商業施設「イクスピアリ」の運営や、ディズニーリゾート内のモノレールの運営など

テーマパークを起点として、ホテルやその周辺施設の運営も行っています。

2023年3月期の事業セグメント別の売上と、()内に示した営業利益の構成は以下の通りです(2023年3月期決算説明会資料p4参照)。

①テーマパーク事業: 82.0%(84.0%)
②ホテル事業: 15.3%(15.5%)
③その他事業: 2.7%(0.2%)※売上と営業利益の構成比率は執筆者の妄想する決算氏が算出したデータ。

売上・利益ともにテーマパークが主力の事業です。ホテル事業も一定の規模を持っているものの、オリエンタルランドのホテルはテーマパークに隣接しており、宿泊者はテーマパークへの来園者である事が大半です。その点から考えても、テーマパークの動向に業績が左右される企業です。

顧客層の男女比は、女性が7割超で推移しており、コロナ禍では8割弱まで増加しています(HP「初めてのOLCグループ」(入園者数:ゲストプロフィール)参照)。また、年齢層としては18~39歳が5割前後で推移しており、若い世代が中心となっています。

地域別では関東からが6割超となっており、近隣からの集客がメインです。海外ゲストもコロナ前は10%弱で推移しており、一定の規模を持っています。

近年の売上高の推移を見ていくと、コロナ禍では大きく業績を落としていて、入場制限などもあった2021年3月期には、コロナ前の1/3ほどまで落ち込みました。2023年3月期には大きな回復を見せ、コロナ前の水準には及ばないものの、2019年3月期比で8.7%減の水準まで回復してきています。

利益面でも2021年3月期には大きな赤字となっていますが、そこからは回復を見せています。親会社株主に帰属する当期純利益では2023年3月期には、2019年3月期比で11.8%減の水準です。2023年3月期時点では、コロナ以前の水準には及んでいないものの、大きな回復を見せています(HP「初めてのOLCグループ」(業績ハイライト)参照)。

業績がコロナ以前に及んでいない大きな要因は、来園者数の減少です。2023年3月期は2019年3月期比で47.4%減の3255万人ほどの実績でした(HP「初めてのOLCグループ」(入園者数)参照)。一方で、入場者数の減少のわりに業績の悪化が小さいことが分かります。

その要因は客単価の上昇です。客単価を見ていくと、2018年度(2019年3月期)が1万1815円に対して、2022年度が1万5748円と大幅な増加を見せています。2023年3月期は、客単価の増加によって来園者1人あたりの収益性が高まっていたという事です(HP「初めてのOLCグループ」(単価)参照)。

客単価増加の大きな要因は、アトラクション・ショー収入の増加です。チケットへの変動価格制の導入や体験時間や入場時刻を指定して予約できる有料のサービスであるプレミアムアクセスの導入が話題となった事は記憶に新しいと思います。また、その他にも商品販売収入や飲食販売収入も増加しています。

これまでは、パークが混雑し待ち時間が長かったため、買い物や食事の時間を十分に取れませんでした。しかしコロナ禍での入場制限によりその時間が増え、客単価の増加に繋がりました(2023年3月期決算説明会資料p10~13参照)。

そして現在も「快適なパーク環境を提供できる入園者数の水準を検証しながら顧客体験向上を図る」としていて、入園者数の上限を新型コロナ以前の水準に戻さない計画を立てています。

コロナ前は入園者数の増加によって成長したオリエンタルランドですが、コロナ禍を通じて体験価値の向上、それに伴う客単価向上による収益性の向上を進める方向へ転換した事が分かります。

コロナ禍で人数制限せざるを得なかった一方で、入場者数ごとの顧客の行動データや満足度など多くのデータを収集し、その結果から戦略の転換を行ったということでしょう。現在も検証を続けているようですし、今後もこういったデータ活用がオリエンタルランドの武器になりそうです。

そして、入場者数の上限を制限する中で重要な取り組みとなるのが、集客の平準化です。多くの日本中の観光地では、連休など休みに合わせて集客が偏ります。ディズニーランド/シーでも平日では入場制限の上限に達しない日があります。

注目すべきは、新たな変動価格制の導入です(2024年3月期第1四半期決算説明会資料p10参照)。直近でも2023年10月1日からは、さらに高価格帯のチケットを導入しています。従来も時期や曜日でチケット代が異なっていましたが、夏休み期間などは平日への来園日変更が見られたとしていますので、新たな変動価格制導入による集客の平準化は一定の成果を見せ始めているようです。

平日の集客が見込める海外ゲストは平準化にも貢献すると考えられます。現在も大きく増加している、インバウンドの好影響は大きいと考えられますので、インバウンドの動向にも注目です。

しかしながら、社会人が有給を気軽に取りにくい現状を考えると、集客の平準化は時間はかかりそうです。また変動価格制は、多くの顧客にとって実質値上げとなります。値上げによるイメージ悪化が起きる懸念もありますので、変動価格制による収益の最大化と企業イメージのバランスを取ったかじ取りには難しさもありそうです。

変動価格制がどのような結果を見せていくのか注目したいと思います。

コロナ禍で大きく進んだことの1つに効率化もあります。DXが進み、省力化やIT活用も進みました(2023年3月期決算説明会資料p14参照)。こういった取り組みは今後も好影響を及ぼすので、効率化による収益性の改善が期待できそうですね。

とは言え、コロナ禍の影響で有利子負債調達が増えたこともあり、自己資本比率は、2020年3月期→2023年3月期では、81.2%→68.8%まで低下しています。それでも市場平均から比べると自己資本比率は高く、強い財務体質を有していると言えます。

ここまでのまとめ

・ディズニーランドやシーなど、テーマパーク事業を主力とした企業
・ホテル事業は、テーマパークの利用者が宿泊するケースが多く、テーマパークの状況が業績に大きな影響を与える
・主要顧客は①女性②18~39歳の大人③関東地方在住者
・業績はコロナ禍から回復傾向にあるが、2023年3月期時点ではコロナ前の水準には達せず
・来園者数の減少に比べて業績の悪化は小さい
・コロナ禍を契機にオリエンタルランドは、来園者重視の戦略から体験価値重視、客単価重視の方向に戦略を転換
・コロナ下で効率化も進み、客単価の上昇、収益性の向上を通じて業績が伸びていくかに注目

直近の業績

それでは続いて直近の業績を見ていきましょう。今回見ていくのは2024年3月期の第2四半期までの業績です(決算短信を参照)。

売上高:2843.3億円(39.3%増)、営業利益:770.7億円(102.9%増)、経常利益:777.5億円(101.5%増)、純利益:545.5億円(106.2%増)、となっており、増収増益で好調です。

セグメント別の業績を見ると、全事業とも増収増益、主に入園者数の増加によって好業績になっています。さらに40周年イベントという特殊要因も影響が大きかったようです。また、ゲスト1人当たり売上高に関しても5.6%増の1万6566円となっており、単価上昇の取り組みも進展を見せている事が分かります(2024年第2四半期決算説明会資料p4,6参照)。

ちなみに2019年3月期第2四半期の業績と比べると以下の通りです(平成31年第2四半期決算短信p1参照)。

売上高13.4%増
営業利益:24.5%増
親会社株主に帰属する四半期純利益:25.8%増※増加率は、執筆者の妄想する決算氏が算出したデータ。

コロナ前と比べてみても増収増益となっており、好調だった事が分かります。
続いて、入園者数を2019年3月期の上期と比較すると、19.4%減の1250万人となっています。

以前から進めていた高単価化の取り組みの成果で、入園者数がコロナ前の水準を下回る中でも好業績を達成しています。

オリエンタルランドの2024年2Q決算説明会資料より

入園者数では海外ゲストも大きく増加しています。海外ゲスト比率は前年同期0.2%だったのが、13%まで増加しています。コロナ以前が10%弱で推移していたのも上回る水準です。

オリエンタルランドの2024年2Q決算説明会資料より

下期は例年海外ゲストが減少する傾向であることから、通期の海外ゲスト比率は9%と、コロナ前より若干下回る水準を見込んでいます。集客の平準化や客単価を考えても、平日の来客が期待できるインバウンドの増加は重要になりますから、インバウンドの回復も業績の改善に貢献していた事が分かります

2023年10月には、インバウンドが初めてコロナ前を上回ったとのニュースもありました。海外ゲストが想定以上に推移する可能性も十分にありますので、注目です。

上期は予想を超える業績だったことに加え下期の売上の増加も見込み、上方修正を行っています。そして、これは過去最高益です。

オリエンタルランドの2024年2Q決算説明会資料より

さらに、2024年度の中期経営計画の目標も更新しています。営業利益で従来を600億円上回る1600億円、連結営業キャッシュフローでも過去最高の1285億円を大きく上回る1800億円を目標としています。営業利益、連結営業キャッシュフローともに、過去最高を大きく上回る水準だという事です。かなりの好業績が見込める状況になったという事ですね。

オリエンタルランドの2024年2Q決算説明会資料より

一方で入園者数の目標としては、2023年度が2630万人、2024年度が2850万人としており、2019年3月期の3255万人からは減少した水準が続く見通しです。ゲスト1人当たりの売上は増加が続き1万7000円を目標としていますので、客単価増加の取り組みによって大きな成長が続く見通しとなっています。

オリエンタルランドは、直近では大幅な増収増益により上方修正を行っていて、過去最高の業績を更新する見通しを立てています。想定通り客単価上昇による収益性の改善が進むかに注目です。

※この連載は、ウェブサイト「note」で連載されている「妄想する決算」を日興フロッギー版として、一部を再編集して掲載しています。
※「日興フロッギー版」では、解説のポイントがわかりやすいようにマーカーを付けています。
※「日興フロッギー版」では、解説に使用したデータの参照元を記載しています。
※「日興フロッギー版」では、画像による説明は決算発表会資料に集約し、それ以外は、データの参照元を明記しています。
※「日興フロッギー版」では、「事業内容と業績のポイント」について「まとめ」を追記しています。
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