原発再稼働近づく 「大手電力」関連株が上昇

直近の値動きから見るテーマ株/ QUICK

株式市場で「大手電力」関連株が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は3.9%と、東証株価指数(TOPIX、2.4%安)に対して逆行高となりました(12月8日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!

年内にも「運転禁止命令」解除か

電力株が上昇したきっかけは、原子力発電所の再稼働に対する期待感の高まりです。12月4日、原子力規制庁がテロ対策に不備があるとして運転停止中だった東京電力柏崎刈羽原発の追加検査を終了。これを受け5日には運転禁止の解除を議論すると伝わりました。

続いて6日、原子力規制委員会は、テロ対策や原発事業者として東京電力ホールディングスの適格性に問題がないとした規制庁の報告書案を了承。早ければ年内にも運転禁止命令が解除される見通しです。政府はエネルギーの安定供給と脱炭素社会の実現を両立するため、安全を最優先にした原発の再稼働を進めています。柏崎刈羽原発が再稼働すればその動きが加速するとの思惑を誘いました。

柏崎刈羽原発再稼働ならインパクト大【東京電力HD】

上昇率トップは「 東京電力ホールディングス 」です。東日本大震災の影響で稼働停止となった柏崎刈羽原発6〜7号機は、21年にテロ対策上の重大な問題が相次いで発覚。規制委は事実上運転を禁止する行政処分を出し、27項目の是正を東電に要請していました。年内にも運転禁止命令が解除されれば、再稼働へ向けて大きく前進します。東電は柏崎刈羽原発が1基動くと、火力発電の燃料使用を抑えられ年間で1500億円の収益改善につながると試算しているだけに、再起動した場合のインパクトは大きいと言えそうです。

 浜岡原発再稼働申請も審査長期化【中部電力

上昇率2位は「 中部電力 」です。浜岡原発の再稼働を目指し、津波対策、重大事故対策など総額4000億円の安全対策工事を推進しています。3〜4号機は新規制基準の審査を申請し再稼働にむけた動きをみせていますが、原子力規制委員会の審査は長期化しています。柏崎刈羽原発が再稼働となれば、浜岡原発の再稼働に対する期待感も高まりそうです。

エネルギーの安定供給と脱炭素社会の実現に原発再稼働は不可欠か

その他、「 中国電力 」は島根原発2号機を24年8月に再稼働する見通し、「 東北電力 」は女川原発2号機を24年5月に再稼働する見通し、「 四国電力 」は23年6月に伊方原発を再稼働済みで、業績改善への期待感が高まりそうです。

日本の原子力発電所は、2011年の東日本大震災の影響で全面停止となった後、再稼働に時間がかかっています。現在、稼働可能な原発33基の内、全国で再稼働しているのは、九州電力4基と四国電力1基、関西電力7基の計12基にとどまります。また、日本のエネルギー自給率は、2020年度時点で11.3%と、2010年度の20.2%を下回る水準にとどまっています。エネルギー自給率が低いと原油や石炭などのエネルギー資源を他国に依存するため、国際情勢の影響を受けやすくなります(『燃料費下落で収益改善に期待 「大手電力」関連株が上昇』)。安定したエネルギー供給源の確保と脱炭素化を目指す意味でも原発の再稼働は不可欠とみられています。再稼働に向けた今後の動向を見極めつつ投資先を決めたいですね。