60代からの資産「使い切り」法

今日からお金賢者になれる「1分書評」/ 日興フロッギー編集部

マネー本には珍しい出口戦略の本。人生100年時代の資産活用シミュレーションとして、60代だけでなく現役世代にも役立つ一冊です。

現役世代も! リタイア後の未来でお金に困らない方法

70歳を超えると株や投信を売却し、すべてを現金化する「投資から預金」スタイルに戻る人がぐっと増えるそう。シニア世代に襲いかかるリスクを考えるに、なるほどねと頷きそうになりますが、この戦略はほとんどの人に実はNG。途中で資産が底をつきかねないため、70代であっても最適解は「引き出しながら運用を続ける」ことなのだそうです

たとえば、65歳で2800万円の資産があるとします。80歳まで「年率3%で運用しつつ残高の4%を引き出していく」とどうなるのか? 100歳までに使える資産はなんと総額4000万円にかさ上げされるのだそう! 退職後に手持ち資産が4割増しになるとは魅力的な戦略です。

引き出し方法にもテクニックがあります。著者が繰り返し語るのもこの部分で、オススメは定率引き出し。巷で言われる「毎月10万円の定額引き出し」では市場のパフォーマンスの波を直に受けてしまうのです。

運用収益率が結果的に同じだとしても「最初の5年が低調」と「最後の5年が低調」とでは残高が変わってきます。前者の場合、80歳時点での「がっかり」度が高くなるリスクが非常に高いのです。FIRE後の戦略にも触れられていて「1億円あったのに、定額引き出しにしたせいで78歳前に資産が枯渇する」恐怖のシミュレーションも載っていました。

一方、残高の4%といった定率引き出しであれば、運用の波が前半後半どちらで起こっても最終残高は同じという結果。精神衛生上の負担を軽くしたいのであれば、定率引き出し一択になるのかも。

本書は新NISAにも触れられていて、資産活用のデータなど具体的な数字例も豊富です。難点としては、実践版ゆえサクッと流し読みの読書には向かないことでしょうか。自分の頭で消化する大変さはありますが、1冊あると先々の資産取り崩しの際に大いに助けとなるはず。