旬な株式テーマを解説する本連載。今回は2023年に取り上げた全47テーマのうち、12月7日までに掲載した46テーマを対象に、2022年12月30日から2023年12月15日までの株価パフォーマンス(上昇率)が東証株価指数(TOPIX)を大きく上回ったものをご紹介します。46テーマのうち、6割弱にあたる26のテーマがTOPIXを上回りました。投資判断の参考として、是非チェックしてみてくださいね。
トップは“利幅拡大”の「電炉」関連株
パフォーマンストップは8月3日掲載の「電炉」関連株(『利幅拡大で収益改善 「電炉」関連株が上昇』)で上昇率は63.8%と、TOPIX(23.3%)を40.5%ポイント上回りました。上昇率上位3銘柄は「 東京鉄鋼 」、「 合同製鉄 」、「 大阪製鉄 」。株価上昇のきっかけは、東京製鉄が発表した好調な決算でした。民間の設備投資などの需要が堅調で、製品単価が会社の想定を上回ったうえ、出荷数量が増加。加えて、鉄スクラップの購入単価が想定を下回ったため利幅が拡大しました。同業他社も収益が拡大するとの思惑を誘いました。
電炉関連企業は、不要になった鉄スクラップを電気炉で溶解、新たな鉄鋼製品へとリサイクルし、建築、自動車など様々な産業分野に供給しています。仕入れる鉄スクラップと販売する鉄鋼製品の価格差が主要な収益源となります。記事掲載後の10月31日に東京鉄鋼が、11月2日には合同製鉄が2024年3月期の利益予想を上方修正しました。鉄スクラップ価格の下落や販売価格の改善が同業他社にも広がり、業績の上方修正につながったことなどを好感し株価は大きく上昇しました
第2位は“AIブームが追い風”の「半導体部材・製造装置」関連
上昇率第2位は5月11日掲載の「半導体部材・製造装置」関連株(『在庫調整とAI・DXが追い風 「半導体部材・製造装置」関連株が上昇』)の57.4%で、TOPIXを34.1%ポイント上回りました。上昇率上位3銘柄は「 TOWA 」、「 住友ベークライト 」、「 荏原製作所 」。株価上昇のきっかけは、企業トップのコメントでした。米インテルのパット・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO)が2023年1〜3月期決算の説明会で半導体業界について「年後半に緩やかな回復を見込んでいる」との見通しを示しました。
需要回復への期待に加え、米オープンAIが開発した「Chat(チャット)GPT」など生成AI(人工知能)ブームも関連銘柄の物色を誘いました。TOWAは9月26日に生成AI向け半導体の生産に最適な半導体モールディング(封止)装置を製品化したと発表し、株価上昇に弾みが付きました。
第3位は“値上げ浸透”の「製糖」関連株
上昇率第3位は8月10日掲載の「製糖」関連株(『業界に吹く3つの甘い風 「製糖」関連株が上昇』)の49.2%で、TOPIXを25.9%ポイント上回りました。上昇率上位3銘柄は「 東洋精糖 」、「 フジ日本精糖 」、「 日本食品化工 」。株価上昇のきっかけは日本食品化工が発表した好調な決算でした。値上げの浸透や業界再編による過当競争の緩和、健康志向の高まりで各社が取り組んでいる「糖質ゼロ」など低カロリー商品の需要の高まりが追い風になっています。10月31日には日本食品化工が、11月9日には東洋精糖が2024年3月期の業績予想を上方修正しました。
2024年も市場で話題のテーマと関連株を紹介
今回は今年掲載した46のテーマのうち、株価パフォーマンストップ3の「電炉」、「半導体部材・製造装置」、「製糖」をご紹介しました。「半導体部材・製造装置」は年前半のパフォーマンス(『2023年前半テーマ株 高パフォーマンス ベスト 3』)でも登場しており、上昇率第3位でした。上昇率上位3銘柄の顔ぶれは前回と今回では異なりますが、テーマとして息長く、物色の裾野に広がりがあったことが伺えます。
番外では、4位「中堅・中小証券」(『日本株市場活況で業績好調 「中小証券」関連株が上昇』)(『利益還元に積極姿勢 「中堅・中小証券」関連株が上昇』)、5位「民放キー局」(『規制緩和要望で外資流入の思惑 「民放キー局」関連株が上昇』)、6位「タイヤ・ホイール」(『値上げで収益改善へ 「タイヤ・ホイール」関連株が上昇』)、7位「鉄鋼」(『中国景気に回復観測 「鉄鋼」関連株が上昇』)と「超純水」(『半導体市況回復で需要堅調 「超純水」関連株が上昇』)となっており、いずれもTOPIXを20%ポイント以上上回る高パフォーマンスでした。
2023年株価パフォーマンストップ3の株価上昇のきっかけは、「好調な決算」や、「企業トップのコメント」でした。好調な決算の背景には「利幅の拡大」、「値上げの浸透」、「過当競争の緩和」などがあり、四半期の好決算が通期業績予想の上方修正につながったことも息の長い相場につながりました。また、企業トップのコメントでは、AIに代表される「ブームやトレンドを踏まえた明るい見通し」などがポジティブに受けとめられたようです。
引き続き、2024年も市場の話題となっているテーマをピックアップし、その背景と関連銘柄をご紹介していきます。