テレビや新聞で取り上げられたニュースの裏側を解説する本連載「ニュースの裏事情」。今回は、「経団連のウクライナ復興支援」に関するニュースの裏側について、ご紹介します。
ウクライナ復興支援に動き出す経済界
11月6日、日本経済団体連合会(経団連)は定例会見で「ウクライナ経済復興特別委員会」を立ち上げたと発表しました。6月に設置したウクライナ復興特別部会を委員会に格上げするものです。2日後の8日には、岸田総理がウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談し、「日ウクライナ経済復興推進会議」を来年2月19日(月)に東京で開催することが決まりました。これは政・財界の連携をうかがわせるものでした。世界銀行などによるとウクライナ復興にかかる費用は58兆円もの規模になると試算されており、各国の民間企業は、自社で何ができるかを模索していると伝えられます。
この間のウクライナ復興をめぐる動きを見ると、6月21日に英国でウクライナ復興会議が行われ、当時の林外相は「①地雷対策・がれき除去、②電力などの基礎インフラ整備を含む生活再建、③農業生産回復・産業振興、④民主主義・ガバナンス強化の分野を中心に支援を行っていきます」とスピーチしました。翌日に日本政府は「日・ウクライナ官民ラウンドテーブル」を開催し、日本企業とウクライナの官民交流を実施。ここでは「 味の素 」や「 三菱ケミカルグループ 」が出資する東京工業大発のスタートアップ「つばめBHB」が、ウクライナにアンモニア生産施設をつくる覚書を締結しました。また6月19日には日本の復興庁とウクライナ政府が、復興に向けた覚書を締結しています。
独自の展開をする新経連
こうした下地作りを経て来年2月、日本企業が本格的にウクライナ復興に携わっていくものとみられます。それを牽引するのが経団連ということのようですが、ウクライナ復興では「 楽天グループ 」や「 サイバーエージェント 」などIT企業を中心とする新経済連盟(新経連)も独自の展開をしています。
そもそも新経連は、ロシアのウクライナ侵攻前の2019年10月に、来日したゼレンスキー大統領と昼食会などを行っています。その縁もあり「 ソースネクスト 」は、ウクライナ避難民向けに自動翻訳機ポケトークをウクライナ大使館へ寄贈しています。
楽天は昨年にウクライナ支援のネット募金を実施し、約12.9億円を支援しました。今年8月にはオランダのVEONと共同でウクライナで5Gのインフラ整備に取り掛かっています。そして三木谷会長は9月、林外相(当時)とウクライナを訪問しました。
経団連が“王道”でウクライナ復興に関与しようとする中、新経連は“ゲリラ的”にウクライナとの関係づくりにまい進しています。
(出典:日本証券新聞)