海上運賃に上昇観測 「海運」関連株が上昇

直近の値動きから見るテーマ株/ QUICK

株式市場で「海運」関連株が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は6.6%と、東証株価指数(TOPIX、2.3%高)を上回りました(1月5日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!

紅海迂回で運賃指数が大幅に上昇

海運株が上昇したきっかけは、国際海運の要衝であるスエズ運河につながる紅海の治安悪化です。イエメンの親イラン武装組織フーシによる商船襲撃が相次ぎ、紅海を迂回する動きが広がりました。

海上運賃の指標となる上海コンテナ運賃指数(SCFI)は2023年12月29日までの一週間で40%高い1759.57と大きく上昇しました。紅海を迂回する商船が増えれば、運賃の上昇が続き海運関連企業の収益拡大につながるとの思惑を誘いました。

定期コンテナ船を大手3社で統合【川崎汽船】

上昇率トップは「 川崎汽船 」です。海運大手3社の一角を占め、鉄鉱石や石炭を梱包せずに運ぶドライバルク(ばら積み)船や自動車船など432の船舶を運航(2023年9月末現在)しています。2017年に商船三井、日本郵船の大手3社で定期コンテナ事業を統合しオーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE)を設立しました。3社ともONEの収益は「持分法による投資利益」として営業外収益に計上しています。

2023年度は「歴代3位の好業績」【日本郵船】

上昇率2位は「 日本郵船 」です。ドライバルク船や自動車船、LNG(液化天然ガス)船など818の船舶を運航(2023年9月末現在)しています。2024年1月5日に開いた「商事始め式」で曽我貴也社長は2023年度の連結経常利益について「期初予想の2000億円より350億円も上積みされる見込みで、このままいけば歴代第3位の好業績となる」と表明しました。

 紅海巡る情勢の変化で海上運賃は変動する見込

このほか「 商船三井 」は橋本剛社長が年頭あいさつで、ケミカル船や自動車船の好調な市況の継続や円安の恩恵で「今年度のグループの業績は期初の想定を上回る見込み」と指摘。「 NSユナイテッド海運 」は山中一馬社長が通期の業績見通しについて「従来予想を上回る収益を確保できる見込み」と説明。「 飯野海運 」は大谷祐介社長が紅海を中心に周辺海域は予断を許さないとしつつ、「各船への対応・支援および安全管理体制をしっかりと構築・維持していく」と述べました。

米政府が3日に日本や英国などと商船への攻撃を続けるフーシを非難する共同声明を発表するなど、主要国が対応に乗り出す構えを見せており紅海を巡る情勢は大きく変化する可能性があります。海運関連企業の業績は市況に左右される側面が大きく(『業績の上方修正ぞくぞく! 「海運業」関連株が上昇)紅海の航行が可能になり海上運賃が下落すれば収益拡大期待は後退を迫られます。荒い値動きに備えるため、国際情勢の動向をしっかりと見極めていきたいですね。