新しいNISAで作ろう! 「じぶん年金~日本株編~」

目指せFIRE!おけいどん式 資産形成術/ 桶井 道(おけいどん)西田ヒロコ

本掲載では、前回8月号にて新しいNISAの制度や活用法を紹介し、資産形成期には主に米国株に投資する「投資信託」に積立投資することをおすすめしました。今回は、個別株およびETF活用による「じぶん年金」の作り方を解説します。じぶん年金とは、公的年金では不足する金額をじぶんで用意する「プラスαの年金」のことを言います。私は、新しいNISAを活用して、日本および米国の高配当株やETFによって「じぶん年金」を作ることをおすすめします。本連載では下記の3回に分けて、「じぶん年金の作り方」を解説していきます。

①じぶん年金~日本株編~
②じぶん年金~東証ETF(日本株)編~
③じぶん年金~米国株編~

今回は①の「じぶん年金~日本株編~」です!

本稿は、私の3冊目の単行本『お得な使い方を全然わかっていない投資初心者ですが、NISAって結局どうすればいいのか教えてください!』(すばる舎より2023年11月13日出版)を再編集・加筆して作成しています。

じぶん年金とは

新しいNISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」があります。「つみたて投資枠」は、投資先が投資信託(および一部のETF)に限定されています。その活用法は前回8月号にてお伝えしたとおり、投資信託への積み立て投資によって、着実な資産形成を目指します。対して、投資先に制約が少ない「成長投資枠」では、自由度の高い投資環境を活用して個別株やETFに投資し、高い配当利回りを目指します。配当金(分配金)の最大化を目指すということです。このように、個別株の配当金およびETFの分配金を、FIRE後や老後の生活費にあてる出口戦略を「じぶん年金」と私は呼んでいます。

新しいNISAで「じぶん年金」を構築する良さは、下記の5つです。

①配当金(分配金)は定期的に自動で入金される
②金額が事前におおよそ分かる
③NISAを活用すれば配当金(分配金)が非課税で得られる
④再現性が高く、誰でもできる
⑤続けやすい

株式を売買して譲渡益を狙ったり、投資信託のように少しずつ売却して現金化する必要はありません。よって、労働収入がなくなることで、リスクが高い投資をすることに気が引ける老後でも、続けやすい手段です。値上がりを狙って売買するよりも、メンタルにも優しいでしょう。私は、「じぶん年金」があるお陰で、会社員を辞めて物書きという好きな仕事で第二の人生を満喫できています。

日本の高配当株や増配株を活用しよう

日本株を活用するにも次の2つの方法があります。

①日本株の高配当株や増配株に分散投資
②東証ETFで日本株の高配当株に分散するタイプに投資

今回は、①について解説します。
具体的な戦略は、大型株でおおむね時価総額1兆円以上の銘柄の中から、「高配当株」もしくは「増配株」10~20銘柄に分散投資する、というものです。これによって、リスクを分散しつつも定期的な配当収入を目指すことができます。10銘柄に分散すれば、仮に1銘柄が株価低迷に陥って株価が半分になったとしても、投資額全体への影響は5%に留まります。さらに、20銘柄に分散すれば、2.5%に過ぎません。この程度の減少なら、これらの銘柄から入る配当金である程度カバーでき、メンタルへの影響も限定的です。

「成長投資枠」の生涯投資枠は1200万円です。よって、個別株で勝負する場合は、10銘柄保有するなら1銘柄あたり120万円が目安に、同20銘柄なら60万円が目安になります。平均配当利回り4%を実現できるならば、1200万円×4%=48万円、年間48万円の配当金(分配金)が非課税で得られます。月額4万円の「じぶん年金」となる訳です。

市場が拡大している分野で事業をしており、市場シェアが高く、増収増益を果たしているような銘柄は優良銘柄と呼ばれます。こうした銘柄を長期保有していると、増配(配当金を増やすこと)されるケースがよくありますので、「じぶん年金」の額が増えていくことが期待できます。よって、優良銘柄を長期保有することができれば、月額5万円以上を狙えるようになります。また、投資時に必ずしも配当利回り4%にこだわる必要はありません。連続増配株で増配率が良ければ、配当利回り2%台前半でも合格だと思います。

おけいどん式! 8つの銘柄選択法

個別株を扱う場合、銘柄分析が必要となります。銘柄分析には8つのポイントがあります。

(1)時価総額でスクリーニング
(2)配当分析
(3)トレンド分析
(4)市場分析
(5)ビジネス分析
(6)ファンダメンタル分析
(7)自社株買いの確認
(8)リスク確認

1つずつ説明します。

(1)時価総額でスクリーニング
大型株でおおむね時価総額1兆円以上の銘柄の中から選びましょう。私が時価総額の高い銘柄を好む理由は、比較的経営が安定した企業が多いと思われること、時価総額が低い銘柄に比べると株価の動きがマイルドに見受けられることです。株価の動きが激しくなると、大きく儲かる可能性もありますが、大きく損する危険性も伴います。「じぶん年金」においては、ハイリスクはなるべく排除することが肝心です。なぜなら、FIRE後や老後には給与収入がないため、投資で失敗してしまうと立て直す「種銭」がもはや無いからです。

(2)配当分析
配当金については、次の4項目で確認します。

①配当利回り
高いに越したことはありません。4%あれば理想ですが、3%台でも合格です。連続して増配しており、増配率が高ければ2%台前半でも問題ないと思います。
②増配率・連続増配年数
増配率とは前年に対して、どれだけ配当金を増やしたかを意味します。高い方が優良です。連続増配年数も長いに越したことはありません。
③減配履歴
たびたび減配(配当を減らすこと)する銘柄は配当金が予想しにくいので、避けましょう。ただし、業績に連動して配当する銘柄は「そういうものだ」と割り切ることができるなら投資して構いません。また、コロナショックのような特殊要因での減配であれば仕方がないでしょう。
④配当性向
利益をどれだけ配当にあてたかを確認します。1株あたり配当金÷1株あたり利益(EPS)×100で算出します。日本企業なら30~50%が妥当水準だと思います。これが低すぎると株主還元が充分ではなく、高すぎると業績が悪くなった場合に減配リスクがあります。

(3)トレンド分析
5年チャートか10年チャートで株価推移を確認しましょう。これが上昇傾向である銘柄に投資してください。下降傾向にある銘柄を選ぶと、損をする危険性が上がります。長期トレンドは簡単には変わらない傾向があるからです。

(4)市場分析
投資先候補となる企業が事業を行う分野の市場が拡大しているか、縮小しているかを確認してください。市場が拡大していると、売上や利益が上がり、株価が上昇し、配当金が増えることが期待できます。逆に、市場が縮小しているなら、少なくなるパイの奪い合いが起きるため、価格競争に陥り、売上や利益が減ることが考えられます。その結果、株価の下落や減配もあり得るでしょう。

(5)ビジネス分析
投資先候補となる企業がどのような事業をしているのか把握しましょう。事業内容を知らずに投資するのは目隠しして投資するに等しいです。どんな製品を作っているのか? どんなサービスをしているのか? ……関心を持ちましょう。そして、業界をリードするシェア1位か2位の企業を選びましょう。時価総額1位や2位という切り口や、独自の付加価値を持ってニッチに稼ぐ企業も良いでしょう。

(6)ファンダメンタルズ分析
ファンダメンタルズ分析は、下記の5項目で確認します。

①売上・営業利益
売上が伸びて、営業利益(=本業で稼いだ利益)も伸びている、増収増益の企業に投資しましょう。
②営業利益率
営業利益率は、営業利益÷売上×100で算出します。日本企業なら10%以上あれば私は合格とします。
③1株あたり利益(EPS)
EPSが伸びている銘柄を選択しましょう。株価は長期ではEPSに連動するからです(株価=1株あたり利益×PER)。
④自己資本比率
自己資本比率が低いということは負債(借入金など)の割合が多いことを意味します。日本企業では40%以上は最低でも欲しいところです。理想は60%以上です。
⑤ROE
企業の経営効率を示します。日本企業なら8%以上欲しいところですが、理想は10%以上です。

(7)自社株買いの確認
企業が自社の株式を買うことを自社株買いと言います。流通する株式数が減少するため、1株あたり利益が上昇して、株価が上がります。有力な株主還元策のひとつです。たびたび自社株買いを行っている企業は、株主に報いる意識が強いと認識して良いでしょう。

(8)リスク確認
投資先候補となる企業を見つけると、良い面ばかりに目を奪われてしまう可能性があります。こういうバイアスに陥らないよう気を付けて下さい。必ずリスク面も確認しましょう。Googleなどのニュース検索で不祥事の有無は必ず確認してください。不祥事銘柄には近寄らないことをおすすめします。不祥事は繰り返されがちだからです。

これらの分析をして、銘柄を絞り込みます。すべての項目において100点という銘柄はまずありませんので、妥協は必要です。また、自分なりに分析して合格した優良銘柄に投資するにも、高値掴みをするとパフォーマンスが落ちます。株価が上がり過ぎていないかを確認するために、私は予想PERを使います。予想PER(株価÷1株あたり利益予想にて算出)の推移を確認することで、高値掴みを避けます。

いかがでしょう。あなたも、新しいNISAの「成長投資枠」を最大限活用して、日本株で「じぶん年金」を作ってみませんか。

おけいどん式に基づいた10銘柄を紹介!

最後に、日興フロッギー編集部から「おけいどん式銘柄選択法」に基づいた10銘柄を紹介します。


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次回は、「じぶん年金~東証ETF(日本株編)~」をご紹介します。