加速するクルマの“電装化”をリード デンソー

ここが狙い目! 日興ストラテジー・セレクション/ 日興フロッギー編集部岡田 丈

今の社会動向や投資環境をもとにホットな銘柄を選定している「日興ストラテジー・セレクション」。12月・1月合併号の採用銘柄は国内最大手の自動車部品メーカーの「デンソー」です! 早速、デンソーの投資ポイントをチェックして、これからの銘柄選びの参考にしてみましょう。

部品を通じて社会に「安心」を提供「デンソー」

環境保護対策や運転時の安全対策等を背景に、世界中で自動車の電装化が進んでいます。この流れには完成車メーカーに注目が集まりがちですが、その背景では電装部品メーカーが大きく貢献しています。なかでも今回仲間入りした「 デンソー 」は、今や世界中で使われているQRコードをはじめ、130以上の世界初製品を生み出すなど、自動車部品メーカーのなかでも革新的な存在です。

国内1位、世界2位の自動車部品メーカー

国内最大手の自動車部品メーカーであるデンソーは、熱交換器からエンジン制御システム、ABS(アンチロック・ブレーキシステム)、カーナビ、メーター類など、電装品を幅広く展開しています。
1949年にトヨタ自動車から分離独立して設立された同社は、トヨタグループ内の中核を担い、電子部品、半導体領域をリード。売上高に占めるトヨタグループ向け比率は5割を超えています(2023年3月期時点)。

世界でも存在感を放つ同社は、世界トップシェア製品も数多く展開しています。1996年に真のグローバル企業を目指して「日本電装株式会社」から「株式会社デンソー」に社名を変え、今では自動車部品メーカーとして世界2位の売上規模に、海外売上高比率は53%となりました。

電動化およびADASの売上拡大が成長ドライバーに

世界の新車販売市場は、脱炭素化やモビリティ社会の実現を目標とし、拡大傾向にあります。

英国は2035年までにガソリン車やディーゼル車の新車販売を禁止する目標を掲げています。他の主要国・地域も、自動車の電動化を進める方針を示しており、自動車部品市場における「電動・電装化関連部品」の割合は拡大が見込まれます。こうした環境のなか、自動車部品メーカーとして世界トップクラスの売上を誇り、自動車部品のなかでもモーターや電力制御機器などの“電装化”製品を多く手がける同社は、大きな恩恵を享受できると期待されます。
自動車業界の変化は、クリーンエネルギー化だけではありません。業界の領域は「クルマ」という枠を超えて「モビリティ社会」へと広がっています。具体的には、車と社会をつなげるIoT(モノのインターネット)化や、安全性向上に向けた運転支援システムの発展などが挙げられます。こうした変革期の中で、 同社は「自動車業界のTier1※」から「モビリティ社会のTier1」への進化を掲げています。

※Tier1とは完成車メーカーに直接部品を納品するメーカーのこと

この流れを受け、同社は電動化製品およびADAS(先進運転支援システム)製品を成長ドライバーとする方針です。電動化製品の売上高を、2023年3月期時点の6800億円から2031年3月期に1.7兆円へ、ADAS製品の売上高を同様に3910億円から1兆円に伸ばすことを目標としています。

大規模な株主還元で、中長期的な成長にも期待

同社は企業価値の改善・向上にも取り組み、中期経営戦略(2025年中期方針)のなかで、2026年3月期に売上高7.0兆円、ROE10%超、営業利益率10%という目標を定めています。これに対し、2024年3月期には売上高7.0兆円、ROE9.7%、営業利益率9.0%を見込んでおり、目標達成に迫っています。 自動車の生産回復や円安などが追い風となりました。

2024年3月期以降は棚卸在庫の取り崩しを本格化させ、フリーキャッシュフロー(FCF)の改善、ネットキャッシュ(実質的な手元資金)のプラス回帰を見込んでいます。2023年12月には大規模な売り出しを行いましたが、一方で2000億円を上限とする自社株買いを行うことも発表しました。フリーキャッシュフローの積み上がりや、2023年11月に発表した「デンソーの企業価値向上戦略」を踏まえれば、将来的に12月と同様の大規模な自社株買いや、M&Aなどの投資の可能性も考えられます
自動車業界全体では、2025年3月期は生産回復の一服に伴い、利益成長率および利益率の改善が鈍化すると見込まれています。しかし、同社においてはトヨタ向け単価の改善などにより、2025年3月期も2024年3月期に続き大幅な利益率の改善が見込まれます。業界全体と比較した優位性に期待がかかります。

CO2ゼロ、交通事故死亡者ゼロを目指して社会に貢献

国内最大手、世界2位の自動車部品メーカーである「デンソー」。脱炭素化やモビリティ社会を目指して自動車の「電装化」が加速するなかで、同社の製品がキラリと光ります。電動化製品およびADAS製品を成長ドライバーとして、更なる成長を目指す同社を応援したいですね。