絶品シュークリームの裏側~おいしさを生むシステム
「ローソン」「ファミリーマート」というライバルとの激しいバトルに勝ち続ける王者セブン‐イレブン。1店舗の1日の平均販売額は67万円と、圧倒的な強さを誇っている。
「なぜセブンを選ぶのか」と客に聞いてみると、誰もが口にするのは商品のおいしさだ。その裏には、つい食べたくなるものを生み出す仕組みがあった。
人気のスイーツコーナーで売れ行きナンバーワンは「とろ生カスタードの窯焼きシュー」(159円)だ。セブン‐イレブンの商品開発会議に、スイーツを作っている協力メーカーの凄腕の商品開発担当者たちが集められた。テーマは「窯焼きシュー」のリニューアルだ。
進行役の商品本部デイリー部ベーカリー・スイーツMD前田潮美が「特別感より、毎日食べたくなる、購入頻度を上げるという視点で、どの店を参考にすべきか議論できれば……」と切り出した。次々と並べられたのは9種類のシュークリーム。チェーン店から有名スイーツ店のものまで、厳選した今売れている商品だ。これを食べ比べ、リニューアルの参考にするという。
今、最も売れている味わいを協力メーカーとともに徹底的に研究するのが、セブンの流儀。皮やクリームの特徴を分析する中で、あるメーカーの味わいがターゲットとして挙がった。
セブン‐イレブンは、どんなに売れている商品でも細かく改善を続けている。ちなみにこのシュークリームは、2022年だけでも4度のリニューアルを実施。生地やクリームの味わいを修正し続けている。
「定期的にマーケットを見て今の商品と乖離がないか。定番でもお客様のニーズは少しずつ変わるので、マーケットを見て定期的にすり合わせています」(前田)
こうして今日も、セブン‐イレブンの店内にはさまざまなジャンルの新商品が並べられていく。このおいしさへの執念が、客の心を掴み続けている。
2023年、創業50年のセブン‐イレブンは、店舗数は2万1000店、年商は5兆1000億円を突破した。
2800の商品が30分で届く~便利すぎる「7NOW」とは?
セブン‐イレブンが始めたアプリで商品を選ぶ宅配サービス「7NOW」。取り扱うのは店内にある約2800の商品。最短30分で届けてくれる。
2023年9月、アプリでのサービスを開始。現在は東京や北海道など9000店舗だけで展開しているが、全国展開へ向けて一気に動き出している。2024年度中には全国の店舗で展開を目指すという。
栃木・宇都宮市では近隣のセブン‐イレブンのオーナーが「7NOW」の説明会に押し寄せていた。だが、話を聞いた加盟店オーナーからは「実際に注文がどのくらい入るのか」「通常でも店舗業務に追われているのですぐに対応できるのか」と、不安の声が聞かれた。
栃木県で宇都宮細谷店を経営するオーナー・大塚さん夫婦が、「7NOW」を導入した東京・新宿区の新宿中落合3丁目店に見学にやってきた。
さっそく専用の端末に客からの注文が。あとは画面を見ながら次々と店内の商品をピックアップするだけ。揚げ物などは注文が入ってから揚げて、出来たてを届けるという。
大塚さんは「田舎なので件数がどれくらいあるか」などと、導入の不安を同店のオーナー、植松正和さんにぶつけてみた。
「店頭に来られるお客様より、『持ってきてくれ』というお客様のほうが注文単価は高い傾向があります」(植松さん)
結局、不安はありながらも大塚さんは、「7NOW」の導入を決断した。
「コーヒーマシン導入の時も、最初は『お客さんが作るのはどうなの?』と思っていましたが、今は『何を買う?』と聞くと『コーヒー』と言って入っている。実際にやってみたら正解だった。『ぜひ頑張ってやっていきたい』という気持ちになりました」(大塚さん)
バカ売れ総菜「カップデリ」~続々! 地域限定、魅惑の味
今、セブン‐イレブンの店内で拡大中なのがカップ総菜。デパ地下の総菜を意識した野菜が豊富な「カップデリシリーズ」だ。発売6年で売り上げは8倍になり、1日100万個を売る。その新戦略も動き出していた。
セブンの商品開発担当者たちがやってきたのは福島・いわき市の生産農家「ワンダーファーム」。作っているのは細長いミニトマト、地元のブランド「フラガールトマト」だ。
「果肉が厚い品種です。サクッとした食感の後に甘味が口の中に広がる」(「ワンダーファーム」代表・元木寛さん)
セブン‐イレブンの「カップデリ」のために大量に栽培を始めたと言う。これこそ、セブンが初めて挑む地域戦略だ。
「2023年度から各県ごとに『地域フェア』をやっています。地元で作った原材料を使った商品を地元のセブン‐イレブンで発売することで、お店も腰を入れて販売することができるのではないか、と」(商品本部・上野雅史)
地域の食材を使った商品を地域ごとで販売する地産地消のものづくり。茨城・水戸市のオフィスで行われていた試食会では、地元主導で作った商品が並べられていた。茨城ではお馴染みの味わい「れんこん入りつくね」に、「フラガールトマト」はカプレーゼの「カップデリ」になっていた。
リーダーの商品本部北関東地区MD統括部チーフマーチャンダイザー・向坂剛は「食べるまでに時間がかかるので、タレの粘度を硬めにしたほうがいい」と言う。持ち帰った後も、ジェノベーゼソースがカップの底に流れてしまわないよう、ソースの粘度までチェック。セブン流の厳しい商品づくりだ。
地産地消の戦略で地元の協力メーカーの意識も高まっていた。
「地元の食材を使うと、『うちの食材を使ってくれる』と紹介してもらえる。地元の食材を使って地元を盛り上げたい」(「美野里デリカ」取締役・中村諭さん)
長年、本部が開発した商品が主役だったセブン‐イレブンが挑む地域戦略だ。
茨城・結城市の結城50号バイパス店を訪ねると、そこには「カップデリ」だけでなく、地元の食材を使ったさまざまな商品が並んでいた。客からは「買おう、となる」「地域のものを選びたくなる」との声が。地域を活性化し、セブンのファンも増やしていた。
そんなセブンの新たな戦略を次々と立ち上げてきたのが、セブン一筋43年、セブン‐イレブン・ジャパン社長の永松文彦。忙しい出張のちょっとした合間でも、地元店舗の見学を欠かさない。
「それぞれのお店で工夫して『なるほど』といういい点は、横へ展開することも考えます」(永松)
若き日の永松は、福島近隣の店舗を本部の相談員として回っていた。
「25歳の時は会津若松で経営相談員をやっていました」(永松)
セブンの店内はすっかり様変わりしたという。
「その頃は茶碗や箸なども売っていました。隔世の感があります」(永松)
1980年に入社した永松は4年前、セブン‐イレブンを率いるトップに就任。次の50年を見据えた改革を矢継ぎ早に実施し、「7NOW」や地産地消戦略など、それまでのセブン‐イレブンでは考えられなかった新たな戦略を推し進めてきた。
「これからも進化し続けることが我々の仕事です」(永松)
セブン本部vs加盟店~信頼関係を取り戻す闘い
2023年6月22日、セブン‐イレブンが開いた加盟店向けの非公開イベント「オーナー懇親会」。千葉市・幕張メッセの巨大な会場を特別に取材させてもらった。
映像では「50周年おめでとう」という岸田総理からの直々のメッセージが。そして関東エリアを中心に集まった2500人のオーナーを前に、永松が口を開いた。
「就任以来、加盟店とのコミュニケーションを大切にして参りました。今回、16年ぶりに開催できることをうれしく思っています」
長い間、行われなくなっていた懇親会を永松は再開した。「最も大切なことは加盟店オーナーとのコミュニケーション」と言うほど永松が加盟店との関係を重視する背景には、ある事件があった。
2019年、あるセブン‐イレブンの加盟店が人手不足から、24時間営業をやめ、時短営業を強行。これに一部の加盟店が同調し、セブン‐イレブン本部へ異を唱える動きが広がった。
「加盟店がこんなに苦しんでいる。これはおかしくないか。24時間体制のビジネスモデルが限界にきている」(加盟店オーナー、2019年当時の映像)
さらに2019年、加盟店で働くスタッフの残業代の一部が長期間未払いだったことも発覚。加盟店との信頼関係を失う事態が、社長就任直後の永松を次々と襲った。
「創業して45年経ち、大きく環境が変わる中、我々自身が変わってこられなかったのが、一番の問題だと認識しています」(永松)
その後、永松は24時間営業の新たな枠組みを作るなど、時間をかけ、加盟店との関係改善に注力し続けてきた。そんな永松の念願が、長年中止されていた加盟店との懇親会の再開だったのだ。
「うれしい」
永松の熱いスピーチが終わると会場に大行列ができた。セブン‐イレブンの加盟店オーナー一人一人と永松が記念写真を撮り始めたのだ。「社長があれだけ熱く語るのにびっくりした。安心して帰れます」「やめようかなと思った時もありますが、やっていて良かった」「一緒に頑張っていこうとあらためて感じました」……会場ではそんな感想が聞かれた。
セブン‐イレブンの創業の原点は加盟店にある。東京・豊洲にあるセブン‐イレブンの国内1号店。オーナー山本憲司さんはもともと酒の販売店を営んでいた。
「酒屋でしたが、新しいことをやりたいという気持ちが強かったので、後戻りはできなかったです」(山本さん、2009年の映像)
セブン‐イレブンをアメリカから日本へ持ち込んだ鈴木敏文。掲げたのは、日本の中小小売店をセブン‐イレブンで近代化し、活性化すること。当時増え始めた大型店の攻勢の中で、街の個人店が生き残る新たなビジネスとしての「コンビニ」だった。
そんなスタートだったからこそ、現在も全国のセブン‐イレブンの98.8%がフランチャイズ加盟店で成り立っているのだ。
入社以来20年、全国の加盟店を回り続けた永松。千葉市に若き日の永松が担当していた千葉おゆみ野中央8丁目店がある。
33年前にセブン‐イレブンのオーナーとなった孫山誠さん。子育てに忙しい奥さんの真以子さんと二人で必死に店を切り盛りしてきた。永松が担当していたのは、孫山さんが最も苦しかったという40歳の頃だ。
「父親が倒れて、子どもができて、にっちもさっちもいかない時で、今だから言えますが、セブン‐イレブンを続けられるかどうか……」(誠さん)
「親身になってやってくれました」(真以子さん)
競合が増えて売り上げが減っていく中、永松はコンビニビジネスの基本を丁寧に教えてくれたという。
「一緒に考えて、一緒に答えを探す。トップダウンで『ああしろ、こうしろ』と言う方もいたんです」(誠さん)
「笑顔で柔和な感じで厳しいことをおっしゃるので、逆に胸に響きました」(真以子さん)
孫山さんは現在、3店舗のセブン‐イレブンを経営するまでになった。
永松は加盟店に寄り添うことで、セブン‐イレブンのビジネスを広げていった。
千葉・市原市の五所店を切り盛りするのはオーナー夫婦の平野晃さん、絹恵さんだ。
「父と母が始めて、私が17歳の時にオープンしました」(絹恵さん)
平野さんは2代目。母親の辻井喜代子さんが始めた店なのだ。
「肉屋だったんです。スーパーができはじめて『このままじゃダメじゃない?』と言って、セブン‐イレブンを始めました」(喜代子さん)
喜代子さんが嬉しそうに紹介した若い店員が孫の平野羅莉さん。最近、働き始めて、親子三代のセブンになろうとしているのだ。
「地域に愛される店を続けていきたいです」(羅莉さん)
時代に生き残る店を、いかに作るのか、本部と加盟店のタッグがその強さを支えている。
絶品スムージー急拡大の理由~なぜセブンの弁当容器は白い?
セブン‐イレブンの最近の大ヒットといえば、コーヒーマシンの隣にあるスムージー。凍らせた食材が入ったカップをマシンにセットすれば作りたてが味わえる。2023年3月から展開を開始し、すでに2600万杯を販売。冬になっても好調に売れている。
スムージー導入には「食品ロスの低減につなげる」(佐坂真由実)という狙いがあった。セブン‐イレブンの弁当の製造で廃棄していたブロッコリーの茎などを、丁寧に処理して有効利用しているのだ。
セブンのエコ戦略は店内のよく見る商品でも。例えば、最近増えている白っぽい弁当の容器は「石油由来のインクを削減した環境配慮型の容器」(サステナビリティ推進室・吉田希美枝)。今まで色をつけていた容器をインクを使わないものに変更。この取り組みを全国で行うことで、年間のCO2排出量が800トンも削減できるという。
さらに改良したのがカップデリのふた。ふたをシール方式に変えることで、大幅にプラスチックを減らせるのだ。
「ゴミが減ると焼却時のCO2削減にも寄与できると思います」(吉田)
日々、膨大な量が消費されるセブン‐イレブンの商品だからこそ、その効果も絶大だ。
埼玉・三郷市の三郷彦成2丁目店を訪ねると、店の壁にはまだ珍しい最新型の太陽電池がいたるところに設置されていた。驚いたのは、「リコーさんと取り組んでいる『ペロブスカイト』です」(建築設備本部エネルギー部・藤澤知子)。日陰でも発電できると世界が注目するペロブスカイト太陽電池まであるのだ。
太陽電池パネルは売り場の中にも。室内のLED照明でも発電できる特殊な太陽電池だという。さらに電気を大量に使うオープン式のショーケースは、前面に3重のエアーカーテンがある最新式で、中の冷気が店内に逃げないという。
「冷気のカーテンがあるイメージで、冷気が漏れないので中の温度が保たれ、省エネ、電気使用量が少なくて済みます」(藤澤)
そんな徹底的な省エネ対応を行いながら、店舗や駐車場の屋根の上にも巨大な太陽光パネルをびっしり設置し、「再エネ率は50%を超える日もあり、店の大部分の電気を発電した電気で賄っている」(藤澤)と言う。
ちなみに、日中発電して余った電力はキューブ型の蓄電池にためて、夜間に利用することまでできる。可動式なので災害時にも出動可能だ。
「次のステップとしては他の店でも水平展開させていくことを目標にしています」(藤澤)
便利とおいしさの裏で、セブンは未来へ向けた本気の環境戦略も行っている。
売り上げ150%!~冷食革命に本気のセブン
最近のセブン‐イレブンの店内で存在感を増すのがショーケースの冷凍食品売り場。製法にこだわった「金のシリーズ」はお馴染みだが、四角いおつまみ系も加わり、冷凍食品を拡大中。4年前に比べ売り上げ150%と絶好調だ。
その理由はやはり「おいしさ」にある。冷凍食品づくりにも執念で挑んでいるのだ。
例えば熊本の人気店「天外天」が監修した冷食ラーメン。「豚骨ラーメン」(483円)はわずか3分半で、温めた容器のままニンニクの効いたおいしいスープと麺が楽しめる。
その秘密が群馬・太田市に建設された広大な敷地の工場にある。弁当作りを長年支えてきた協力メーカー「武蔵野」がセブン‐イレブンのためだけに作った冷凍食品工場だ。
「この工場によってますます冷凍食品が進化してマーケットが拡大すると考えています」(商品本部・園田康清)
「天外天」のラーメンがおいしく仕上がる裏には最新技術があった。例えば熟成させたこだわりの麺の冷凍技術。
「電子レンジで仕上げるので、ラーメン店さんと同じように完全に茹でると伸びてしまいます。9割ぐらいで『茹で止め』をしています」(「武蔵野」冷凍食品開発部・高砂道隆さん)
つゆモノにもかかわらず、わずか3分半で温められる秘密は、独自開発した容器の構造にある。上の部分にのせているのは、凍らせた後、溶けやすいように砕いたスープ。下には麺とともに返しのタレが入っている。これをレンジで同時に加熱することで、麺が短時間でおいしく茹で上がるのだ。
「温める中で上部のスープが徐々に下に落ちていき、そこでスープと返しが混ざって、出来たてのようなおいしさを再現しています」(園田)
セブン‐イレブンは冷凍のラーメンにも全力で挑んでいた。
「世の中にない冷凍食品を作っていく。冷凍食品のあり方を変えていきたい」(高砂さん)
今までなかった圧倒的においしい冷凍食品に挑み、コンビニの便利さに新たなイノベーションを起こす。その気概こそがセブンの強さだ。
セブン幹部、毎日の昼食会~半世紀続く強さの根幹
東京・千代田区のセブン‐イレブン本社では、昼時となると会議室に永松を含めて幹部が集まってくる。昼食がてら、新商品のチェックを行っているのだ。
この日は、人気のカップデリ「生ハムとバジルのポテトサラダ」。アメリカ産のバジルを手摘みの国内産に変えてみたという。そしてメインは「海老のトマトクリームスープパスタ」。幹部たちは最新のコンビニの味わいを黙々と食べ続けた。
「この商品は大丈夫か、おいしいか。我々が納得したものをお客様に提供する」(永松)
1973年、鈴木敏文は中小のスーパーマーケットチェーンだったイトーヨーカ堂の新規事業として、アメリカのセブン‐イレブンを日本で展開。最強のコンビニに育て上げた。
鈴木の功績は単にコンビニを日本で広めただけではない。今では当たり前の温かいおでんを販売。家庭で作るものだったおにぎりを商品として展開した。公共料金の支払いをコンビニでも可能にし、さらにATMまで導入。今では当たり前のさまざまなサービスは、鈴木が考案したものなのだ。
現在は経営の一線を引いた鈴木が2009年、カンブリア宮殿の出演時にこんな言葉を残している。
「(1号店ができて)朝7時に店を開けて、最初に入ってきたお客さんが、当日は雨が降っていたのですが、どういうわけかサングラスを買われた。……おにぎりは、最初は売れませんでした。1日2つ3つしか売れないという状態が続いて、苦難の道のりでした。……売り手側で考えてしまうとダメ。うっかりするとみんな専門家になってしまう。そうではなくて、素人の側、お客様の側に常に立つことが必要なのではないか。必ず買ってもらえると我々は固く信じて、それを貫いてきたんです」
そんな鈴木からコンビニの商売を叩き込まれたのが永松だ。入社直後、こんな出来事があったという。
それは商品の販売情報を管理できるPOSシステムが導入された時のこと。永松はその便利さに「これで、自分で計算をしなくても、売れ筋商品がわかるようになる」と喜んだが、鈴木は、全く逆のことを言った。
「売れ筋を見るな。POSで売れていない“死に筋”商品を見極めるんだ。それをどんどん新規商品と入れ替えて次のヒット商品を作り出すんだ」
鈴木は常に消費者のニーズと対峙し、時代の変化を先取りし続けた。その鈴木が最も大切にしていたのが幹部たちとの昼食会だった。
自らが消費者となり商品を磨き上げる。その精神は今も揺らがない。
北海道でもセブン急拡大中~銀座より客単価が高い?
永松はスタジオで次のように述べている。
「50年経つとエリアごとの状況も変わるし店の数も増える。例えば北海道・北見市の客単価は、東京・銀座の客単価に比べて2倍高いんです。一般的には逆じゃないかと思われるけど、買い方、使い方が全く違う。だから同じやり方では売らない」
セブン‐イレブンの永松が、最近ある地域で起きる驚くべきことを教えてくれた。
オホーツク海を望む北海道・紋別市の紋別渚滑店。国道沿いにあるセブン‐イレブンのオーナー、阿部裕樹さんが「北海道の焼きそば」をはじめ地域色豊かな品を見せてくれた。
セブンオリジナルの地域商品では「チョコミントサンド。北海道限定で発売している商品」。地元がハッカの産地ということで開発。SNSでも話題になったという。
「チョコミントサンド」を買った客の会計をのぞいてみると、おにぎりや豆腐、ハンバーグなど、買い物カゴいっぱいに商品が。合計6900円。「1週間に1回ぐらいしか来ないけれど、1回に5000~6000円は買う」と言う。
買い物難民が増えているという北海道。セブン‐イレブンは、地元の客に寄り添った商品展開で必要不可欠な店となっていた。ある客は「ここが唯一の地域のお店。品揃えも豊富なので、なくてはならない」と言っていた。
創業50年。今日も休むまもなく顧客に寄り添い続けていた。
※価格は放送時の金額です。
~村上龍の編集後記~
1982年、POSが導入されたとき、これで電卓を叩かなくても売れ筋商品がわかるようになる、と喜んでいたら、鈴木敏文氏はまったく逆のことを言った。「売れ筋を見るな。売れていない死に筋商品を見きわめて、それを外して新規商品と入れ替えろ」この50年ですべての都道府県に2万1千店以上の店を出し、1日に2000万人が来店。社会のインフラとなった。セブンの看板は、店という感じがしない。公共物のようにわたしには見える。常に新しいことに挑戦してきた。50年かけて、わたしの心に浸透し、そうなったのだ。
1957年、東京都生まれ。1980年、東京経済大学卒業後、セブン‐イレブン・ジャパン入社。2019年、代表取締役社長就任。
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