お金に関する考え方が一変する本。経験価値の最大化から長寿リスクへの備え方、資産の使い時期など人生を120%で楽しむための方法論でもあります。20代からシニアまで目を通して損はなし。
「ゼロで死ぬ」戦略で人生コスパを最大化する
3年前の発売から増版につぐ増版、何を隠そう読むのは2度目。タイトルのインパクトにせよ、「働きアリはいつ遊ぶのか?」で始まる冒頭にせよ、老後資金を貯めても貯めても不安の尽きない日本人にこそ刺さる話ばかりです。もちろん、本書は「贅を尽くしてキリギリスになれ」といっているわけではありません。気力や体力が年齢とともに衰えていくことと同様、(お金を使う)経験にも最適の時期があるという話です。たとえば、20代であきらめたバックパック旅行は30代でも同じ価値があるのかどうか? 貯めることばかりに思考が向くと「世界が必要以上に小さくなってしまう」と。
「世界は広げたいけど老後貧乏はイヤ」という読者の気持ちには次のデータも役立ちます。アメリカ人の純資産平均は55歳で18万ドル、65歳で22万ドル、75歳で26万ドル(全世代の最高値)と右肩上がりに増えていく。ここで斬り込むのが著者で「この人たちは何を待っているのだろうか? 生きている間にできるだけお金を使わないようにしているとしか思えない!」。生涯で使いきれないお金を持つのは「タダ働き」と変わらない、とこれまた直球で締めくくります。
気になる資産取り崩しの年代ですが、ベターなのは「お金・健康・時間」のバランスの良い45歳〜60歳。全員に当てはまるものではなく、やりたい経験の適したタイミング、貯蓄状況や自分の健康(寿命予測アプリなども紹介されています)からシートを作ってみるのがオススメ。なお、「ゼロで死ぬ」と聞けば遺産に関するツッコミも入りそうですが「死ぬ前に与える」ことを推奨しています。狙いは双方の効率の最大化。子どもにお金を渡すというビッグイベントを「いつ死ぬかわからない。そんな偶然に任せてはいられない」という論調には本書の一貫性を感じました。