夢のエネルギー実現で「超電導線材」のニーズ拡大へ

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「地上の太陽」とも呼ばれ、次世代エネルギーの担い手として期待される核融合発電。その実現になくてはならないのが超電導線材です。今回は、超電導線材で高い技術を持つ古河電気工業を中心に関連企業をご紹介します。

核融合発電の実現を巡る動きが活発化

2023年末、核融合発電の実現に向け、日本政府が新組織を3月に発足するとのニュースが流れました。新組織には、核融合発電のリーディングカンパニーなど約50の企業・団体が参加し、技術開発や販路開拓を推進する予定です。

続いて、年が明けた1月17日、古河電気工業が、英国核融合発電のスタートアップ企業Tokamak Energy(トカマク・エナジー)に出資すると発表。核融合発電の実現を巡る動きが活発化してきました。

脱炭素社会実現の担い手として期待される核融合発電

核融合発電は、原子核同士を融合させた際に生じる膨大なエネルギーを発電に使う技術です。少ない燃料で大きなエネルギーを得られるうえ、海水中の重水素などが燃料のため二酸化炭素(CO2)の排出がなく、夢のエネルギーとされています。核融合炉は燃料供給がなければ反応も止まるので、従来の原子力発電に比べ安全性が高いと言われています。太陽も核融合反応で熱を生み出していることが地上の太陽と呼ばれる所以(ゆえん)です。

カエル先生の一言

質量の小さい原子の原子核同士が融合し、別の少し大きい原子核となることを核融合反応といいます。反応が起きた際、僅かに質量が失われるものの膨大なエネルギーが発生します。この核融合反応を人工的に起こすことでエネルギーを電気や熱で取り出す仕組みです。

世界で脱炭素への取り組みが加速し、欧米を中心に核融合発電の計画は前倒しされているようです。複数の核融合スタートアップがすでに実験炉の建設を進め、2030年代には商用炉の建設も始まるとみられています。

核融合発電になくてはならない超電導電材

核融合発電実現の動きが進むことで、20年後に向け関連製品や材料のニーズが拡大しそうです。なかでも超電導線材は小型融合炉1基で数十億円分が必要になるとの試算もあります。

超電導線材は、核融合を起こすためのプラズマを強力な磁場で閉じ込めるコイル材として使われており、高温超電導線材と低温超電導線材の2種類があります。古河電気工業は双方の技術を有しており、顧客の要望に応じた製品を提供できることが大きな強みです。

同社は、国内の核融合実験炉「JT-60 SA」に超電導線材を納入した実績があり、23年1月には前出のTokamak Energyと数年間にわたり数百キロメートルの高温超電導線材を供給する契約を締結。生産を担う米国のグループ会社が需要の立ち上がりを見据え、生産能力拡大も検討しています。

部材や装置で日本企業に商機も

超電導線材では「 フジクラ 」も生産能力を拡大しています。同社はレアアースなどからできている材料を用いて製造した超電導線材を開発しました。他の中核部品でも日本企業が存在感を示しています。「 キヤノン 」傘下のキヤノン電子管デバイスは、メガワット級の高出力でかつ連続動作が可能な3周波数を発生する核融合炉用プラズマ加熱装置「ジャイロトロン」の開発を、量子科学技術研究開発機構との共同で、世界で初めて成功。「 浜松ホトニクス 」は、核融合発電に使うレーザーの基礎技術を開発。「 三菱重工業 」は、「国際熱核融合実験炉(ITER=イーター)」でプラズマを閉じ込める超電導コイルを展開。「 日立製作所 」は、高エネルギーの中性粒子を打ち込んでプラズマを加熱する中性粒子入射加熱(NBI)装置を製作しています。

商用化が視野に入りつつある核融合発電は、技術力を活かして関連する部材や装置を手掛ける日本企業にとって大きな商機となる可能性を秘めています。各国の実用化計画の進展や技術開発の動向は、今後も関心を集めそうです。